- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309030364
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
なんか逃げた話読んだなあと思ってたらその(一応)続編だった。でも知らなくても問題ない。
絲山秋子がかく地方がほんとにほんとに好き。一人称の語りに時折まざる博多弁?が「たびのひと」感をましていて、でも別に疎外されてるわけでもない。あの感じ、めちゃわかる。あと一番わかって笑っちゃったのは、夫が抱く金沢コンプレックス。私は富山にいるわけじゃないけど、他県・他市に抱くアレ、ほんとあるある。
もしかしたら絲山秋子はずっとどこでも「たびのひと」と思いながら生きてるのかもしれないなあ。というか、作家ってそういう「他者の目」を持ってる人のことなのかもしれない。
-
「逃亡くそたわけ」の続編といえば続編。本作単品でも十分に面白いが、前作を読んでいるとより細かいところの意味合いが感じ取れる。
一言でいうと家族の小説。ちょっと詳しくいうと家族を含めた様々な世代の老若男女のコミュニケーションの難しさ、大切さを問う小説。
最後の章は特に含蓄に富んだセリフが続く。
主人公の娘がある意味この小説のキーパーソン。発想や発言が非常に魅力的でキュートな女の子だ。この子の視線、この子が主人公の小説が読みたくなる。 -
日常と
そこに起こる、客観的には些細だが主人公にすれば大きなこともある波風の話
たんたんと、少しの起伏を挟みながら、日々は続いていく -
言葉の使い方が絶妙。
精神疾患を抱える主人公の気持ち、共感できる。
ー元気な時は想像力が不足しがちだ。落ち込んでいる人に面と向かって「出口のないトンネルはない」とか「明けない夜はない」などと言ったりする人もある。あるよ。出口のないトンネルはブラックホール。明けない夜は宇宙。ー
すごく響いた。 -
読み終わってから一週間ほど経つが『消えない傷もある』という言葉が頭から離れない。本当にそうだから。『出口のないトンネル もある』し、『明けない夜もある』という言葉も、よくぞ言ってくれたと思う。
退屈な本と思っていた序章部分。 でも『沖で待つ』という清しい本を書いた筆力のある作家さんだから、何かあるはず、 このままでは終わらないはずと思ってページを進めていくうちに、主人公の花ちゃんが私の中にスッと入ってきた。そしてコロナ禍で花ちゃんが感じたことは、私や私の周りの真っ当な人たちが 強く心に思っていたことだった。
双極性障害という病を抱える花ちゃん。
『まっとうな人生』というタイトルを思う時、花ちゃんこそ、まっとうなのではないか と 読み終わって気付かされる。
平易でわかりやすい言葉を使いながらも的確に心情を描写していく文章に、純文学の香りを感じる。
作者自身も 双極性障害を長きにわたって患っていたとググって知った。作品に落差があって遠ざかっていた作家さんだったけれど それを知って 誤解が解けた。
この本の前作というべき『逃亡くそたわけ』を読んでみたくなった。
-
もう新作は読めません。本当に、残念です。
-
富山の習俗を知ることが出来て面白い。
何気ないけど、はっとなるような言葉が出てきて、しばしば本を閉じてぼんやりと考えたりした。
『若さは狭さだ。そして、色の濃さだと思う』という言葉はまさにそうだなと感じた。若いときは家族各自の色が濃くて色味が合わずに喧嘩した、でも、段々色が薄くなってくると組み合わせでそこまでのぶつかり合いもないように、喧嘩も反発もしなくなる、と。