皆川博子随筆精華 書物の森を旅して

著者 :
制作 : 日下 三蔵 
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 118
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309029153

感想・レビュー・書評

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  • takanalでおすすめされて、皆川博子作品を全く読んだことのない状態で読みましたが結構面白かった。
    本来全く知らない・興味もない人のエッセーって読んでいて退屈するものだと思うのですが、そんなことも気にせず読み進められたのは作者の筆のうまさゆえなのだろうと思われます。
    たおやかで、何処か品のあるような、とても好きな文体でした。本丸である小説の方も読んでみたいな。

  • いろんな雑誌や新聞などに掲載されたエッセイがまとめられた一冊。慣れ親しんだ本について、演劇や歌舞伎について、取材旅行のことなどが書かれている。
    好きな本や三代目澤村田之助との出会いについては何度も同じようなことが語られていて、本当に好きなんだな、強烈に魅せられたんだなと、創作に繋がる部分を窺い知ることができて嬉しい。
    「花闇」はいつか読もうと思いながら、凄絶そうで読んだら絶対気持ちが持っていかれると思って自分の中で時機を見ているのだけど、やっぱり読みたいと思った。
    読んだことがある本についても、その取材旅行の話を読むとまた読み返したくなるのだ。
    でも皆川博子さんの本は、私にとっては、周りのことに一切構わず没入したい本だから、それもまた時機を見ないとと思って悩ましい。

  • また困った本が、、、

    皆川博子随筆精華 書物の森を旅して :皆川 博子,日下 三蔵|河出書房新社
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309029153/

  • まずはカバーイラストも、紙も、質感も、中のイラストも、抜群に美しい装丁。
    名前をよく拝見する柳川貴代さんの作。
    内容は、いつもお世話になっている日下三蔵さんによる編。

    目次
    第1部 幻の処女作
    幕間  私のヒーロー&ヒロイン
    第2部 かぶき事始
    幕間  美少年十選
    第3部 暗合の旅
    幕間  マイ・ベスト
    第4部 物語を発見していく旅
    あとがき

    という具合に、幕間という設定でファンには嬉しいコーナーっぽい仕立てになっているのは面白い&嬉しい&わくわく。
    そして、なんと初のエッセイ集なのだ!
    どれだけ待ちわびていたことか。
    あの作品を書いたときにこういう旅をしたんだ、という随筆が、どれだけ嬉しいことか。
    もちろんドイツやアイルランドへの旅行は、あの作品なんだろうな、と。
    文体ゆえか旅行記としても全然湿っぽくなく、一篇ごとに読後心地よい。

    そんな中、数篇に渡って、南米への旅について書かれていた。
    ……ん? 皆川博子が南米を舞台に小説を書いてたっけ? と調べてみたら……。
    「碧玉紀(エメラルド)」という単行本化されていない長編があるんだとか! なんと!
    もちろん「皆川博子の辺境薔薇館」には記載されていたんだろうけれど、知らなかった……。
    小学館の季刊文藝誌「文藝ポスト」1999年夏号~2000年秋号(全六回)連載。
    執筆順では『死の泉』(1997)の次。
    ちなみに『結ぶ』(1998)に収録された短編「火蟻」(ブラジルが舞台)もそうらしい。

    ほーっと溜め息。皆川博子はまだまだあるのだ。
    しかもしかも、版元ドットコムの記事では、なんと「皆川博子随筆精華2(仮)」が2021年7月23日に刊行予定だと……。ほーっ。

    「日常を生きるための潤滑油のひび割れからほとばしる悲鳴を幻想小説と思う」 



    第一部 幻の処女作

    少女のビルドゥングス・ロマン
    幻の処女作
    マドレーヌのひとかけら
    懐旧のクリスティー
    「おもしろさ」――わたしにとっては……
    『酩酊船』
    ドジから始まった
    夢中になった禁断の読書
    『猫とねずみ』クリスティアナ・ブランド
    魔界を飛翔する甘い毒塗りの矢――何といっても赤江瀑
    まなざしの深さと暖かさと……――藤沢周平先生を悼む
    『死の泉』を書き終えて
    トマトと鳥のあいだ
    いつまでたっても
    アラバールと乙一さん
    お洒落に、そして粋に
    『冬の旅人』の旅
    メイキングオブ『聖餐城』
    役者無惨――『澤村田之助』矢田挿雲
    幻想作家についての覚え書き
    吉川英治『神州天馬俠』
    魔術師の贈り物
    先生に導かれて

    禁忌の誘惑――『大暗室』江戸川乱歩
    飛び続ける想像力の矢――赤江瀑さんを悼む
    エッセイは苦手
    病を押して、事実を淡々と――皆川博子←服部まゆみ
    ポケミスで開眼――『ジェゼベルの死』クリスティアナ・ブランド
    マイ・フェイバリット・ミステリ
    ミステリにめざめたとき

    幕間 私のヒーロー&ヒロイン

    ルナールの『にんじん』 
    ジュリアン・グリーンの『アドリエンヌ・ムジュラ』
    『動物と子供たちの詩』
    『僕の村は戦場だった』のイワン
    『白痴』のムイシュキン公爵

    第二部 かぶき事始

    二つの出会い
    田之助を書きたい
    かぶき事始
    楽屋の鏡
    近頃みーはー事情
    炎と煙
    説経と幻想
    芸能の流れ
    華と陰翳――福助讃
    美――八代目團十郎その死
    江戸の子供たち
    近松の描いた女たち
    蠱惑
    田之助幻想
    中座のキッチュな部分
    金丸座の桜
    初花の役者たち
    残忍にして美貌
    江東劇場の宝塚少女歌劇
    鈴ヶ森――江戸歌舞伎、主役の道
    堕ちてゆく姫――『桜姫東文章』桜姫

    幕間 美少年十選

    カラヴァッジョ「ナルキッソス」
    モロー「死せる詩人を運ぶケンタウロス」
    ヴルーベリ「座せる悪魔」
    ジェームズ・ティソ「ガーデンベンチ」
    ゲインズバラ「羊飼いの少年と闘う犬」
    ヘンリー・ウォリス「チャタートンの死」
    ドナテッロ「ダヴィデ」
    「阿修羅像」
    「彦根屏風」(第一扇・第二扇)
    伊藤彦造「初陣」

    第三部 暗合の旅

    鷹のゆくえ
    気分は「終着駅」
    吉野の里の花吹雪
    伊勢・花の旅
    レーベンスボルンの子供たち
    国境
    旅行嫌いの取材旅行
    五月の鎧
    北の旅
    書物の森を旅して
    〈新ゲルマニア〉を探して
    暗合の旅
    ダブリンからスライゴーへ
    海賊女王の島で

    幕間 マイ・ベスト

    22世紀に遺したい「この一冊」
    我が青春の「青春小説」
    私が選ぶ国書刊行会の3冊
    もっとも美しい小説
    私の好きなポケミスBEST3
    ミステリマガジン思い出のコラム
    マイ・ベスト・ポアロ・アンケート
    岩波文庫創刊90年記念 私の三冊
    私の一冊

    第四部 物語を発見していく旅

    幻花の舞――渥美半島・伊勢神宮紀行
    闇色の光――近江八幡・彦根紀行
    物語を発見していく旅
    繭ごもり

    あとがき
    編者解説 日下三蔵

  • 皆川博子というすごい作家を知る
    貴重なエッセイ集
    第一部の処女作は一気に読んでしまった
    興味津津
    マイベストで紹介されてた小説はぜひとも読みたい
    ジュリアン・グリーンの『アドリエンヌ・ムジュラ』のどうしようもない陰鬱さはやはりなぁと共感
    ブルーノ・シュルツ、もう一度図書館で借りてみよう
    以前はぜんぜん感心しなかったけど
    皆川博子さんが22世紀に残したいとまで言われるのなら
    服部まゆみ作品も読みたい

  • エッセイ集。単行本化されていない皆川博子の作品やエッセイをコツコツ発掘してくれる編者の日下三蔵には足を向けて眠れない気持ち(どちらの方角におられるか知りませんが)

    四部構成で、それぞれ、初期作品自作解説&読書体験、歌舞伎関連、取材旅行、旅記録などジャンルごとにわかりやすくまとめてあり、合間に幕間として「美少年十選」などの短い連載コラムが挟まれている構成。

    身の回りの雑事というよりは、ご本人の作品の裏話になっているものが多かったので愛読者としては嬉しい。海賊女王の舞台となったアイルランド、死の泉の舞台になったレーベンスボルンの跡地など、あの壮大な物語群は実地の綿密な取材に基づいてるのだなあと感慨もひとしお。

    皆川さんの本は結構たくさん読んだつもりだけど、まだまだ読めていない作品が沢山あるのに毎度驚く。幕末オタク会津藩推しとしては『会津恋い鷹』は読んでみたい。復刻しないかなあ。あと皆川さんの愛読書についても、現在は絶版で読めないものも多いので(アラバールとか、ジュリアン・グリーンとか)そちらも復刻されたら嬉しい。

  • エッセイ集。もう皆川博子さんのエッセンスがいっぱいに詰まっている感じ。少しずつ読むのがおすすめです。
    皆川博子さんといえばとにかく尋常でない活字中毒者でその知識量も半端ないのですが。お人柄はほっこりして可愛らしい方、という印象です。この本にもそんな感じが溢れているような気がします。小説は好きだけどちょっと気軽に読める雰囲気ではないのですが(気合を入れてかしこまって読まなければならない)。エッセイは程よく気を抜いてよめる、かも。
    ドイツを舞台にした小説の数々はだいたい読んだはずですが、もう一度読みたくなりました(「死の泉」は大傑作だったことを覚えていますが、細部は忘れたし……)。そして読んでいない作品ではぜひとも「花闇」を読まなければ! という気にさせられました。たしかこれも買ってあったはずだなあ。

  • 皆川博子随筆精華 書物の森を旅して
    著作者:皆川博子
    発行者:河出書房新社
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    小説の女王の美学に溢れる随筆作

  • 幕間の「美少年十選」が、あまりにも皆川博子ビジョンで良かったな…。
    こういうの、他にもまたやってほしいね…。

  • 本,特にお気に入りの本,歌舞伎,旅などについて,また子供の頃の思い出も.
    「私のヒーロー&ヒロイン」「美少年十選」には納得.

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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