- Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309205229
作品紹介・あらすじ
表題作ほか、死者たちのための灯火が、ひとつ、またひとつと消えていくのを目撃した少女の恐怖を描く「灯火を盗んだ男」、思春期の少女の性愛に対する深層心理を浮かび上がらせた「眼鏡の男」「天使の通り」など、夢想と現実のあいだを自在に行き来する「子ども」を主題とした傑作を収録。夫モラヴィアと並んで戦後イタリア屈指の作家の自選作品集。
感想・レビュー・書評
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20世紀イタリア最大の女流作家とも言われるモランテが1963年に発表した短編集が、50年近い時を経て邦訳出版。
使者を弔う灯火が教会の番人の男にひとつまたひとつと消されてゆくのを震えながら見守る幼女の話「灯火を盗んだ男」、修道女の手によって刺繍をほどこされた空色の美しい下着をつけた少女の性愛の目覚めが語られる「天使の通り」、オペラ座のバレリーナで一家の女王だった母の美しき幻像が剥がれるにつれ同情と幻滅を覚える息子の心情を描いた表題作「アンダルシアの肩かけ」など、虚構に揺れる現実と夢の世界を行き来する子供たちや、家族間の歪んだ関係が体の窪みをゆっくりと指でなぞっていくような繊細な語り口で綴られています。
「娘時代も一人前の女となったあとも、子どもを持ちたいという欲望はエレ―ナの内側で燃えさかっていた。そして、空しい待機のあいだ、この絶望的な激しい欲望のなかで自分のはらわたが乾いてゆくのを感じながら、豪華な衣類一式を縫い、修道院でカズラを縫う修道女たちと同じ神秘的であどけない喜びを覚えながら、よだれかけと肌着に刺繍をした。嫁としての日々の多くをこの仕事で過ごし、それはときにはエレーナを優しい気持ちにし、ときにはもだえ苦しむほど気落ちさせた。この産着のなかに柔らかな生きた体を思い描こうとし、夜には、夢のなかで息子が胎内で動くような感じがして飛び上がった。」(『祖母』より)
エルサ・モランテの他の長編などはかろうじて数冊出版されているものの現在絶版。がんばれ復刊ドットコム!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編集。
まだ読み始めたばかりだけど、言葉まわしがすごく魅力的で一気に引き込まれています。
翻訳がいいのかな。
「厳かなヘブライ語でわたしを呪うのがいつものならいだった」とか「きっともう死ぬこともできないのだろう」の前後の流れとか。
視覚的な暗さが浮かんでくるよう。
「アンダルシアの〜」っていうタイトルだからスペイン文学かと思ったら作者はイタリアの方でした。
これから読むのが楽しみです♪
↓読んでみての感想。
ちょっと・・・分からないかも(・_・;)
大学の時、スペイン語の翻訳の授業で、描写の飛び方が理解できなくて、訳された日本語すら理解できなかった時の気持ちがよみがえってきました・・・orz
そしてとても暗くてちょっと気持ち悪い・・・ウェット系?
わたしは暗いのはドライ専門だなっと気付いた1冊でした〜。 -
子供の頃から文章を書きそれが出版され、玄人連中から絶賛されてきた。完璧に若い頃から自分の世界、居場所を所有している。
その視線が全然やさしくない。高慢な神のように頭上から愚かな人間に対して、愛情の欠片を見せずにズサリと突き刺す。必要以上に光をあびせる。
文章はこのように感じたが、人間というものをここまで執拗に観察できているのは、やはり愛情という力がなせる技なのだと思う。
甘酸っぱい恋心というものに頼らずに、人に対する人への執着を表現することに、他人からの評価の排除を感じとれる。 -
一年近く前から、少しずつ少しずつ、途切れ途切れに読んでいました。
どう受け止めたらよいのか、およそ俗人の私には戸惑う物語展開の短編集。訳者(北代美和子さん)あとがきに「本人も作り話をまるで真実のように語り、人を欺くことに長けていたらしい」というモランテ評が記されていますが、そのとおりだったのではと思います。
なんだかよく分からない世界…え、これでこの話おしまい?…とモヤモヤしながら、ページを行きつ戻りつしながらも、この本を投げ出せなかった理由はなんだろう?と考えていましたが、やはりあとがきの「モランテの短編では(…)三人称で書かれた作品でも語り手の存在が感じられる場合が多い」にその答えがあるのかもしれないと思い当たりました。何と言ったらよいか、語り手に手書きの創作ノートを少しずつ見せられ、額を寄せて読み聞かせられているような、時には生温かい息づかいが感じられるようで…「つまんない?じゃあもう見せないからいいわよ」と言われるのを恐れて、一生懸命ついていこうとしているような…そんな読書でした。
↑我ながら意味不明、消化不良の感想だけれど、再読した時にまた違う感じを受ける気がするから、今の感じを書いておきます。 -
2013/9/13購入
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エルサ・モランテ編纂による短篇集。12篇収録。
現実と幻想のあわいに漂っているかのような「子ども」たち。その幻想からの目覚めを描く筆にも容赦はない。
母親というものは、いつまでも幻想のうちに生きようとしているのかもしれないが。
ヴェナンツィオの短い人生を描いた「いとこのヴェナンツィオ」、一人の女性の姿をとおして永遠の子どもなるものを描いた「ドンナ・アマーリア」が好み。
Lo Scialle Andaluso by Elsa Morante