魚たちの離宮 (河出文庫 な 7-5 BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (1993年7月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309403793
感想・レビュー・書評
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夏の初めから病床に臥す友人・夏宿(かおる)を見舞いにきた市郎が、彼の家で過ごす4日間を描いた物語。家には彼ら以外に、夏宿の弟である弥彦、そして弥彦のピアノ講師である諒(まこと)が登場する。
夏宿の屋敷のふもとにある池には鯉が住い、市郎は夜な夜なその池に降りるたびに夏宿の幽霊らしき白い姿と出会う。弟の弥彦は兄がすでに夏の初めに亡くなったと言い、ある鯉は彼の生まれ変わりだと教える。しかし日が昇れば夏宿は自室におり、床でいつものように本を広げている。
最後まで夏宿の生死がはっきりしない、彼岸にいるような曖昧な世界観だった。家の周りでは木々が鬱蒼としていて、その環境が余計に外界と断絶されたような幻想的な雰囲気を醸し出している。あと夏宿の家業が紺屋ということもあり、夏宿や弥彦が身に付けている着物の表現が毎回丁寧で美しい。濃厚な藍色から伸びる夏宿の白い肌とのコントラストを想像すると、本当に浮世離れしていてこの世とあの世の境目が分からなくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長野さんが気になり始めた今日この頃。
なんと私が生まれる以前の作品ですが、古臭さを感じませんでした。
文字も大きく、わずか100ページほどの詩集のような本ですが、長野さんの世界観が濃縮されていて、流れるような文章が素敵です。
幽霊がキーワードを握る作品ですが、妖しげな美しさがあり、夏宿の繊細な感じと溶け合って、作品に透明感が生まれていたと思います。
もっと長野さんの作品を読んでみたいなぁ。。。 -
再読。主人公・市郎が友人の夏宿の見舞いをする4日間の物語。静かで幻想的な盂蘭盆の風景に、夏宿やその弟の弥彦、謎のピアノ教師の思惑が交錯する感じがミステリアスで惹きつけられた。
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https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
親より噛んだ長野さんの視る幻想の味がします。
小道具の凝りようが好きでした。 -
すごく輪郭が掴みにくいお話。私はとても好きでした。描写が本当に丁寧、衣擦れの音まで聞こえてきそうなくらい。また暫く経ってから読み直してみたいです。
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1993年文庫の初版を購入。めちゃくちゃ久しぶりの再読。
当時、この小説が好きで、内容を理解したくて何度も何度も読み直したことを思い出した。
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幻想的で耽美で、夢のよう。8月が来ると必ず読み返す大切な作品。
長野先生の語彙が大好き。 -
市郎は、病気がちな友人・夏宿の見舞いに訪れる。夏宿に懐く彼の弟・弥彦や謎めいたピアノ教師。古びた屋敷を舞台に、少年たちはたった4日間を共に過ごす。
謎は多く残るが、美しい描写に心奪われる作品。