まっとうな人生

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030364

感想・レビュー・書評

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  • まっとう=全う
    まとも=真面(正面)
    表記を変えるとなおさら思う、なるほど
    まっすぐに受け止められなくても、不真面目っていうわけじゃない
    それこそ「逃亡」せずに向き合えるのなら、それでいい
    何気ない日常にいろいろ積み重なって、いつか爆発するのかそれが財産になるのかはわからないけど、そうやって毎日生きる
    まるでノンフィクションのような忍び寄るコロナ過の件は、なかなかに辛い
    「くそたわけ」の記憶が全くないけど読み直しはしないでおこう
    そしてもう少し軟化したら、富山に行く予定を組もう

  • なんか逃げた話読んだなあと思ってたらその(一応)続編だった。でも知らなくても問題ない。
    絲山秋子がかく地方がほんとにほんとに好き。一人称の語りに時折まざる博多弁?が「たびのひと」感をましていて、でも別に疎外されてるわけでもない。あの感じ、めちゃわかる。あと一番わかって笑っちゃったのは、夫が抱く金沢コンプレックス。私は富山にいるわけじゃないけど、他県・他市に抱くアレ、ほんとあるある。
    もしかしたら絲山秋子はずっとどこでも「たびのひと」と思いながら生きてるのかもしれないなあ。というか、作家ってそういう「他者の目」を持ってる人のことなのかもしれない。

  • 『逃亡くそたわけ』から十数年後、双極性障害だった「あたし」とうつ病だった「なごやん」が偶然再会した。ふたりとも家族がいて、同じ富山県に住んでいた。
    お互いの家族でキャンプに行ったりして旧交を温めるが、時代はコロナ禍に突入する。

    ”生きることはほんとうに面倒くさい。
    生活は終わらないのだ。続けるしかないのだ。裸で暮らす日がないから、死ぬまで選択は終わらない”(P235より引用)

    コロナ禍に限らず、生きていくということは日々を繰り返し、人間関係で磨耗していくことだ。
    そんなとき、ふと孤独が欲しくなる。都会の隅っこでこっそりため息をつくような孤独。「あたし」の夫、アキオちゃんは好きにしたらいいと言ってくれるが、些細なことで怒らせてしまうこともある。
    再会した「なごやん」とだって喧嘩になるし、あとで謝られても喧嘩したことがなかったことになるわけではない。

    コロナ禍だろうが災害が起きようがどこかの国と国が戦争しようが、自分が生きている限り生活は続く。
    失敗や苦労はできるだけしたくないが、人生を振り返るときに思い出すのは成功体験だけではないはずだ。

  • 「逃亡くそたわけ」の続編といえば続編。本作単品でも十分に面白いが、前作を読んでいるとより細かいところの意味合いが感じ取れる。
    一言でいうと家族の小説。ちょっと詳しくいうと家族を含めた様々な世代の老若男女のコミュニケーションの難しさ、大切さを問う小説。
    最後の章は特に含蓄に富んだセリフが続く。
    主人公の娘がある意味この小説のキーパーソン。発想や発言が非常に魅力的でキュートな女の子だ。この子の視線、この子が主人公の小説が読みたくなる。

  • 日常と
    そこに起こる、客観的には些細だが主人公にすれば大きなこともある波風の話

    たんたんと、少しの起伏を挟みながら、日々は続いていく

  • 何も考えずに借りたら「逃亡くそたわけ」の続編だった!
    富山が舞台。コロナ禍中の家族の話。
    半分自伝のような感じと思われる。流れ的にちょっと心配したのだけど、変に不倫とかの話にならなくてホッとした…。

  • 言葉の使い方が絶妙。
    精神疾患を抱える主人公の気持ち、共感できる。

    ー元気な時は想像力が不足しがちだ。落ち込んでいる人に面と向かって「出口のないトンネルはない」とか「明けない夜はない」などと言ったりする人もある。あるよ。出口のないトンネルはブラックホール。明けない夜は宇宙。ー

    すごく響いた。

  • 読み終わってから一週間ほど経つが『消えない傷もある』という言葉が頭から離れない。本当にそうだから。『出口のないトンネル もある』し、『明けない夜もある』という言葉も、よくぞ言ってくれたと思う。

    退屈な本と思っていた序章部分。 でも『沖で待つ』という清しい本を書いた筆力のある作家さんだから、何かあるはず、 このままでは終わらないはずと思ってページを進めていくうちに、主人公の花ちゃんが私の中にスッと入ってきた。そしてコロナ禍で花ちゃんが感じたことは、私や私の周りの真っ当な人たちが 強く心に思っていたことだった。

    双極性障害という病を抱える花ちゃん。
    『まっとうな人生』というタイトルを思う時、花ちゃんこそ、まっとうなのではないか と 読み終わって気付かされる。

    平易でわかりやすい言葉を使いながらも的確に心情を描写していく文章に、純文学の香りを感じる。

    作者自身も 双極性障害を長きにわたって患っていたとググって知った。作品に落差があって遠ざかっていた作家さんだったけれど それを知って 誤解が解けた。

    この本の前作というべき『逃亡くそたわけ』を読んでみたくなった。

  • もう新作は読めません。本当に、残念です。

  • 富山の習俗を知ることが出来て面白い。
    何気ないけど、はっとなるような言葉が出てきて、しばしば本を閉じてぼんやりと考えたりした。
    『若さは狭さだ。そして、色の濃さだと思う』という言葉はまさにそうだなと感じた。若いときは家族各自の色が濃くて色味が合わずに喧嘩した、でも、段々色が薄くなってくると組み合わせでそこまでのぶつかり合いもないように、喧嘩も反発もしなくなる、と。

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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