銀木犀 (河出文庫 な 7-19 BUNGEI Collection)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309404912

感想・レビュー・書評

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  • 長野さんの初期の頃の作風の作品。

    テレヴィジョン系も好きだけど
    この作風の作品もなかなか好き。

    銀木犀に取り込まれた主人公は結果的に残酷な形なんだろうけども、
    でも描写はおそろしいものではなかったし、寧ろゆったりと銀木犀と同化していく様が
    お母さんのお腹の中を思い出させて
    この銀木犀に取り込まれたくて取り込まれたくて
    主人公が羨ましかった。

  • 銀木犀ってどんな香りがするのでしょう。
    緑と雨に包まれた静謐なお話でした。
    銀木犀は少年を取り込み、命を繋いでいく。
    好きな世界です。

  • 最初から最後まで、主人公の見た目も年齢もわからないまま、夏の蒸し暑さや、熟れすぎた果物の半分腐ったような感触が物凄く印象に残る作品。

    物語自体も短く、短編ずつ区切られているのでさらりと読めるかと思ったけれど内容が割と重くて、読み終わった後も作品の雰囲気にしばらく引き摺られてしまう。

    『銀木犀』というタイトル通り、銀木犀を中心に進む物語だけれど、途中から現れる不思議な少年に主人公の日常が掻き乱されてしまう。死んだ鳥の卵や、巣から落ちたヒナだったり、扱い方がわからずに投げ出してしまった小さな命の罪悪感にひたすら囚われてしまって苦しんでいる姿と、泥に沈んでしまいたいといった自虐が混ぜこぜになって、あの少年は、そういった主人公の感傷が見せた銀木犀の幻影なのかな?とも感じました。

    秋になると強い芳香を放つ金木犀とは違って、どちらかといえば目立たない存在の銀木犀でも、実はほんのりと香りがあるようで、知らず識らずのうちにその香りに誘われてそのまま飲み込まれてしまうような、奇妙な感覚。

  • ファンタジックホラー。
    じんわり怖い。

  • 自然に還ると言ってしまえばあまりにも短絡的すぎるけれども、あるものへのどうしようもない憧れを描いていて、あとがきに書いてあるようにカンパネラと同時期に書かれたというのは納得。
    ある意味夜啼く鳥は夢を見たにも近い。

  • ストーリーというストーリーはない。ない?
    登場人物は主人公(といえるのか)の燈水と銀木犀だけ。燈水の社会的属性や誰かとの関係は何も書かれてない。ただの少年。
    お気に入りの隠れ処である銀木犀の幹で眠る燈水、少年の射るような目線に気づいて、不思議な夢を見始め、銀木犀に取り憑かれて、銀木犀に取り込まれる。
    銀木犀の少年は死んだ鳥の体の中の卵を食べるとずっと少年のままでいられるという。その卵を食べさせられて燈水は銀木犀で永遠に眠る。
    泥濘、雨水、死んだ鳥、卵

    感性がそれほど豊かじゃないので「ほえー」って感じで読んだ。正直よくわからん。でもただただ美しい。長野さんの小説って「よくわからんけどまあいいや」って思えるのがいい。
    よくこんな幻想的なものを言語化できるなあと思う。どこからこのイメージは出てくるんだ?

  • '97. 5読了。
    古樹に魅入られて取り込まれる。長野まゆみらしい綺麗なホラー。

  • 『夜啼く鳥は夢をみた』を思い出す内容だった。絡めとられるように夜な夜な銀木犀の元へ向かってしまう燈水のあやうさは、まさに長野少年といったところ。細い首をした早緑の少年へ無意識に抱く敵意。小さい頃、知らぬ土地で出会った同じ年頃の子どもには何故か敵愾心のようなものを感じたものだったけれど、そんな遠い記憶を呼び覚まされて懐かしい気分に浸った。
    初期の作品を読むのは久しぶりで、結末には思わず息を飲んでしまった。

  • あえてカテゴライズするなら、“きれいなホラー”…?
    『夜啼く鳥は夢を見た』と似た雰囲気。

    よく考えればすごい不気味なおはなしのに、
    そう感じさせない表現で、それがまたきれいな文章で、
    言葉がじんわり沁み込んでいく感じ。

    久々に、踊り字が並ぶ作品。
    一の字点、くの字点…日本語って いいな。

  • あとがきが面白い。長野まゆみ作品は少ししか読んでいないが少し文体が違っている。あとがきによると1997年初版発行の初期作品とのこと。なんだか初期の方が読みやすいという気もした。
    銀木犀が題材となっている。銀木犀が薫るこの季節に読めて嬉しい。普段、金木犀の薫りに圧倒され銀木犀に目を留めることは少ない。今度、見つけたらじっくり観察してみよう。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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