- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309027715
感想・レビュー・書評
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高之と沙和子の12年間が静かに描かれている。二人の関係は形を変えていくけど、空気感は同じ。男女で、こういう関わり方で続いていくのもいいかもと思った。
旅先の描写で日本各地が登場するけど、訪れた場所もたくさん。
なかなかマニアックな名物料理もあったりして、密かに嬉しくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
銀行勤めの沙和子と安定した職を持たない鬱を抱える高之との出会いから別れ、再会の物語。旅行、転勤、転居に伴う様々な土地の風土、歴史、人々との出会いが優しく綴られる。特に江差へのドライブの場面では友人の弟航太の心根の優しさに心を温められる。物語を通して、指を温める程の小さな炎を灯し続ける二人の静かな愛情関係に、もどかしさを感じながらも、あるがままの成り行きに納得した。
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妻・佐和子の北海道への転勤が決まったとき、夫・高之は、仕事がやっと見つかったばかりでした。
結局、佐和子は単身赴任し、高之は佐和子の両親と敷地内同居を続けます。
しかし、次第になにかがズレていく高之と佐和子。
さらに高之がうつ病を患ってしまい・・・。
旅先の細かな描写が多いのですが、地理にものすごく弱いわたしには、文章から情景がイメージしきれず、読み進めるのに時間がかかりました。
小説なのに、要所要所に情景の挿し絵か写真がほしいな、とまで思ってしまいました。
日本列島の地理に明るくない方は、地図を片手に読まれることをオススメします。
そうした理由で、本当に読むのに時間がかかり、もやっとした後味が残ってしまったため、☆2つにしました。
ただ、旅行好きであちこち行かれている方は、むしろなじみの記述が出てきて楽しめるのかもしれません。
高之のうつ病のはなしは、それほどたくさんは書かれていません。
高之のうつは、佐和子の異動と同じように、2人の人生の向かう方向が少しずつズレていく、ターニングポイントにすぎません。
いったんは人生が交わり、夫婦となっても、人生は様々なきっかけで角度をかえて曲がっていくものなんだなと思いました。
夫婦といえど夫と妻という2人の人間であることには変わりがなく、たとえ一緒に寄り添っていても、自分の人生はじぶんの足で歩むしかないのです。
だからこそ、夫婦一緒に寄りそっめ歩める時間は、宝箱を探し当てるよりも奇跡的な時間であり、宝物のような時間なのだなと、しみじみ思いました。 -
感想としては、可もなく不可もなく。とくに盛り上がりもなく
面白くて読むのが止まらないほどではないが、つまらなくもない。
旅が好きなので、旅気分で読めるところはとても良かった。銀行勤めの沙和子と定職を持たない高之。どちらが幸せで、とかそういう価値観が無意味であり、本人が生きていると思える充実感が真の幸せなのではないかと、思わせられた、 -
キャリアウーマンの佐和子、非正規雇用の自由人の高之。
お互いを尊重して、時にぶつかりながらもそこには明らかな親愛の情が存在していました。
佐和子の北海道転勤、高之の鬱発症によって次第にすれ違っていく気持ち。
離れて暮らしている事でお互いの事がだんだん分からなくなってくる。不在に慣れる事で一緒に居る必要性が薄れてくる。一緒に居ない寂しさを押し込める事で心が壊れる。自分のふがいなさで心に空洞が出来る。離れている事で相手の変化に違和感を覚える。
少し考えただけでも色々な心の動きがありますが、どれもこれも分かるし思い当たる事柄も有る。
佐和子と高之もお互いを大事に思っている気持ちは本当なのに、男女、夫婦という点においては確固とした生活感が無くおままごとの延長のような雰囲気があります。
これは離れて生活をしている事もあり、そもそも結婚生活というものよりも個々の生活や自己実現や居心地の良さを優先した事による、実生活との乖離が感じられます。
心の揺れを細かに書く事で、二人が望んでいる関係性というものが少しずつ見えてきます。
大きく心を揺さぶられるというよりも、さざなみのように波立った波紋が最後に大きく揺れて、結果的に心に何かを残した小説でした。
不惑を超えた男女が読むと特に何かを思い出すような小説かもしれません。 -
絲山秋子さんの小説はいつもそうだけど、ずっと読んでいたいと思う。静かに人生を受け入れることの高貴さに憧れながら。美しい文章に心奪われながら。一行も読み逃したくないと思う。ふとしたところで泣きそうになるけど、いつも泣く準備ができていないところでその感情が襲ってくるので、驚いてしまう。うれしい、驚き。知らない地名はとても興味深く、知ってる地名は親しみがわく。不思議な縁も感じてしまう。人と人が離れるとき。または歩み寄るとき。そうだよな、と思う。その瞬間を見失いたくないよな、と思う。今回もまた、私にとって絶対外れのない、絲山作品。
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大好き絲山ワールド。
ホロリとするところ数カ所。
いっさいのものは終わる。続かない。でも生きている。
1日1日が一度きりの完結するエピソードなのだった。