となりの少年少女A: 理不尽な殺意の真相

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309026848

感想・レビュー・書評

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  • 痴情のもつれや金銭的な恨みとは無縁な筈の未成年が起こす凶悪犯罪はいつ聞いても衝撃的です。多くの未成年の犯罪は非行に属し、後天的な生育環境に起因する心の問題であるが、先天的な原因、すなわち、アスペルガー症候群などの発達障害に起因するものがあるという。とすれば、予防やケアはどうすればいいか?対処が難しい。「マイノリティレポート」を想起した。専門家や専門機関があるなら、巻末に載せておいて欲しい。

  • 神戸の少年A、手記出版後取材に来た記者に「命がけで来てるんだろうな!」「お前,顔と名前、覚えたぞ!」と1キロ追いかける。
    加害衝動が凄い。

    最近読んだ重松清の小説「木曜日の子ども」は、グレアム•ヤングや伊豆市の事件をモチーフにしてたのか!と。

    発達障害を抑えてたらほんとに事件は起きなかったのかな?
    そこの関連性は...どうなんだろう。

  • ”ほとんどの少年事件は発達障害が直接の原因ではなく、複数のリスク要因が複雑に重なり、絡み合って犯罪に至る”
    ”発達障害に対する本人、社会、周囲の無関心、理解のなさが招いた結果、事件が起こる”
    冒頭、著者はこのように説明する。

    そして、”公立小中学校の通常学級にいる知的障害のない「発達障害」の可能性のある児童生徒は6.5%程度”と推測する文部科学省の調査を引用する。

    100人のなかに発達障害の人が6〜7名いたとして、彼ら彼女らが理解されないまま、必要な支援や早期治療(矯正?)も受けずに社会に放り出されるのは、絶対にいいことではない。
    2005年に発達障害者支援法が施行されるまで、発達障害を持った人が「変わった人」として見過ごされてきた事実は忘れてはいけない。

    この本では、凶悪な少年犯罪を起こした少年少女が発達障害を持っていて、事件前から危険な兆候があったことが繰り返し書かれている。
    では、社会や福祉が発達障害に対して正しい理解を持っていたら、それらの事件を防ぐことができたのか。強制入院等の拘束ができれば物理的に事件を防ぐことはできたかもしれないが、そんなことをしたら人権侵害になってしまうだろう。難しい問題だ。本のなかでも具体的な対策案はなかった。

    発達障害を持つ人が自ら起こした事件たちが例になっていたが、彼ら彼女らがいいように利用されて犯罪につかわれたりしているケースも多くあるのではないか。そんなふうに思った。ホストの掛け金で苦しむ女性たちには発達障害の症状が見られることが多い、という記事を読んだこともある。

    正しい理解も、必要な支援も、もちろん必要だ。
    けれど、もっと大きな社会としての仕組みのようなものが必要なのではないかと思わずにはいられない。

  • 発達障害と周りの環境が複雑に絡んで残虐な殺人が起こってしまう
    印象的なのは加害者の理解者や大切な人が被害者になっているということ
    こんなこと起こってはならないし起きてほしくない
    だからなんか発達障害を早期発見するために制度を新しく作るべきだと思うし発達障害と診断されたらその後のサポートをしっかり行うべき

  • 著者は『僕はパパを殺すことに決めた』で一時注目となった草薙厚子さんです。
    6つの少年事件を元に発達の特性をテーマとしています。「うちの娘に限って」などと発達の特性に限らず目をつむりたくなることはあります。そのシグナル(前兆)に気づき、早期治療に合わせた環境が大切だと伝えられている著書です。(「まふもふ」さんのおすすめコメント)

    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00604361

  • 不可解な凶悪少年犯罪事件は,従来,「愛着傷害」が原因とされてきた。それは,発達障害が原因であることを安易に断定しないようにしたためでもあるが,そのため矯正教育では「育て直し」や「家族の愛情や教育」を行ってきた。
    しかし,そのような教育で更生できていないと思われる事例が出てきている。

    そもそも,発達障害者が長期間収容によって反省を深めるのは難しい。臨機応変な対応が難しいため,刑務所特有のシステム化された環境に適応して刑をつとめる人が多く,適応し,更生できているように見えるという。

    自閉症スペクトラム障害は脳の器質的な問題である。
    本の最終章ではそのことも,詳しく分かりやすく説明してくれている。

    凶悪少年犯罪事件は,起きる前に必ず周囲に何かのサインを出しているという。
    それを早く見つけること,また,まずは障がいの早期発見,早期治療がなされることで,本人の状況が改善されるという。

  • 育児をしている身として、子供を被害者にしたくない、それ以上に加害者にしたくない、という思いから、少年少女の犯罪はどのようにして起こったのかが知りたいと思った。
    きっかけは神戸の少年A。その両親の手記を読んだ。ごく普通の両親。虐待はない。愛着障害が起こる環境ではないはず。ただ、少年Aの嘘を見破ることはできなかった。しかし書評を読むと、多くの人が両親を「自己保身の内容」「真実を語っていない」と糾弾している。本当にそうか?サイコパスは生まれつきの問題であり、知能が高く、外向きは愛想が良い、というのを知っていた(海外ドラマが好きなので)。まさにそれではないか?日本ではどのような判断のもと治療を行ったのだろう。当時と今では判断も変わってきたのだろうか?そんな疑問を解消する内容の本だった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・ノンフィクション作家。日本発達障害システム学会員。地方局アナウンサーからブルームバーグL.P.でファイナンシャル・ニュース・デスクを務め、独立。著書『少年A矯正2500日全記録』(文春文庫)など。

「2018年 『となりの少年少女A 理不尽な殺意の真相』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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