坂本龍馬とその時代

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  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309225197

作品紹介・あらすじ

脱藩、勝海舟との邂逅、海軍操練所、海援隊、薩長盟約、船中八策、薩土盟約、そして大政奉還…。維新前夜、国家存亡の危機の時代に、近代的な国家構想を描きつつ、志半ばで倒れた稀代のネゴシエーター・坂本龍馬33年の生涯。

感想・レビュー・書評

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  • 大河ドラマの影響もあり、またしても世は龍馬ブームでありますが、この本は、歴史学者である著者が、フィクショナルな脚色を排して、あくまで史料に基づき龍馬の半生を軸にして幕末史を改めてまとめあげたものです。

    といってもこの本で描かれる龍馬の人間性や功績は、一般に広く行き渡っているイメージと大きく異なるものではありません。
    黒船来航以降の国家の危機に際して、国の形を作りかえる大政奉還を実現させるにあたっての龍馬の功績はきわめて高く評価されています。

    この本を読むと、龍馬が非常に優れたエージェントであり、コーディネーターであったことが分かります。
    特に強調されているのは薩摩藩首脳部との強い信頼関係。
    薩長盟約も薩土盟約も龍馬の活躍無くしては実現はなかった。
    薩摩藩のエージェントとなった龍馬が、京へ長州へ長崎へと信じがたいほどのフットワークの軽さで飛び回った足跡が詳らかになっています。

    また、興味深かったのは「攘夷」という概念について解説された部分。
    一口に攘夷といってもその概念は幅広く、過激な排外思想に留まらず、「破約攘夷」といって幕府が外国と結んだ通商条約の不平等性を改めようとする思想・運動も攘夷と云うことができる。
    さらに、外国との交渉にあたっては無闇に追随的になるのではなく主張すべきところは強い態度で主張しなければならないといった考え方も攘夷と捉えることができる。
    そのような、マイルドな攘夷思想というものは開国思想と必ずしも正面から衝突するものではないわけです。
    個人的に、この時代、西国雄藩が攘夷、開国とイデオロギーをころころ変えることが、以前からどうも腹に落ちなかったことはブログにも書いたことがあるんですが、<a href="http://blog.goo.ne.jp/rainygreen/e/98fe26cc2dc61c971a60c6ada0014ac6">このエントリ</a>や<a href="http://blog.goo.ne.jp/rainygreen/e/7c9a1f5f853817b0fb80f6b77279514a">このエントリ</a>に書いたように、イデオロギー闘争ではなく権力闘争であったとの整理の仕方をすると理解しやすいのかなと考えておりました。

    しかし、本著に拠ればその理解でも十分でないことになる。
    著者によると薩摩は「幕府を倒す」とは一回も意思表明したことはないそうです。
    西南雄藩や龍馬らに共通していたのは、国家滅亡の危機に際して、まったく頼りにならない幕府や朝廷に国の舵取りを任せていては取り返しのつかないことになる、という真摯な危機感であったようです。

  • 新しい龍馬感ができた

  • 2010.01.24 日本経済新聞に掲載されました。

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著者プロフィール

1940年、秋田県生まれる。1970年、立教大学大学院文学研究科博士課程修了。京都大学教授、奈良大学教授などを歴任。2016年、没。
【主要著書】『大久保利通と明治維新』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館、1998年)、『江戸が東京になった日』(講談社選書メチエ、2001年)、『幕末政治と薩摩藩』(吉川弘文館、2004年)

「2022年 『幕末政治と薩摩藩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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