くるまの娘

著者 :
  • 河出書房新社
3.43
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030357

感想・レビュー・書評

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  • 〈助けるなら全員を救ってくれ、丸ごと、救ってくれ。誰かを加害者に決めつけるなら、誰かがその役割を押し付けられるのなら、そんなものは助けでもなんでもない。〉〈自分の健康のために、自分の命のために?このどうしようもない状況のまま家の者を置きざりにすることが、自分のことと、"まったく同列に"痛いのだということが、大人には伝わらないのだろうか。かんこにとって大人たちの言うことは、火事場で子どもを手放せと言われているのと同等だった。言われるたび、苦しかった。〉〈あのひとたちはわたしの、親であり 子どもなのだ。〉親と子。家族。あーなんでこんなに苦しいのに大切なのだろう。どこまでも、どこまでも、家族。宇佐見りんさん、圧巻です。

  • 宇佐見りんさんの手によって書かれる、どうしようもない家族の悲喜こもごも。
    読みながら何度も苦しくなって押し出されるようにぽろぽろと涙がこぼれた。思い出すことが多すぎた。

    〈審判もお天道様も見ていない家という場所〉で、そこに集まって暮らす家族とよばれるまとまりは、かけがえがないはずで、大切なはずで、はずなのにどうして時に徹底的に傷つけてしまうんだろう。
    家族はちゃんとお互いにいちばん傷つく言葉を知っていて、いざとなったら的確に急所を刺すことができる。
    その痛みは共有する生活のなかですぐに曖昧になるけれど刻まれた深い傷は消えなくて、もしその痛みと向き合おうとしたら、どんなことが起きるのだろう?
    そのあとも家族は家族のままでいられるのだろうか。

    父、母、にい、かんこ、ぽん。彼らは家族だけど、それぞれが生きてきた地獄も、これから生きていく地獄もちがう。
    でも変わろうとする者があれば、「家族なんだから」という言葉は都合のいい免罪符じゃなくて、救いであってほしいと思う。家族の間に手遅れなことなんてなくて、いつからだって間に合うと信じたい。
    最後のシーンが好きだった。

  • こわかった。本当にこわかった。
    家族という濃い、濃い、小説。逃げ場なんてないしそんなの端から選択なんてしない。かんこ17歳。かんこと兄、両親の4人家族。ある日から車でしか生活出来なくなるかんこ。かなりいびつな家族像であり、虐待・ヤングケアラーという言葉が頭をかすめるけど、きっとかんこはそんなことでこの「家族」と「自分」を括られたくないと思っているのではないだろうか。
    家族という檻は出たい出たくないの二択ではないのかもしれない。「依存だ」とは家族に向けて発せられる種類のものではないのかもしれない。そんな単純なものではない。
    私自身は、檻の中に名札だけ置いていて、いつでも入れるからごめんなさいと貼り付けた笑顔で言い訳して家出している感じだ。
    良いも悪いもジャッジしたくない。そして決して戻れもしない。
    私は早々に離脱したと背を向けているけれど、檻という言葉がピッタリときてしまう私も、かんこなのかもしれない。

  • 前作二冊より断然いい。
    後半に向かって、前半で気になっていた表現の荒削り感が、むしろ主人公の未熟さとマッチしているように感じてきた。

    中学受験で第一希望に合格したかんこが、庇護すべきなのは父と母だということに気づくくだり。
    親と子が、立場が逆転する小説は多いだろうが、こういうシーンを持ってくるか!と痺れた。

    いわゆる「教育虐待」の話で「ヤングケアラー」の話なのだが、そういった社会問題を安易に持ち出すのも憚られるほどの圧倒的な「文学」。
    解決すべき問題として扱わないところに、リアリティがあり、芸術性もある。

    宇佐美りん、何者だ?

  • 愛されたくても愛されずに育った父。
    自分の心と身体が思う様にコントロールできない母。
    両親の期待の重さと様々なトラブルから逃げるしかなかった兄と弟。
    恐らく、自律性調整障害で学校に行くことが苦しかったかんこ。

    家族の何気ない日常の諍いが、お互いをどうしようもなく苦しめてしまう様が淡々と描かれている。

    こういう、気持ちのコントロールができずに相手を責めたり絶望することってあるよな…と思いながら読み進めた。

    人は、人を傷つけずには生きられないし、知らぬ間に傷ついたり傷つけたりしてしまう。
    家族だからこそ、傷つき、傷つけられることは多い。
    それぞれが過去の傷から癒えることがないままであれば、尚更傷に泥を塗ることもあるのだと思う。
    誰か1人が悪いわけではない。
    みんな苦しみながら生きてる…

    それに気づいただけで、世界は何も変わらないかもしれないけれど、自分を苦しめるあの人の苦しみにも想いを馳せられるような気がした。


  • そんなに文章量多くないのに、読むのに時間かかったー。
    しかも、結局、よく分からない…。
    ☆3の評価だけど、どちらかと言えば☆2より。
    途中に、車内で家族の喧嘩シーンがあって、
    それがリアルに感じて、読んでて辛くなったから、
    ちょっと評価上げて☆3にした、って感じ。

    もぅ、ずいぶん長い日数かけて読んじゃったから、
    話の内容ほとんど覚えてない…(;・∀・)
    ↓こんなんだった気がする…(違ったらゴメンナサイ)

    ・主人公は女子高校生。兄弟もいるけど一緒に住んでない。
    ・父は勉強に関してスパルタ。殴ってくる。
    ・父の親が死んじゃったから、家族で葬儀に行く。
     その道中は、車中泊しながら行く。昔から旅行は車中泊。
    ・車で家族が喧嘩する。雰囲気めちゃ悪。
    ・主人公は、車で生活する。そのまま高校にも送ってもらう。
     不登校ちっく。
    ・兄は両親のことが嫌でも結婚したあとも、寄り付いてない。
    ・母は病気した&病んでる系。

    好きな人は好きだろうけど、私には合わなかった…。
    作者だって、伝えたい意図があると思うのに、
    私には伝わりませんでしたー。
    ゴメンなさいー・゚・(●´Д`●)・゚・

  • DVをする父とヒステリーな母。かんこと両親は完全に共依存。特に母親のワガママからのヒステリー、心中しようとしたり他人に迷惑をかけまくったりする部分がひたすら不快だった。「どうせあたしが悪いんでしょ」と居直り被害者のような態度には、自分も覚えがあるから…。きっとずっと眉をしかめて読んでいたと思う。
    だからこそ、親と離れた方がいいという周りの意見が耳に入らないかんこの気持ちには正直共感できなくて、読んでいて辛かった。私は完全に兄側だ。
    でも共感は出来ないけど分からなくもない。冒頭の、「にい、かんこ、ぽん」が「かんこ、ぽん」になり、やがて「かんこ」になるところ。兄も弟も、両親をさっさと切り捨てて出ていった。それは、かんこがいたからできたことなんじゃ?残される人がちゃんといるから、安心して切り捨てることができたんじゃないのか?そして、最後に残されたかんこは?じゃあ自分も、とはたしてなるか?
    兄も、そして、弟も含めて、きっとこの家族が幸せになることはないだろうと思うと、しんどいな……。

  • 流れるような写実的な文章はとても美しい絵画のよう。でもそこに残酷さが加わるともの凄く生々しい。

    私には無理。
    いくら家族でも言ったりしたりしてはならない事があると思う。
    ちょっと理解が追いつかない。 https://t.co/c2ZRZC16s8

  • 「くるま」の娘ってそういうことか~と途中で気づく。
    かんこの家族はなんだか不思議、と言うかいびつな感じで、なんだかつらい話だった。

  • ひとりの人間にはこんなに感情ってあるのかと思うくらい悲喜交々描かれている。それは家族として向き合ったからこそそれぞれの感情でもあるのかと思うと、ここまでの感情を感じることのない自分はどこか欠落しているのかきちんと向き合ってないのかとも思ってしまう。突発的な怒りや涙にも過去と現在に理由があり、凪と時化が繰り返すように生活は続いていく。あまりにもリアルで読みながら一時も心は落ち着かない。本文の最後にある昨日と今日、生と死、平和の在り方、ゾッとするがその通りなのだろうと納得させられる。

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著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

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