二千億の果実

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309029931

感想・レビュー・書評

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  • 宮内作品の集大成だと思う。
    相互に関連し合った、色合いの異なる26の短章を積み重ねて構成されている。すべてを読み終えたとき、26の章全体が一幅の大きな絵となって読者の目に映る。そんな、タペストリーのような長編である。

    「二千億の果実」とは、前作『永遠の道は曲りくねる』に出てきた言葉。ヒトの誕生から現在までに生まれてきた数が、およそ二千億人。
    《どうやって二千億という数を割り出したのか、正確なのか、そこのところはわからないが長い長い行列が地上を通り過ぎていったわけだ》
    それを果実になぞらえた言葉なのだ(というような説明が本書では一切省かれているあたり、宮内さんらしい)。

    タイトルが示すとおり、人類史を鷲づかみにする壮大なスケールの小説である。と同時に、作者自らの人生を振り返る私小説性を併せ持っている。鳥瞰と虫瞰――2つの視点から捉えられた世界が描かれる。

    長年のファンである私は感動したが、説明を最小限に抑えた作品でもあって、宮内作品の愛読者以外には意味不明な点も多いだろう。

    かつての『宇宙的ナンセンスの時代』に登場した2人の宇宙飛行士(その1人はスペースシャトル「チャレンジャー」事故で爆死)や、『ニカラグア密航計画』に登場したゲリラ隊長なども、本作に登場する。
    過去作品の数々を、いまの視点から〝歌い直した〟メドレーのようでもある。

  • なんか…凄いな…
    凄いって感想が飛び出てきた…
    宮内先生は大きな視点で世界を見てるんだろうなあ

  • 宮内文学に初めて触れましたが、こんな構成の小説があるのか…と1冊読み切るまでずっと興奮し通しでした。人類の進化、戦争、知と生きること、宇宙、聖者と老い…あらゆるエピソードが巡って繋がって、時空をこえて地球を旅できた気分です。

  • 宮内作品初読み。

    『ルーシー』の後半が特に印象的。
    発見された古代人女性の骨。その女性が、なぜそこで行き倒れたのかを独白する視点が斬新。気の遠くなるような大昔のことがやけに生々しく感じられた。

  • アインシュタインのスライスされた脳とか、絶海の有人島ピトケアン諸島とか、正常位で性交するのはヒトとボノボだけとか、知的興奮を腹の底からゴリッゴリされる!なかなかにぶっ飛んだ世界観で語られる地球と歴史のお話でした✧◝(⁰▿⁰)◜✧

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著者プロフィール

1944年ハルピン生まれ。鹿児島県立甲南高校校卒業後、アメリカへ渡る。ニューヨークで通算13年暮らし、世界60数カ国を歩いた。
早稲田大学客員教授、大阪芸術大学教授などを歴任。
著書『南風』(文藝賞)、『金色の象』(野間文芸新人賞)、『焼身』(読売文学賞 芸術選奨文部科学大臣賞)、『魔王の愛』(伊藤整文学賞)。ほかに『グリニッジの光りを離れて』、『ぼくは始祖鳥になりたい』『金色の虎』、『永遠の道は曲りくねる』など多数。

「2019年 『南風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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