警察官をクビになった話

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 58
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309287874

感想・レビュー・書評

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  • 珍しく1日で読み終わった。
    他ならぬハルオサンの、前作の出版社(角川書店)には根こそぎスポイルされた、ほんとうに描きたかった話そのもの、だったからかもしれない。
    言い換えれば、彼がブログで何度も何度も何度も書いてきた物語そのものだから。概略を知っていたから、だったのかも。
    しかし改めて胸に滲みた。

    警察という組織が多くの部分で腐ってることは、テレビの真摯なドキュメンタリー番組なんかをちゃんと見てれば誰にでもわかる。
    しかしそれを、「普通に生きてれば関係ないこと」として、つまり他人事として切り離して生きてしまう人々、忘れてしまう人々もいる。
    というより、残念ながらそういう人たちこそが多数派で、だからこそ暴力的組織である警察はいつまでも病んだまま存続し続けてしまうわけなんだけども。

    幸か不幸か、ハルオサンはそんな警察に、そして警察官に、強く憧れる少年として育った。
    ドラマで見るようなカッコいい警察官になるんだ、というハルオ少年の浅はかな夢を、誰も笑えないだろう。少なくとも僕は笑えない。
    そんなイノセントなハルオ少年が、警察学校に飛び込んで味わう挫折、孤立、苦悩、凄まじい暴力と偽善。
    それが簡潔に、しかし情動の推移に関してはおそらく余すところなく描かれている。

    僕も僕なりに、いろんな冤罪事件の顛末や、平和的なデモや座り込みに対する警察官たちの理不尽な横暴をいくつもいくつも見聞きする中で現実を知ってきた。
    でも、それは常に警察という組織を外部から見て得られる情報だった。
    この異常な組織が、内部的にはどのように構築され維持され再生産されていくのか、それをハルオサンの体験を追体験していくことでまざまざと見せつけられた。

    割符のようにぴったりと合うんだよ。警察という組織の、外部から見た異常なふるまいと、ハルオサンの目を通して見た内部的実情とは。
    そして改めて、つくづくと怖いと思った。こんな組織に「治安」を委ねている現状が。
    と同時に、ハルオサンの描くものを虚構だ、警察に対するいわれなき誹謗中傷だと非難する人間たちの言い分が、とても笑止に思えるということもいっておかなければならない。

    黙らせたいだろうね、彼らはハルオサンを。
    読者の感情にじかに訴えかける、詩的情緒と異質な情感的説得力を帯びた一種ヘタウマな彼の絵を。
    バカ呼ばわりされ続けたわりにひどく明晰な告発を。警察の威信を地に叩き落とす数々のエピソードを。
    しかし何があろうと、ことこの警察学校で彼が体験し続けた戦慄すべき人権蹂躙教育の日々に関する限り、僕はハルオサンを100%信じ切ることができる。

    日本という国家の、最も日常的な暴力装置としての警察。
    その闇を、いち読者としてハルオサンと共有できることを、僕はとても誇らしく思っている。

  • ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

  • ブログで見つけて、書籍化されるのをずっと待っていた。
    正直、ブログからの書籍化は『ほぼブログのまま』だったり、『ストーリーはほぼそのままで、少しだけ描き直した』といったものが多い気がする。

    けど、この本は違った。
    ブログと同じ内容だけれども、色々と加えてすべて描き直してあった。
    本を開いてすごいと思った。ブログで何度も繰り返されていた『警察官をクビになった話』がものすごくボリュームアップしている。
    細かいエピソードが増えている。ページ数も多い。

    ブログで読んだ。なんて言えるようなものには仕上がってない。
    ブログはブログ。書籍は書籍。ちゃんと分かれている。



    買ったかいがあったと思えるし、ブログを読んでも、『全く違うから本も読んでみたらいいよ』と勧めたくなる。



    ただ……絵柄は好き嫌いが出てしまいそうだし、話もちょっと重いので、こういう物が好きではない人には向かない。



    ブログを確認してみたら、昔のように見やすいものにはしてなかった。
    ……もっと以前の話に文章と絵をまじえて書いた記事があった。個人的にはそっちの方が好き。



    で。本の感想。
    …すごい。の一言しかない。



    警察官はテレビの中のモノ程度にしか知らないし、身近にいないので分からないケド。
    他人の命を守るための訓練で個人を殺すことが出来る。そんな世界があるんだなと思う。
    別にそれが悪いという気はない。たぶんそれも『正しい』のだと思う。
    正しさを貫ける人達はそうしたらいい。

    著者の「ハルオサン」のツイッターもフォローしているけれども、すごく優しくて私は好き。
    言葉が丸い。実際のハルオサンがどんな人なのか分からないケド。
    弱者に寄り添う……寄り添おうとしている感じの言葉が好き。



    正しさを貫けない。
    正しい答えが一つではない。
    どれが正しいのか分からない。

    それでも、選び取る『優しさ』が好き。

    本の終わりは、どんな風におしまいにするかな……と思っていたけれども、
    ブログと同じような優しい終わり方だった。



    着地点はやっぱり『強い正義』より『弱い優しさ』なのかなと思った。
    私の勝手な印象。

  • 警察学校でイジメやパワハラを受けた話。

  • 読んでて苦しい、いじめの話から、少し筒抜け出そうともがいて必死な話。
    警察学校でのパワハラといじめにより退学した話。
    家庭環境も哀しい。
    コミックエッセイなのだけれどその絵が想像力がある人が見るといくらでもキツイ方向に読めてしまうので注意がいるかな。

  • パワハラやん。

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著者プロフィール

18歳で警察官をクビになり、営業や特殊清掃、日雇い仕事などを転々とする。2017年、初めて描いた漫画『警察官をクビになった話』をWEBで発表。1日200万PVを記録するなど、大きな話題となった。

「2020年 『警察官をクビになった話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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