- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309409641
感想・レビュー・書評
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ゆっくり味わいたくなる一冊。
夫婦二人暮らしのもとへ自由気ままにやってくる小さな小さなお客さま。
真っ白な毛並みにぶち模様の愛くるしいお客さま。
いつのまにか夫婦の心にヒョイっと忍び込んで来たお客さま。
可憐な姿でじゃれついて、ちゃっかり昼寝して、毎日可愛い足跡を心に残していってくれる。
そんな可愛い猫の姿、しぐさがたっぷりと表現された言葉、夫婦の心の機微をゆっくり追って噛み締めて味わいたくなる作品だった。“わたしの猫”この言葉が印象的。
かけがえのない愛が詰まった言葉みたい。思わずリフレインしたくなる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説が好きで、それぞれの作品をとてもきちんと読んで解説してくれる友人がいます。
「あのね、ネコの話を書いた小説ってありますでしょ。苦手なんです。」
「どういうこと?」
「吉行理恵っていたでしょ。『小さな貴婦人』って知っます?芥川賞の受賞作。あれからダメなんです。」
「どういうこと?」
「猫って、書き手をナルシズムに浸らせちゃうんです。そう思いませんか?」
「犬は?」
「犬は、そうならないんです。」
そんな会話をしたことがあったのですが、ネコといえば漱石、内田百閒、最近では保坂和志、他にも、マア、山のようにあります。ちくま文庫には「猫の文学館Ⅰ・Ⅱ」なんていうアンソロジーもあります。
で、「猫の客」(河出文庫)ですが、端からお嫌いの方にはおすすめしませんが、悪くないと思いますよ。マア、詩人の散文ですからね、気障なことは確かですがナルシスティックというわけではないと覆いましたよ(笑)
ブログにも書きました。覗いてみてくださいね(笑)
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202302130000/
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とても特別な感情を揺さぶられる一冊。
猫が大好きなので、ジャケ買いした本。
この本からは「人」はあまり見えてこない。
主人公の目を通した情景が鮮やかに文庫から浮かび上がり、主人公の見目形ではなく心の機微と妻の心情がダイレクトに心に響く。
ネコ好きは、犬好きに比べ狂気をはらんだイメージが強い。例に漏れず自分自身も当てはまることから、最初はあっさりとした大人の関係を築いている人と猫、と思われたけれどこれは自分でとは違う狂気だと気づく。
どうして猫はこんなにも人の心をいとも簡単に掌握するのだろう? -
こんな、密かな宝石のように美しい言葉で綴られる猫は幸福だ。
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これは瞬間的にタイトル買いしました。可愛い話の予感がして。
世界中で愛される、詩人が書いた猫小説とあったけど、確かに、なんか叙情的。
全体は淡々としているんですが、景色とか猫の動きとかが細かくて、時折出てくる夫婦の強めな感情がグッと入ってくる感じです。
お隣さん宅の猫とわかっていながらも、我が家が第二の家と言わんばかりにくつろぐ猫に、愛情がどんどん増していくのが伝わってくる。
触らせない、鳴かないところに本宅での対応と線引きしてる猫にも好感が持てました。子供のお見送りに必ず一度出ていく描写も、飼い猫って感じが出てて可愛かった。
そこはかとなく昭和初期なイメージでしたが、読み進めてるうちにバブル崩壊手前の頃と判明。その割には景気の良い雰囲気や派手な感じが夫婦に全くなく、大家さんの土地の売買のところでようやくバブル話。
終盤頃の喪失感がすごくて、奥さんの気持ちがすごく痛かった。小さな子供の、まだ命の重さがイマイチ理解しきれてない故の悪意のない単純さもリアル。
猫がいっぱい出るとか、初めに思ってた可愛さはなかったんですが、小説の世界観にゆっくり入っていきながら読み進めたくなる小説です。 -
稲妻小路に姿を現すチビは隣家の仔猫。可憐な姿は見せてくれない客。啼かない、抱かせない、抱かれそうになると微かに「ミイ」と声をもらす。チビはわたしの猫ではないけれど、そんな典雅なしぐさの中に見え隠れするはにかみに惹かれた。本を閉じてから、運命について思いをはせる。雷のようにいつどこに落ちるかは予想できないけれど、後から振り返れば季節が一巡りするみたいに輪を描いている。生きた痕跡が糸となって私を新しい場所に導いてくれたのかもしれなくて、喪ったあとの新しい時間がこれからも続いていくことを思うと胸が熱くなった。
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はじめ“稲妻小路”の光の中に姿を現したその猫は、隣家の飼猫となった後、庭を通ってわが家を訪れるようになる。いとおしく愛くるしい小さな訪問客との交情。しかし別れは突然、理不尽な形で訪れる。崩壊しつつある世界の片隅での小さな命との出会いと別れを描きつくして木山捷平文学賞を受賞し、フランスでも大好評の傑作小説。
「BOOKデータベース」 より
哀しくも美しい文体、人と猫のほどよい距離、時代の流れ.
人と人の距離がほどよい.人とものの距離もほどよい.そこにあるもののすべてがそこにあるべくしてあって、大切に扱われている印象を受ける.丁寧な生活、丁寧に生きる、ささやかな幸せがそこにあるように感じる. -
- はじめは、ちぎれ雲が浮んでいるように見えた。
浮んで、それから風に少しばかり、右左を吹かれているようでもあった。
こんな出だしから始まる本書は、一つのマレビトの物語。
とある書店で開催されていた、"ほんのまくら"フェアで出会いました。
本の出だしだけで選ぶというフェアですが、ちょっとした宝探し気分で楽しかったです。
エッセイなのか小説なのか、どこか退廃的で、でも透徹とした文体は、
不思議とその田園地帯を思わせる街の描写にマッチしてました。
ん、普段であればおそらくは手に取ることはなかったであろう、一冊。
こんな思いがけない出会いがあるから、書店廻りはやはり楽しい。