- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309415086
感想・レビュー・書評
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全米図書賞受賞作。しかし、何の気なしに手にする本ではなかった。
上野公園でホームレスをしている昭和8年生まれの72歳の男性。
彼の人生の記憶が波のように押しては返す。
上野の雑踏で 目に入る(見るではなく)もの、耳にする(聞くではなく)音が、蓋をしたはずの彼の記憶を否応なく刺激する。
彼は後悔の海を漂い、他の感情をほぼ失っているのだが、こう述懐する。
「自分は悪いことはしていない。他人様に後ろ指を差されるようなことはしていない。
ただ、慣れることができなかったのだ。人生にだけは慣れることができなかった。人生の苦しみにも、悲しみにも・・・喜びにも・・・」
これに私は衝撃を受けた。この人は私なのかもしれないと感じた。
作者はあとがきで、ホームレスと、震災で家を失った人たちの痛苦が相対したと書いている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
福島出身の男は、東京オリンピックの前年に出稼ぎのために上野駅に降り立つ。
この頃は、出稼ぎに出ることは普通であったのかもしれない。
男は、盆正月以外家に帰ることなく仕事をし続ける。
21歳だった長男を亡くし、そして父、母…と。
家に戻り年金で夫婦で暮らしていたが、妻をも亡くし、ふたたび足を向けたところは上野だった。
上野でホームレスとなる。
何故に上野に…なのか?
生き続けるのも辛いのか…?
なんとも息苦しい、暗い、と感じてしまう。
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久々に柳美里さんの小説を読んだ。
全米図書賞ということで、話題になった本。
同じ日に生まれた二人。
一方は公園に招かれ、一方は公園から排除される。
柳さんが「山狩り」を見たことがこの小説執筆のきっかけになったと言う。
「見えない人」であるホームレス。
でも、人生はあった。人より運がなかっただけだ。
読んでいて、ただただ悲しくなった。
(2021.2.5追記)
凪紗さんのレビュー読んで、全面的に「そのとおりだ!」と思いました。
全米はこの小説の何を評価したのか?気になるところ。
あと、主人公が自死したのか否か?
はっきりとは書かれていないと思いました。
そう決めつけて読む方がストンとは落ちますが… -
2020年の全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞したということで読んでみた。
内容は、上野公園に住むホームレスの男性を主人公にした、孤独と死を主題にした小説。
主人公の男性は、1963年福島県南相馬郡から東京に出稼ぎにきた。人生のほとんどを東京で過ごし、妻や子供に会えるのは盆と正月のみ。そんな彼の人生に無常にも次々と訪れる愛する者の死。
そんな彼は自らの人生の意味をひたすら考える。
そして彼が至った結論とは・・・。
非常に考えさせられる小説だった。
小説全般に流れる主人公の感じている疎外感を読者も同じように感じることができる。
この本がどのようにアメリカで受け入れられたのだろう。
翻訳文を読んでいないのでここに書かれているニュアンスがどの程度英語の言葉で表現されているのか分からないが、こんど英文で読んでみよう。 -
柳美里『JR上野駅公園口』河出文庫。
全米図書賞・翻訳文学部門受賞作。
いつか故郷へ帰ることに微かな希望を持ちながら東京の玄関口と言える上野に留まる人びと……ホームレス……家族と帰る場所を失った男の物語。読んでいると、様々なことが頭の中を過る。
欺瞞と矛盾に満ちたこの国は、天皇や皇族に国の暗部を、本当の姿を見せようとしない。上野公園に住まうホームレスは天皇や皇族が傍らを通り過ぎる際に移動を余儀無くされる。一体何時の時代の考え方なのだろう。そのくせ政治家は平気で悪を働きながら、悪政を続けながらもその地位に居座り続ける。
息子を東京で失い、失意の中、妻をも失い……次いで福島県南相馬市の故郷も、何もかも全てを失い、ただひたすらさ迷う男……人間は決して平等ではないし、いくら努力しても叶う希望など無いのかも知れない。それに気付かずにあがき苦しむ不幸。
本体価格600円
★★★★ -
2020全米図書賞(翻訳部門)受賞作品。
物語というより散文詩のようで、語句ひとつひとつの美しさは感じるものの、全体を通してとても抽象的です。
意味があるのか分からない擬音と会話、過剰に多用される改行と「……」。
天皇制の怖ろしさや震災後の東北出身者の生活、ホームレスの実態を丁寧に描いたとのことですが、何しろ作品が抽象的なので…あまり理解できませんでした。
ひとつ感じたのは、人は人を見て「女性」「若者」「子供」などその人が何に属するのか判断しますが
ホームレスの場合「ホームレス」でしかなく、男女も関係はなく、しかもまるでそのホームレスが見えていないかのように擦れ違います。
ホームレスが生きていようがいまいが、突然消えようとも、誰にも分からない。
死がいつも身近に存在しているようで、私には得体の知れない不安を感じる作品でした。
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ことわざアップデート大賞2020は
「長い物には巻かれろ」
↓
「全米が泣いたら泣いとけ」
でした。うまいなあ。
というわけで2020年全米図書賞受賞
「TIMEが選ぶ今年の100冊」の
『JR上野駅公園口』を読みました。
柳美里さんの小説は初めて。
暗いです。
平成天皇と同い年の男が、貧乏だし、出稼ぎばかりで
家族と関わることが少なく、また大事な家族が次々亡くなり、最後は震災。
しかも福島なんだけど、元は富山から来たよそ者。
上野というところには美術館がたくさんあって
東京文化会館ではバレエも見れるのに
そういうこととは無縁の主人公。
小説の中の「身内の死」では、今までの中でトップ5に入る位悲しかったけど、アメリカでの賞はそういうことではないですよね?
アメリカ人の感想が知りたい。
それと、いくつかのレビューに「主人公が自死」とあったけど、私にはわかりませんでした。
文化人の皆さんの書評が読みたい。 -
「諦念」という言葉が先ず浮かんだ。読んでいて愉しい類いの作品ではないが、貴重な読書体験になった。感謝。