四万十川 第1部: あつよしの夏 (河出文庫 245A BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309402956
感想・レビュー・書評
-
子供の塾の推薦図書。四万十川を望む高知県を舞台に物静かな小学3年の少年・篤義が主人公の物語。両親と5人兄妹、決して裕福とはいえないが、家族それぞれが一生懸命自分の役割を果たしているところに、家族のありかたの基本的な大切さを見た気がした。生活の中の四万十の存在、口数の少ない篤義が、日常の出来事を通じて、やがて自分の意思を表せるように成長していく様子など子供に学ばせたいものがある。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
多分20数年ぶりの再読。
小学生に、昭和中期?の田舎の繊細な少年の話は難しかったようでほぼ初めて読了。
主人公の父の「今の世の中を自由社会じゃ言うもんもおるけんど、内容は弱肉強食じゃもんね(中略)この世の中じゃあ、差別も、いじめものうなるこたああるまい」と言う言葉が2022年の今、意味合いを持っていることに驚く。
作者の思想と自分の思想は明確に違うが、現代の格差社会は面々と続くヒエラルキー競争の現代版というだけなのか?という気もしてくる。
それはともかく、猫の話など物語としての強度は高いのでは。 -
あつよしが立ち向かった描写は何回読んでも心を打ってくるし泣かせてくる。俺にはできひんかったことやからやと思う。
-
猫好きにお薦めの作品。キィという雌猫が出てくるのだが、その賢いこと、勇敢なこと、愛情深いことといったら、泣けるくらい。まさに猫母の鑑。
こういう作品を読むと、「大人になる」ということを考えさせられる。主人公のあつよしは小学3年生だが、今の中高生くらいの精神年齢ではないだろうか。姉と兄はそれぞれ中学2年と小学6年だが、精神的にも、労働力としても大人である。あつよしの弟・妹ははっきりと子ども。だから、食品を扱う店として(もちろん昭和30年代の田舎には避妊手術はない)猫の子を間引かねばならないことを理屈では理解しているものの、気持ちの上では絶対に嫌だと思っている。
大人と子供の間の時間の中で自己形成していく過程が鮮やかに描かれている。はじめは自己主張もせず、口数も少なく、家庭でも学校でも目立たないあつよしが、猫の間引きとクラスメイトのいじめ問題をきっかけに、自分自身はどうしたいのか、そのためにはどうふるまえばいいのかを考え始める。
きょうだいもいいが、父と母が素晴らしい。決して豊かではないし、生活を維持することを最優先にしてはいるが、夫婦で相談しながら必要な時だけ手を貸し、見守っている。この夫婦、多分30代だろうと思うが、今の30代とはやはり「大人」としての成長度合いが違う。
家族が助け合って、生きる術を子どもが少しずつ身に着け、それとともに精神も鍛えられ成長する、理想の家庭だと思う。
難を言えば、方言が、なじみのない地方の人間にはちょっとわかりづらいことと、コロバシなどの漁について解説が特にないこと。(調べればわかるが)
読書感想文コンクールの課題図書になったこともあるが、どちらかというと大人の方がより感動する内容ではないかと思う。特に昭和の田舎の生活を知っている人。
しかし、生活と愛情の間で揺れる思いや、いじめにどう対応するかなどは普遍的なことなので、中高生でもいいとは思う。「喧嘩せにゃいけん時やらんがは、優しいじゃないがぞ」という言葉は心に響く。 -
仕事用で読んだやつ!とっつきにくいかと思ったけど全然そんなことなかった!
こんなに子どもの気持ちを理解して文字にできるひとってなかなかいないんじゃないかな…
子どもの時に自分も思っていたけどうまく表現できなかったことが見事に文章で表現されてて本当にすごいなあと。
書かれたのがわたしの生まれる前だったと知って驚き、いまも昔も変わらないんだなあと思いました -
定番。
-
忘れていた感情を思い出させてくれるお話。あつよしの成長と自分の少年時代を重ね合わせてしまう。
-
山形などを舞台とした作品です。
-
南雲先生おすすめ