コスモスの影にはいつも誰かが隠れている (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 139
感想 : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411538

感想・レビュー・書評

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  • 寝る前の、ほんの少しの時間に1作ずつ読めるぐらいの、短い物語たちです。
    著者は写真家なのですね。だからなのか、どれも短編映画のようにありありと風景(情景)が浮かびます。

    特に好きなものは
    海辺のトメさんとクビワとゼロ
    カハタレバナ
    トウキョウアリガト
    夏のかたみ

    ノンフィクションなんだ!!と、驚きつつ、
    同じ人生なんてないんだから、全ての人が、
    悩み迷い後悔し、懐かしみ愛おしみ、
    願いや希望をもち、生きているのだと、
    しみじみと思いました。

  • 文章による映像体験とでも言おうか。
    写真家の目を通すことで言葉が
    置かれるべき位置に置かれている
    という感じがする。

    読むだけで、時にまざまざとなんの躊躇いもなく
    脳裏に映像が浮かんでくる。
    元はノンフィクションだが、いつの間にか
    珠玉の短編小説を読んでいるような、
    極上の映画でも見ているような感覚になった。

    藤原新也さんが、感じた心のままに起こした
    小さな行動によって、他者の人生ドラマの
    一場面に加わり、そこで起こることを
    切なさを帯びた優しい眼差しで見守っている。
    その優しさがどこから来るのか、あとがきを
    読んで納得したのだった。

    「人間の一生はたくさんの哀しみや苦しみに
    彩られながらも、その哀しみや苦しみの
    彩りによってさえ人間は救われ癒やされるのだという、
    私の生きることへの想いや信念が自ずと
    滲み出ているように思う。
    哀しみもまた豊かさなのである。
    なぜならそこにはみずからの心を犠牲にした
    他者への限りない想いが存在するからだ。
    そしてまたそれは人の心の中に必ずなくてはならぬ
    負の聖火だからだ。」

  • 淡々とした雰囲気だけどドラマチック。切ないお話もほっこりするお話もある。人の生死を扱ったお話が多いので、ところどころ哲学的な気持ちになる。あまり多くを語らない雰囲気なので読み返すとまた違う楽しみ方が出来そう。一編一編が短くて読みやすいので気軽に読める。じんわりと染み入るいい作品集。

  •  地下鉄に置かれるフリーペーパー『メトロミニッツ』に連載されたエッセイの単行本化。

    《本書はこれまで私が上梓してきた書き物とはいささか風合いが異なる。そこにはこれまで私があまり触れてこなかったごく普通の生活を営む男と女の交わりや別れの瞬間、生死の物語が通奏低音のように流れている。》

     「あとがき」にそうあるように、本書には、藤原の著作にいつも底流している文明批評的な色合いがない。
     むしろ、ボブ・グリーンのコラム集を彷彿とさせる一冊。市井の人々の一見平凡な人生から、普遍的なドラマを鮮やかな一閃で切り取ったエッセイ集なのだ。ゆえに、これまで藤原新也の本を読んだことのない人にもオススメ。

     出来不出来は当然あるが、少なくとも14作品中の半数は、エッセイというより極上の短編小説のような素晴らしいものだ。

     私がとくに心惹かれたのは、「尾瀬に死す」「海辺のトメさんとクビワとゼロ」「あじさいのころ」「カハタレバナ」「車窓の向こうの人生」、そして表題作の「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」――。

  • 普通の人たちのささやかな日常、ちょっとした変化を題材にした短編集。全部読み終わったが作品1つ1つに物足りなさを感じた。普通の人たちは一番普通ではないのに、普通に描かれているところ、小説というほどの創作もなく、随筆のような雰囲気に近い。

  • 写真家、藤原新也氏の短編小説集。と思ったら、あとがきに、ほぼ実話と書いてあった。彼が人生で出会った人たちとのつかの間の交流をとおして、彼が感じた事や、知人から聞いた話のようだ。
    1篇が約10ページほどとかなり短いのだが、その中にエッセンスがぎゅっと詰まっている。どれもホロリとやや切ない。
    この著者のことはあまり知らなかったのだが、今回初めて読んでみて、他の作品も読んでみたいと思った。とても良かった。

  • 藤原新也が「私の長い人生の中で出会った出来事や普通の人々の物語」という、14篇を集めた短編集。
    末期がんの妻の最後の望みを聞いて一緒に行った尾瀬で妻が亡くなり、殺人罪に問われた夫が、最高裁でも冤罪が晴れないことを覚悟して再び尾瀬を訪れたときに見た妻の夢によって、逆転無罪を勝ち取った『尾瀬に死す』はTVドラマにもなったが、いずれの物語も、ごく普通の日常を送る人が人生のある時期に出逢った、哀しく、切なく、そして少しだけドラマティックな出来事を描いたものである。
    著者はあとがきで「人間の一生はたくさんの哀しみや苦しみに彩られながらも、その哀しみや苦しみの彩りによってさえ人間は救われ癒されるのだという、私の生きることへの想いや信念がおのずと滲み出ているように思う。哀しみもまた豊かさなのである。」と語っている。
    藤原新也にして描き得る、心に沁みる14篇である。
    (2012年7月了)

  • 一編一編が珠玉のエッセイで、癒されるというか、心がふわっと軽くなる。
    通底するのは、生死に関する人間本質的ドラマとか、日常の中でみつけられるちょっとした変化とたのしみ・心の喜び。
    流石というか、ここまでの一冊はなかなかない。
    とりわけ、冒頭の「尾瀬に死す」はしばらく忘れない一編になりそうだ。

  • とてもシットリした短編揃い。
    普段なら、一編毎に「ふーっ」と
    余韻が出そう。

  • 表題作が好き。

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著者プロフィール

1944年福岡県生まれ。『印度放浪』『全東洋街道』『東京漂流』『メメント・モリ』『黄泉の犬』『日本浄土』『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』『死ぬな生きろ』『書行無常』『なみだふるはな』など。

「2020年 『なみだふるはな』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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