幻想の画廊から―渋澤龍彦コレクション 河出文庫 (河出文庫 し 1-39 澁澤龍彦コレクション)
- 河出書房新社 (2001年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309406459
感想・レビュー・書評
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1960年代後半、まだ学生運動もたけなわの頃、本書は出版された。デルヴォー、エルンスト、マグリット、スワンベルク、ブロオネル、ベルメール、アンチンボルト、パルミジャニーノ、ホルバイン、レオノール・フィニー、エッシャー、ウェイン、バルチュス、ゾンネンシュターン、クリンガー、ギュスターヴ・モロー、ベックリン、フリードリッヒ、デジデリオ。。メインでないが、ピラネージやジャック・カロなどにもふれる。
プラーツなどの美術史家の見解にもさりげなく触れる。今でこそポピュラーになったものも多いが、当時ではどうだったのだろうか。時代の空気感から距離を置いた異色の書物だったのではなかろうか。若かりし山尾悠子が熱心なドラゴニアになったのもわかる気がする。
シュルレアリスムは新しい芸術空間そのものを開拓することはなかったと言う評論家の言を引いていたが、なるほどなあと思う。ダリの極めて古典的、厳格さと「溶ける」嗜好との両義性も晩年の古典傾倒との一貫性も納得。
ウェインやスワンベルクに分裂者特有の空間恐怖を見るところはどうなのかなあぅて感じ。最後の仮面論が面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本にハンス・ベルメールの名を伝え、四谷シモン氏を始めとした、今日まで続く球体関節人形のカルチャーが生まれる契機となった……と言っても過言ではないほどの伝説的エッセイ「女の王国」が収録されています。かく言う私もベルメールを知ったことで、シュルレアリスムや幻想絵画といったジャンルにのめり込んでいったので、ずっと読みたかった本でした。本書ではベルメールの他にも、今ではすっかり有名になったダリやエルンスト、バルテュスやマグリットなどの紹介もしっかりと網羅されていて、読んでいて面白くって面白くって止まらない(笑)。当時の人たちの衝撃はもっと凄かったんだろうなぁ。現代で読んでも劣らない正確な知識で紹介している澁澤龍彦氏には本当に尊敬します。ゾンネンシュターンやモンス・デシデリオは初耳だったので、触れてみようと思います。
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ペダントリーに充ち満ちた澁澤龍彦の評論は愉しい。お説ごもっとも、拳拳服膺しながら読んでいる。ただ、引用される図版がモノクロームというのは目に寂しい。
彼の著書は、将来も読者を獲得することだろう。ハイパーテキスト化し、ワンクリックで当該の絵画が鑑賞できるようになることを願いたい。
追記:「クレーの魚は、クレーの水を離れた途端に破裂して死ぬだろうし、エルンストの鳥は、エルンストの空気が吸えなくなった途端に窒息して落ちるだろう」。この決めつけこそ澁澤調。 -
空間恐怖と魔術:スワンベルクとブロオネル/女の王国:デルヴォーとベルメエル/イメージの解剖学:再びベルメエル/卵・仮面・スフィンクス:レオノール・フィニーの世界/夢見る少女:バルテュスの場合/渾沌から生成へ:タンギーの世界/マグリットの冷たい夢/神の香具師ゾンネンシュターン/サルバドール・ダリの両極性/光り輝くルネサンスの幻影:ダリ展を見て/『百頭の女』と『スナーク狩』:マックス・エルンスト/ピカビアと機械崇拝/存在し得ない空間:エッシャー
ボマルツォの「聖なる森」/崩壊の画家モンス・デシデリオ/だまし絵・ひずみ絵:ホルバインその他/メタモルフォシス:アルチンボルドを中心に/一角獣と貴婦人の物語/北欧の詩と夢:ベックリンとクリンガー/密封された神話の宇宙:ギュスターヴ・モロオ展を見て/幻想の城:ルドヴィヒ二世と郵便屋シュヴァル/人形愛:あるいはデカルト・コンプレックス/玩具考/仮面のファンタジア -
澁澤自身の「好み」で満たされた空間。シュルレアリスムを中心として。知らない画家もたくさんいて興味が広がった。個人的にはポール・デルヴォーが気になった。画集を観るのが楽しくなる一冊。
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マニエリスム。実際に作品を感じてからよむべき。批評されている画家の名を挙げておく。スワンベルク。ハンス・ベルメール。プロオネル。ジョゼフ・クレパン。ルイス・ウェイン(猫のひと)。ポオル・デルヴォー(裸女)。レオノール・フィニー(大嫌い)。バルテュス。タンギー。。マグリット。ゾンネンシュターン。ダリ(嫌い)。エルンスト。ピカビア。エッシャー。
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これを読んだら美術館に行きたくなります(><)
友達と美術館に行って、
「このエンルストの絵は…」
なんて、勝手に引用させてもらってます(汗)
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なぜだろう、氏からはネット的な匂いがする。