火口のふたり (河出文庫 し 22-1)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413754

感想・レビュー・書評

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  • 家庭の事情である時期(学生時代)きょうだいのように育ったいとこ同士の賢治(41歳)と直子(36歳)。ある時から一線を越えた関係となる。

    月日は流れた。順風満帆の出だしだった賢治だったが、仕事に結婚に挫折し生きる意味を見出せなくなっていた。
    従妹である直子の結婚式に参加するため東京から故郷の福岡に帰ってくる。
    再び二人は結ばれ(それは直子が図ったことだった)、結婚までの5日間、本能のままに美味しい食事をする、睡眠をとる、体を重ねる。
    これでもかという、過激な描写。だけど、それほどいやらしさをかんじない(嫌になるほど露骨なのだが)。なぜなら二人に恋愛感情は感じない動物的な関りにみえる。やけくそなのだ。
    血の濃い二人、結婚相手との新居で事をいとなむふたり。社会のモラルから大きく外れ「体の言い分」に沿っている、二人が哀れ。
    アダムとイブは宿命として血が繋がっている。子孫を残せるという本能の指令という。人は破壊の危機に陥るとこういう心理にいたるのか。
    東日本大震災、福島原発の数年後という設定の話。そこからくる無力感から刹那的な快楽をあらわしていると思った。
    もし明日この世が終わるならどう生きるか。時々ふと私もそう考えることがある。「やりたい放題」「やけくそ」それもいいな。でもやはり思うのは身近な人に感謝を述べたいなあ。
    心に残ったところ
    「生きているだけで楽しい人と、成功しなきゃ楽しくない人がいたら、生きてるだけで楽しいと思える人の方が数倍も得だ。」

  • 世界が終わるとき…終わるかもしれないとき…
    誰と何をして過ごすのか。
    生かされている私たちには究極のテーマだと思う。
    そこそこ大人の私なので分からんこともない。
    人として至極素直な行動なのだろうとも思う。
    だけどやっぱりこれは男性の理想の終末なのかなという気もする。男性が生きていることを一番に感じられる瞬間。
    母である私はおそらく選択する道が違うのだろうな…というだけのこと。
    今年の8冊目
    2019.3.24

  • 結局 何を伝えたかったのか?

    映画もつまらなくてガッカリ

  •  従姉妹でありながら男女の仲だった時期がある直子の結婚式に参列するため、東京から地元の九州に帰ってきた賢治。一週間後に迫った挙式の日までとタイムリミットを設定した上で、二人はまた関係を持つ。倒産寸前の会社を東京に残してきた「俺」と、上京を諦めて地元で結婚を決めた直子。ヤケクソ中年男女の一週間の恋物語。
     一つの物語の中で、複数の主題がを扱っている小説は多いけれど、一つ一つの主題が独立的に存在感があり過ぎるために、私の情報処理能力の圧倒的な低さも後押しして、読み終わったときに、結局一番書きたかったことは何?という感想を抱いてしまう小説を、勝手に「渋滞小説」と呼ぶことにしている。先日、途中までで頓挫した原田マハ「暗幕のゲルニカ」が第一位。そしてこれが、第二位。
     東日本大震災、富士山の噴火、ほとんど何も頭に入らなかったけれど会社経営の内部事情あれこれ、近親相姦、子宮筋腫、不倫とそれに伴うかなり大胆な性的な描写。頑張って読んだけれどアップアップしてしまった。そして官能小説として読むには物足りないし、官能小説でないのならちょっと状況があまりにエロすぎる(嫌いではない)。
     「火口の二人」というタイトルだから、もっと二人の内面や関係性にフォーカスして、育ってきた環境とか、従兄弟でありながら肉体関係を持つに至った経緯とか、そこから現在までの互いの心情の推移とか、そういう内向的な要素を期待していた。主語が「俺」である時点で「俺」以外の登場人物の正確な内面を描くことは難しいから、冒頭からうっすら「ちょっと違いそうだな」とは思っていたのだけれど、これはもう勝手に想像して勝手に読み始めて勝手に文句言ってすみませんとしか言いようがない。

  • 何というか、作者らしくないなぁと言うのが読み終って1番の感想。

    3.11後に出た作品という事で、
    あの震災後の作者の気持ちを反映しているのかな、
    と邪推。

    内容はやりまくって、食べまくって、またやりまくるの繰り返し。
    堕落しているのか、前へ進んでいきたいのか今ひとつよく分からない従兄妹同士の2人。
    もういっその事くっ付いてしまえ!と言いたくなる。

    嫌いではないけれど、好きにもなれない1冊。

  • やっぱり白石作品は男性目線のだと私にはイマイチ。
    女性目線の話のほうが共感できる部分が多い。
    賢ちゃんも直子も現実から逃げてるだけでしょって思った。。
    でも映画は観てみたい。

  • 生きているって感じることは3つの欲の充実。
    人によってそのバランスは違くても、それぞれに満足できれば良いのではと。
    単純に生きるために必要なこと必要なことが1人で出来ないことがあるのなら、共に生きる人との出会いは奇跡なのかと。
    映画は観ていないのでわかりませんが、こちらはわりと単純明白でわかりやすく、読みやすいです。

  • 映画を先に見ていたけれど、白石さん原作だったんだ。
    理屈っぽい文体は相変わらず。
    富士山噴火を目の前にして、残された時間をひたすら性愛につぎ込む二人。
    原作本の直子は、映画の瀧内公美さんとくらべ、少し幼い感じがする。文庫本のカバーの方が、原作のイメージにぴったり。

  • 浮気→離婚→起業→震災で廃業 というなかなか波乱の人生を経て故郷に戻ってきた主人公。
    15年ぶりに従妹と過ごしつつ、自分の来し方を振り返る。
    白石一文作品を読んだらだいたい思うことだけど、生き方と性とは密接に結びついておきながら、愛と結婚生活と性は結びついていなかったりする。
    だからいけないと分かっていながら愛欲に溺れて家庭崩壊させたり…(まぁ普通はしないけど)、ほかならぬ人と出会っておきながら結婚には至らなかったりする。
    …で、どうなっていくのか?と思ったら、物語は意外な方向へ。
    この平穏な日本の社会が永遠ではないと思えば、誰もが本能に忠実に生きるかも。

  • 意味が分からない。世界が終わる感もないし。現実の時間軸とワイドショーなんかにある事象の説明文みたいなのが混在するのも別に効果的でない。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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