JR品川駅高輪口 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309417981

感想・レビュー・書評

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  • 柳美里『JR品川駅高輪口』河出文庫。

    『JR上野駅公園口』に続く山手線シリーズの第2弾。

    電車の中で飛び交う乗客たちの断片的な会話が都会の喧騒と忙しさと主人公の女子高校生の居場所を失った孤独感を表現するかのようだった。この雰囲気はと思い出してみると、大昔の真面目な頃のNHKのドラマではないか。

    普通の家庭で、仕方無しに余り偏差値の高くない高校に通う高校1年生の市原百音は、誰かと一緒に死のうとネットの掲示板に自殺仲間募集の書き込みをする。

    うわべだけの友達、父親の不倫と母親と弟との別居の危機、東日本大震災の原発事故による放射能汚染。生きることの無意味さばかり味わう日常と強くなるばかりの死への渇望。百音は見知らぬ自殺仲間と4人で練炭自殺を実行するが……

    本体価格740円
    ★★★★★

  • ノリのいい語り口調。それとは裏腹に、
    お話の内容は、友達付き合いも真底楽しめず周りと同調しないとやっていけない。あきらめなのか。
    家族とも心を通わせられない女のこのお話。

  • 生きるって何でしょうね

    仲間外れの学校、父親の不倫、母親は弟の受験でべったり

    じゃぁ私は?

    波長合わせに苦労していたクラスメイトから仲間外れ・・・学校がつまらない
    両親の愛情ってなんでしょう、、私ここにいる意味あるのかしら?

    自殺掲示板で知り合った4人と山奥で集団自殺!
    するはずだった・・が!私だけ逃げた そう私だけ

    そしていつものようにつまらない日常へ

    一緒に自殺しようとした3人は今頃どうしているのか?
    遺体で発見されたのか?生き延びたのか?

  • 福島県内書店おすすめ 柳美里ワールド読みたい! | 福島民報
    https://www.minpo.jp/news/moredetail/2021020483312

    JR品川駅高輪口 :柳 美里|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309417981/

  • 生きるって何だろうな、死ぬって何だろうな。
    そんなことを思った時の車内や学校の会話の嗚呼煩わしさよ。

    最後にユミリさんの作家としてのテーマがあとがきに凝縮されていたのでここに。
    「小説家の仕事は、日々刻々とあらゆる出来事が生じ、目や耳に留める間もなく消えていくこの世界から、一人の人物を浮き立たせ、その存在を明るみに出すことである。」

  • 一緒に焼肉行かない?というノリ。それが逆にリアル。

  • 自分が生きる世界が全てで、そこから抜け出すことは決してできず、その世界で認められなかったら全て終わり。

    この感覚は苦しいくらいわかる。わたしも病気になり、何度も死にたいと思い、死に近づこうとした。今も終わった世界の延長線を生きている感覚。それでも、こんな自分でも他人や自分に対してどこかでわずかな期待を抱き、そしてそれが叶うことはないと感じてはしんどくなり、それでもとまた少し前を向き、でもやはり結局は死という形で全ては失われる、とまた無力感に襲われる。

    主人公は最後にクラスメイトの優しさにほんのわずかな生きる価値を見出した。

    それでも人生はその一つの経験だけで乗り越えていけるほど甘いものではないだろう。幾度となく、死と向き合い、その都度、ほんのわずかな微かな喜びや価値にすがりつきしがみついて耐えていくものなんだろうなと思う。

    自分は情けないほど弱い人間で、いつか耐え切れなくなるかもしれない恐怖に怯えて生きている。支えてくれる家族、自分の敬愛するアーティストが奏でる音楽、物語、絵画、好きな風景など、いろんなところにわずかでもしがみつける場所、引っかかりがある場所を作っておき、口を開けている大きな落とし穴に落ちないようにしておくことは大事だと思う。自分一人の心など、簡単にくずれ落ちてしまうものだとわかっているので。

  • 知らなかったのだが、『JR上野駅公園口』は、山手線の駅を巡るシリーズの実は第5作目であり、過去に4作品のシリーズ作品があるという。本書は2012年に出版された第4作にあたる作品であり、当初は『自殺の国』と題されていたものを、今回の文庫化に際して改題したものとなる。

    筋書きは当初のタイトル通り、家族や学校での行き場を無くして亡き祖母との思い出だけが唯一自分を慰めてくれる少女が、ネット掲示板で出会った自殺志願者たちと自殺を計画する・・・という筋書きである。その出発点となるのが、品川駅である。品川駅は環状線の1駅でありながら、東海道に抜けていくターミナル駅であり、そこが本書での重要な舞台背景となる。

    さて、肝心の小説の完成度は・・・と言うと、これはよくある自殺小説、という印象を拭いきれず、特段の強い印象には残らなかったのが正直なところではある。そういう点で、やはり著者の作品との相性は、あまり良くないのだということを再確認させられた。

  • 家庭でも学校でも浮いた存在で
    誰も自分を必要としていないと感じ
    自殺サイトに書き込みをする日々。

    それでも大事にしてくれたおばあちゃんを思い出し
    なんとか生に繋ぎ止められている。

    若い頃の苦しみが伝わってくる。

    娘たちがこんな思いをしていませんように。

  • 山手線三部作の中ではこれが一番救いのあるような気がしたが、主人公の女子高生がなんというかおばさんっぽくて、リアリティーがないというか…。綿密な取材の上に成り立っている上野の方が面白かったし、リアリティーは高田馬場の方がもっとあって共感できた。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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