教育

著者 :
  • 河出書房新社
2.92
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本棚登録 : 1962
感想 : 147
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030142

感想・レビュー・書評

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  • 星3.5
    ディストピア小説にありがちな何かをレベルMAXにした小説。今回では校則をレベルMAXにした。

    破局でもそうだったが遠野さんの作中作というか作中妄想が絶妙に怖い。今回であれば遊園地のマスコットなど。いつかは怖さをメインにした小説を読んでみたい

    破局といい、教育といい、ページをめくる手が止まらない。引き込まれる。エンタメ小説のような気になる展開があるわけではないが、世界観にのめり込んでしまう。
    感想を書いてたら星4でもいいなぁーって思ってきた…

  • ラストにかけて、教育というタイトルがじわじわと効いてくる。

    主人公の属する学校には様々な支配が潜んでいるが、当たり前の日常として登場人物たちが受け入れているので、読んでいるこちらも、最初は物語内の世界としてすんなり受け入れることが出来る。

    しかし物語の後半、真夏という登場人物の視点により教育や主人公の異様さが詳らかになっていく。
    これを主人公の一人称視点で書き切る作者の技術が凄い。

    「様々な支配により、いつの間にか決定的に自己を変えられてしまう」
    教育の危うさを、1日に3回オナニーという馬鹿馬鹿しいルールを用いて描く作者のユーモアも好きだった。

    作中に出てくる小説・催眠中の物語・劇なども鮮やかに物語を彩っている。
    物凄い書き手だなと感じた。

  • 宗教学校の話と認識した。独自のルールや教育方針があまりにも強いので、もしかしたらカルト村みたいな感じなのかもしれない。一般教養としての知識を学ばせないのは、昔から宗教団体が使う手法だ。

    主人公の勇人はカルト2世(もしくは3世以降)のようだ。おそらく幼少期からすべてを宗教で決められていたから、それに従うことしか知らず、教えれたことはすべて正しいと認識してしまっている。手の洗い方ですら自分で決めることができない。

    実際、学校教育は国によってある程度のルールが定められているから成り立っているが、やっていることはこの学校と変わらない。「これが正しい」と教え込み、洗脳し、生徒を作り上げていく。家庭教育はさらに悲惨だ。
    この学校の方針はあまりに馬鹿馬鹿しいので読んでいて面白いが、実際はそこまで笑える内容ではないのが怖い。いわゆる「親ガチャ」に外れた子供は、知らず知らずのうちにこの作品の主人公のように歪められてしまう。勇人や未来、真夏は現実社会でも確実に存在する。
    「教育」という一見綺麗に見える言葉を、ここまで汚く表現したという点では、優れた作品だと思う。


    学校は小説や映画の中ではよくある、真実に気付かなければ天国、真実に気付いてしまったら地獄の環境。むしろ、男性にとっては天国、(小宮など一部を除いた)女性にとっては地獄なのかもしれない。

    「補講」というのはつまり、教師(もしかしたら宗教団体の上層部も含む)にとっての慰み者のような役割なのでは。未来のように壊れて吹っ切れた人はまだマシで、真夏のように正気を取り戻した状態でいつまでも閉じ込められた先には、最悪の展開しかないように思う。

    ただ、登場人物の中でこの学校を破壊できるのは真夏しかいない。そう考えると、実は真夏はこの物語の主人公になり得た存在なのではないか(しかし、そうなるには作中での彼女はあまりにも弱すぎた)。
    もし真夏が学校を破壊できた場合、主人公にとっては最悪の事態になるだろうが、それは仕方がないだろう。


    なんとなく、読んでいて安部公房の物語の運び方を思い出した。

  • 2022.03.01 読了
    多くの人や自分が信じている物が正しいとは限らないという当たり前のように感じても、意外と盲点になる所がクローズアップされた作品でした。
    先入観に浸りきってしまう前に、様々な意見を聞いて自分にとってどれがなぜ正しいと思うのか考える事が大切だと思いました。


    ただ、理解力が足りていないのか作品に入り込めていないのか所々なぜそのパートが存在していたのかよくわからない所があった為星マイナス2をしました。
    いつかもう一度読めば変わるかもしれません。

  • 文藝にて初読
    またも独特な性格の主人公だけど、これもこのような世界に生まれ育ってきた教育の賜物で、無駄がないようにも感じる
    読者として外側から見た時の違和感が凄くて、凄すぎて、一周まわってギャグのような台詞なのにそうじゃなさ、が面白かったです

  • 教育は洗脳。
    これに尽きた。

  • 著者は平成生まれ初の芥川賞受賞。
    であるから、なにかすっきりとした結末というか、成程的な感じを期待してはいけないとは思っていたが。
    毎日オーガズムに3回(も!)達することが推奨されている全寮制共学高校。そして謎のテストが頻繁に行われ、その成績によりクラス替えが行われる。ほとんどの生徒はひたすら上のクラスを目指して色々努力している。
    正直読んでいてその理由を知りたいと思うし、もっと異次元の謎世界が展開されるかと思いきや、そこには普通の学校と同じ、切磋琢磨?若しくは足の引っ張り合いする、いつもの学園生活が存在するだけなのであった。かといって教育とは、とか、生徒と教師のあり方とは何か、といったことを判り易い皮肉として描かれている訳でもない。なかなか難しい小説なのであった。

  • なんなんだこの世界は……と眉をひそめつつ読了。
    教育とは。
    なんか、全然好きなわけじゃないんだけど、作品が出ると読んでみたくなる。独特の感性の作家さんだと思う。

  • マンガでも読んでるような気分になった。物語の設定が現実味を帯びていないために感情移入がしにくかった。人間の適応能力のすごさと自分が当たり前だと思っていることも他者から見たら不自然極まりないこともあるのだということを知った。1日3回以上オーガズムに達すると成績が上がりやすくなるとされていること、画面に表示された絵と同じカードを引っくりがえされている状態で当てるテスト、何をされるかわからない補習、現実でこんなことがあったら意味がわからず困惑状態になると思うが実際その状況に置かれたら何も疑うことなくそれをこなしてしまうのかと思うと恐怖を感じる。
    読書初心者の私には少し早い本だった。

  • 異世界とか流行ってるし、こういう設定が流行ってるのかしら。ついていけないかも。と思いながら読み進めていく。

    SF的な設定なのかな、と思って読み進めていくと、
    どうやらそういうことではないらしい、と気づく。

    カルト村を垣間見たような気持ち悪さを感じる。

    常識を逆撫でされるのはとても気持ち悪い。
    殴られるスポーツマンは象徴的なエピソードでは。

    遊園地のバイトの話が印象的。
    なぜこのタイミングでこの話が挿入されたのかを含めて
    ミスマッチが気持ち悪い。


    支配関係が強調されている。
    支配欲も人間の本能の一つなのだろう。


    思ったよりエロは薄めだったかな。

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著者プロフィール

1991年生まれ。2019年『改良』で第56回文藝賞を受賞しデビュー。2020年『破局』で第163回芥川龍之介賞を受賞。他の著書に『教育』がある。

「2023年 『浮遊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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