倫理

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309243016

作品紹介・あらすじ

"不死なるもの"に死すべき者として踏みとどまれ!ジジェクらに大きな影響を与えたフランス哲学界の鬼才・バディウがあらゆる善‐悪をめぐる議論を破砕する思考の炸裂弾、名著ついに翻訳。

感想・レビュー・書評

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    23頁
    ヴァルラーム・シャラーモフが『収容所生活の物語』で描き出したように、馬とは異なる仕方で抵抗する一匹の動物が問題になるときにこそ、まさに〈人間〉はある。この抵抗は、人間という動物の脆い身体によってではなく、みずからの存在に踏みとどまり続けることへの堅忍にもとづいた不抜の抵抗、犠牲者とは他なるもの、死‐に向かう‐存在とは他なるもの、それゆえ死を免れないものとは他なるものとしての自己という存在に踏みとどまり続けることによる、抵抗なのだ。
    24頁
    真の人権とは、それ自体への権利において自らを肯定する〈不死なるもの〉への権利であり、あるいはその主権を苦痛や死の偶発性に対して行使する〈無限なるもの〉への権利なのだ
    25頁
    犠牲者には、憔悴しきった動物たちがスクリーンに映し出されているといった役割が、また慈善家には、良心と命法にもとづく介入という役割が――こうした分裂が同じ事態に同じ役割をいつも割り振ってしまう理由とは何か?
    28頁
    人間は、不死なるものとして、計算‐説明不可能なものや所有不可能なものによって、自らを支えている。人間は非‐存在として自らを支えるのだ。自らに〈善〉を描き出そうとすることを禁ずることや、〈善〉に向けて集合的な力を秩序立てて組織しようとすること、思いもかけない可能なるものの到来に向けて働きかけようとしたり、現状との根源的切断において存在可能なものを考えようとすることなどを禁じることは、端的に言って、人間に人間性そのものを禁じることなのだ。
    43頁
    レヴィナスの試みが途方もなく執拗に私たちに喚起すること、それは倫理から思考可能なものや行動原則を作り出そうとするあらゆる企てが、本質的には宗教的だということだ。
    45頁
    問題は、まさに「差異の尊重」や人権の倫理が同一性を定義しているかに見えるということだ!また、その結果、差異の尊重が適用化されるのは、ただこの同一性――西欧の同一性――とほどほどに同質な差異に限られるということが問題なのだ。
    48頁
    無限の他性とは、端的には、あるということなのだ。いかなる経験であれ、無限の差異の無限に配備されている。
    65頁
    ナチズムとはとことん〈生〉の倫理だったのだ。ナチズムはそれ独自の「尊厳ある生」についての概念を有しており、またそうした基準から、尊厳に値しないと見做された生に無慈悲な終わりを与えることを引き受けたのだ。
    保守主義が「不可能だ」と布告する何ものかを意欲することを宣言し、こうした無への欲引きはがすのである。
    83頁
    欲望とは無意識の主体の構成要素であり、したがってすぐれて知られざるもの‐非知。「己の欲望についてあきらめることなかれ」は、「自分が知らない自分自身のそうした部分についてあきらめるな」を意味している
    84頁
    「君の固執を超出したものを存続させるために、君に耐え凌ぐことができるあらゆることを行え。中断において固執せよ。君を捕獲し断ち切ったものを君の存在において捕獲せよ」
    88頁
    複数の真理の倫理にはただ一つの問いしかない。任意の何ものかである限りでの私は、どのように私自身の存在を超え出ることを継続しようとするのだろう?

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著者プロフィール

(Alain Badiou)
1937年、モロッコの首都ラバトで生まれる。1956年にパリ高等師範学校に入学。1960年に哲学の高等教授資格試験に首席で合格。ランスの高校の哲学教師を経て、1966年秋には同じくランスで大学への予備教育のために新設された大学コレージュの哲学の教員に任命される。その後、パリ第八大学教授、高等師範学校哲学科教授などを経て、現在は高等師範学校の名誉教授。1966–1967年度に始まった公開セミネールは、ランス、ヴァンセンヌ実験大学、パリ第八大学、国際哲学コレージュ、パリ高等師範学校、オーベルヴィリエのコミューヌ劇場と場所を変えながら、2017年まで続けられてきた。邦訳された主な著書に、『推移的存在論』(近藤和敬、松井久訳、水声社、2018年)、『哲学宣言』(黒田昭信、遠藤健太訳、藤原書店、2004年)、『聖パウロ――普遍主義の基礎』(長原豊、松本潤一郎訳、河出書房新社、2004年)、『ドゥルーズ――存在の喧騒』(鈴木創士訳、河出書房新社、1998年)などがある。

「2019年 『ラカン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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