自殺の国

著者 :
  • 河出書房新社
2.70
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本棚登録 : 214
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021379

作品紹介・あらすじ

猶予は2日。決行日は6月19日神奈川です-ネットに飛び交う「自殺」「逝きたい」の文字。電車の中、携帯電話を手にその画面を見つめる少女、市原百音・高校一年生。形だけの友人関係、形だけの家族-「死」に魅せられた少女は、21時12分、品川発の電車に乗って、彼らとの「約束の場所」へと向かうのだが…。柳美里、2年半ぶりの最新小説。

感想・レビュー・書評

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  • 読みにくいしおもしろくなかった。
    優しい名無しさんと淀川心中さんと並木レイコさんがかわいそう。
    せめてドアは閉めていってあげてよ。
    最初から死ぬつもりもなくて、何にも解決しなくてほんとこの主人公何がしたいの?
    文章も決して難しい単語は一個も出てきませんが読みにくかったです。

  • 電車のアナウンスと、
    周りから聞こえてくる話し声や雑音が主人公の
    心の描写と混ぜられていて、
    死にたいときの惰性な日常が、死が生に溶けていくといった感じがリアルだった。

  • 年間3万人を数える日本国内における「自殺」。本書は作家、柳美里が一人の少女を通して問いかける「生と死」の意味。圧倒的なリアリティを持つ電車のアナウンスや、車内や女子高生同士で語られる「会話」が秀逸。

    本書は作家、柳美里さんが1998年以降、 自殺者連続3万人の日本社会に問う長編小説です。よく彼女はツイッター上で、電車への飛び込み自殺で、運休を見合わせる旨を示すツイートを「……」というメッセージを添えてRTしていることがあるのですが、これを読みながら3万人もの人間が「消えて」行っていることを思い出し、なんとも複雑な思いがいたしました。

    物語は冒頭から「2ちゃんねる」を思わせるような掲示板に、延々と記される「自殺」「逝きたい」の文字から始まります。電車の中、携帯電話を手にその画面を見つめる少女は、本作のヒロインである市原百音・高校一年生です。彼女は自分の志望した公立高校に落ち、第二志望の私立にも落ち、どうにかして入学した高校で「サゲサゲ」の入学式を向かえ、「スカイソーダーズ」という形だけの友人関係と、父親が会社の部下と不倫関係を持ち、母親はそれを知りながら弟の関西の学校受験に血道をあげる。しかし、弟自身は関西には行きたくない…。そんな家庭で暮らしております。

    作品全体のほとんどは彼女の限りなく続くモノローグと、電車内の描写があるのですが、ゴシック体で記されるアナウンスや、彼女の耳にいやおうなく入っていく乗客のほとんど無意味な、人々の会話が、無機質のBGMとなって圧倒的なリアリティを持っております。僕も品川駅はよく利用する駅のひとつなので駅の詳細や、電車の中で繰り広げられる会話は文字通り皮膚感覚で理解できるので、頭の中に映像が込みあがってくるのでした。

    市原百音などの会話の場面や、「スカイソーダーズ」がハニートーストを食べながらをカラオケに興じる部分の会話もものすごいリアリティがあって、もしかすると柳美里さんは電車の中で「彼女たち」の会話に耳を傾けていたのかもしれません。しかし、そんな日常は百音のグループのリーダー的存在である「日菜子さま」が間違って彼女へ送ったメールから徐々に変わっていきます。

    百音は「猶予は2日。決行日は6月19日神奈川です―」と掲示板に書き込んで、ともに死ぬという「目的」を持った人間と会うために、品川発の電車に乗って、彼らとの「約束の場所」へと向かうのだが…というところがクライマックスです。しかし、彼女は自分の「日常」へと帰り、待ち受けていたものは「仲良しグループ」から自分が排除されたという無残なまでの事実でした。結末は彼女の将来が決して希望にあふれたものではなく、この先も苦労するんだろうなぁ、きっと。と思わせるもので、一人の少女を通して作者が問いかける「自殺」の意味を痛感させられる小説でございました。

  • 「死」はそれ自体が悪ではなくて、神聖なものだったはずなのに、
    それがこんなに穢れてしまったのはいつからなのだろう?

    「死」について語ることそれ自体がまるでタブーとなっているような今の空気には、正直違和感を覚えてしまう。

    「死にたい」だとか「死ぬことの意味」だとか、そういうことを言っている人がいると、皆、まるでそれが神の逆鱗に触れる行為でもあるかのように打消しにかかる。
    本当はただ皆、死ぬことも生きることもよくわかってないから、
    「生」も「死」も誰にでも平等に与えられているものなのに、
    誰一人としてその意味や理由を分かっていないから、
    そのことを認めるのが嫌だから、その台詞自体を封じてしまいたいと思っているだけなんじゃないだろうか。
    もしくはその神聖性を、本当は皆、どこかでまだ信じていて、
    だから簡単にその言葉を口にするべきではない、と戒めるのかもしれない。
    死にたいと思うことは、生きているうちにしかできないから。

    生きることすらよくわからないのに、死ぬことの意味や理由を考えるのはとてもナンセンスに思える。
    雑音と悪意と痛みに満ちた世界でも、この人生を、私たちは死に向かって、精一杯生きていくしかない。

  • 女子高生と話す機会などまったく無い生活をしているのですが、物語を構成する女子高生会話はリアルっぽい。でも、著者の生年月日からして、このような会話を書けるのはスゴイですね。

    AKR47ってのが出てきて「新たなアイドル軍団か?」と思ったら、赤穂浪士の事だったってのは愛嬌ですかね。

  • 辛そうな話。不思議な雰囲気を醸し出している表紙絵が素敵。。。

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    「ネットの掲示板に飛び交う「自殺」「逝きたい」の文字。携帯電話を手にその画面を見つめる少女。彼女は「品川発・伊東行き」の電車に乗り「その場所」へ向かうが……2年半ぶりの最新小説!」

  • 高校一年生の市原百音(もね)はサゲサゲMAX。本命の公立に落ちて、すべり止めの高校に行くしかなかった。つまんない友だちグループに一生懸命合わせてたのにもうすぐハブられそう。パパはずっと浮気してるらしいし、ママは弟の受験にしか興味がない。だから百音は自殺することにした。

    匿名掲示板で一緒に死んでくれる人を探して、寂れた温泉地の奥にある神社で練炭自殺するところまで行ったけど、百音は死を選ばなかった。渡された睡眠薬を飲まなかった。同行した三人は(たぶん)死んだ。

    パパもママも弟も、電車でダラダラ会話している乗客たちも、百音をハブり始めたクラスメイトたちも、誰も知らないけど、昨日の夜、百音は死んでいてもおかしくなかった。
    百音の物語の主人公は、百音。

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    女子高生の百音が死の淵まで行って、引き返す話だった。
    自殺が絶対にダメと言うつもりはないけど、死ぬフリをして心中する三人を騙したのはどうなんだろうと思った。
    車を密閉して睡眠薬を飲んで練炭自殺するつもりが、ドアを開け閉めされたら他の三人は死にきれない可能性もある。生き残ったら何かしらの障害が残るだろうし、それこそ生き地獄になっちゃう。
    まあ、かろうじて百音がドアを閉め直したから三人は死ねただろうけど。

    色んな人生がある。死にたい理由だって色々だ。
    一概に自殺がダメとは言えない。死に方にもマナーを、というか、できるだけ他者の迷惑にならないようなやり方(尊厳死のような選択肢)があればいいのでは、と思う。

  • そこそこ。主人公の友達が頭悪すぎて凄くイライラした…。

  • 難しいな。最初はなかなか理解できなかった。
    若者の言葉は分かりにくい。
    後半は少しだけ読み進めたけど、生きにくい、
    未来を考えられない時代なんだな。
    恵まれているから?食べることさえ大変な人も
    いるのに。

  • 救いがない。
    けど、これが現実。
    うまく話をきれいに書くことはできるだろうけど、これは現実。苦しい国日本。
    生きるのが上手じゃない子は、いやもしかすると上手に見える子でも、こんな気持ちで毎日過ごしてるんだろうなと思うと胸が苦しくなる。
    それでも生きていればどうにかなる。好きなものが一つだけあったり、仲良しでもない隣人の何気ない言葉で、何とか明日の希望に繋げることができるから。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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