- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309208596
感想・レビュー・書評
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「意識の流れ」小説として面白く読んだ。主人公の過去や捨てられないこだわりが「今ここ」に継ぎ目なく入り込んでくる様子がとても自然でぴったりくる。文学の一つの技法にこんなふうに親しみを感じるとは思わなかった。ジョイスやウルフの小説の主人公の意識の流れ方のほうが、ぴったりくる人もいるかもしれない。意識の流れ方は人によって違っていて、それが小説の評価にも影響するのかもしれない。どうなんだろうか。
年を取ってくるといろいろ記憶の地層に積み重なってくるから、今現在何かをしながらも絶えず記憶の断片が浮かんでくることがあり、またそういう断片が今さらどうしようもないことだったり特段に想い出す楽しさがないことだったりする。ローマルクは感じのいい人ではないけれどいろんな後悔はあって、それらを抱えてじっと生きているのが伝わってきて、しみじみするものがあった。 -
ドイツにあるバカロレア(高校卒業国家試験資格なんだね?大学に行くための資格と思っていたよ)受験のための中学校の教師の日常。生物の先生で不必要に我々にも図版付きで貴重な(しかし日常生活には役立たない)知識を披露してくれる。絶滅してきた生物。それは生き延びるには不利な遺伝子であった。現在自分が受け持っているクラスにて女子生徒が結構あからさまないじめを受けていた。もちろん認識している。しかし教師が執着するのは別の生徒であり、そのいじめられっこに関しては「弱いものは滅びるんだぜ」とばかりに放置。そういう話なのか?
なんか自分にはぽかーん作品でした。 -
人間は常に課題を背負っている
これが表題を導き、物語と彼女を救った気がします…
生物学の見識で生徒の行動を俯瞰した描写は
学者肌の主人公の考察として面白い
娘がいじめに遭ってもドライで情け容赦ない対応は教師の堅持にして恐ろしい -
これだから、読書、ホントの出合は刺激的かつ楽しく止められない。
日本では逢うことが珍しいタイプの作品だった。
3人称でありながら、生物学教師ローマルクのモノローグの呟きでストーリーが展開する。
ダーウィンを深く信奉する彼女。長年の教師生活で完膚無き程に築き上げた地の世界・・だがある一人の生徒との出会いはそこへ無数の亀裂を生じさせ ほころびを齎す。
古きドイツの言葉、ものの世界は背後で再現される。所々に挟まれる生物学の挿絵が彼女の世界を表出する。
全ては何かの役に立つ・全てには意味がある・努力は無駄でない・適応、環境、インゲ・ローマルクの脳ががちがちの生物学的、ダーウィニズムからソフトに進化を。 -
インゲに共感できるところと、理解できないところと、まだらな気持ちになってしまい、終始、著者がインゲについて読者にどう感じて欲しいと思っているのか(好きになって欲しいのかどうか)分からないまま読み終え、後書きを読み、どちらの側へ導くわけでもなく、ニュートラルな立ち位置に立っている様子でなんだかホッとするところもあった。
次第にインゲの思考の強弱が分かってくると、
生物学の揺るぎない知識の中で守られつつも、気持ちが揺らぐポイントや、変わらないつもりでも、確実に自分自身も進化の営みに晒されて揺れる様子などが、ちょっと切ない。
東西の統一で起こってきている教育現場の変化の兆しと変われないインゲを代表とする東的な教育者たちなどの様子は、今の日本の現状にも通ずるところがあり胸が痛かった。
図版はとても美しくて見惚れた。 -
変化を拒否する生物の教師が、進化論を子どもたちに伝えていく。教室では教師(それも教科のみ)に徹し、人としては接しない。
そんな主人公を中心に教育とは? 進化とは何かを問う。タイトルもいいねぇ。 -
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