- Amazon.co.jp ・本 (136ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309418629
感想・レビュー・書評
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うららかな春の日。
今日は入学式。
そんな日に読み始めた『改良』
びっくりした。
最初からめっちゃエロい。
朝の通勤電車内。
どうしようかと思っちゃった。
しかしである。
その描写を「エロ」と捉えた自分の想像力に、なんとも苦々しいものを覚えて、最後まで心の器からドロドロとあっつい何かが溢れるのを止められなかったし、それを見逃すことができなかった。
P29「どうして女性と男性とで、かくあるべきという姿が違うのだろう?女性は毛を剃るべきで、男性はそのままにしておくべきだと、そんなことをいったいどこの誰が決めたのだろう?」
例えば、エコバックを持ち歩くこと、お弁当を持っていくこと。
それらを「女子力」と括る人がいる。
別にいい、分かりやすいし。
だけどそれって女性だけがすることなんだろうか。
男性がエコバックを持ち歩いてもお弁当を作ってもいいではないか。それは「女子力」なんだろうか。それは生活そのものなのではないか。男性だって女性だって生活をしているはずだ。しかし、未だに生活を匂わせる部分においては「女子力」と括りがちである。
男は男らしく、女は女らしく?
美しくある男は女々しい?
美しいことは男らしくない?
男が美しくありたいと思うことは、ダメなことなの?
遠野遥さんの『改良』。こちらがデビュー作だ。
芥川賞を受賞した『破局』ではあまり理解できなかったこの虚無感というか、頭の中の言葉が全部溢れて文字にされてる感じがちょっとだけ疲れた脳みそには心地よい。
いつの間にか癖になっている自分がいる。
淡々と、主観的でありつつ客観的でもあるような彼の目線と口調で進む物語と、時折挟まれる主人公の口調の不一致に戸惑う。
中性的な性別の語りから、急に男が顔をのぞかせるような。
それはまるで、彼が美しくあるためにメイクや服で隠しても、どこかで「男」が顔を出しているような状況と似ている。
隠しきれない性別。それに付随する偏見、らしさの押しつけ。
だけど、彼は美しくありたいだけで、娼婦になりたいわけでも、男とセックスがしたいわけでもない。
ただ美しくありたくて、女の子とセックスがしたいのだ。
「男らしさ」「女らしさ」という鉄槌で、彼を傷つける人たち。
極端な描き方をしているけれど、わたしたち、ふだんからやってませんか?
平野さんの小難しい解説もよかった。
従属することや規範意識、『破局』との共通点もかなりあったし、これから先の作品にも「便座の蓋が上がっていることに嫌悪感を示す」描写は続いていくのか、それが楽しみになってくる。
最新作『教育』も漢字二文字で構成されているし、このままでずっといくのだろうか。便座の蓋の話は出てくるのだろうか。
ああ、やっぱり。なんだか癖になっている。 -
この世の男女は、厳格な「普通」であるためのルールに縛られていて、その上、生まれた時から美醜による強烈なハンデやボーナスを与えられている。
ルールを押し付ける人たちは、悪気がないことが多く、時として善良でさえある。美しくありたいという思いからは、どうしても逃れられない。
その違和感や辛さを、特に男性の生きづらさの面から描いている作品なのではないかと思う。
そういうと重い作品のようだし、実際重いテーマだと思うけど、この作品はどこか軽薄で滑稽なムードがあり、とても現代的だった。
このどことない気持ち悪さ、ハマりそう。
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naonaonao16gさんのレビューを見て
ソッコーでAmazonで購入して、すぐ読み始めました!
たしかに、冒頭クソエロい!!
というか、クソエグい展開でビックリしました。
レビューを見てないで読んでいたらもっと衝撃だったかも…
全部で125pと短く、淡々と話は進んでいく感じなのだが、それぞれのエピソードが結構な強烈さがあって
自然と引き込まれて、どんどん先が読みたくなっていきました。
許容(強制的に)しながら、拒絶しているというような構成のエピソードになっているのかなぁ…
冒頭のトラウマ的なエピソードによって主人公の性癖のトリガーが押されてしまったのだとすると、
幼少期の体験が自身の性癖に深く関与しているのだなぁと考えさせられました…
小学生の頃、裏のアパートに落ちていたエロ本の内容が今の自分の性癖(おしえませんが…笑笑)
に影響を与えているのかもしれないと、この小説を読んで思ってしまいました。
あの頃の衝撃的な性的興奮は超えることはできないかもしれないです…
初めて読んだ作家さんでしたが、他の作品も是非読んでみたいと思いました。
GW暇な方は1日で読めちゃうと思うんでおススメです!
naoさん ありやとう!!-
sinsekaiさん
おはようございます!
フェスに行っており返信遅くなりました笑
自分が描いたわけではないのに、こうしてわたしのレビュ...sinsekaiさん
おはようございます!
フェスに行っており返信遅くなりました笑
自分が描いたわけではないのに、こうしてわたしのレビューがきっかけで作品を読んでもらえるというのは嬉しいですね!
淡々としているのに内容のエグさやグロさがすんごいので、かなり印象に残りますよね。
解説はすごく深読みされてて、わたしはそこまで掘り下げて読むことはできなかったけど、様々な角度から読めそうな作品ですよね。
裏のアパートに落ちていたエロ本の件ですが。
わたしも小学校の時に、突然近所にエロ本の自販機が置かれて、使用済みの雑誌がそこら辺に転がっていて、友達に誘われて見ていたのを思い出しました。確かに、それが今の性癖に繋がっているのかもしれないと思いました。(教えません笑)
長くなりすみません。
『破局』、わたしは分からない部分が多かったんです。是非読んだら感想やsinsekaiさんの解釈を知りたいですー!2022/05/06 -
naoさん!コメントありがとうございます。
フェスにもようやく行けるような世の中になったんですね…
「破局」読んで感想書くので、naoさんの...naoさん!コメントありがとうございます。
フェスにもようやく行けるような世の中になったんですね…
「破局」読んで感想書くので、naoさんの性癖を教えてください…笑笑2022/05/06 -
ルールはありますがだいぶ規制は緩くなったかな、という印象です。
「破局」のレビューでsinsekaiさんの性癖を教えてくれたら…
なんて言...ルールはありますがだいぶ規制は緩くなったかな、という印象です。
「破局」のレビューでsinsekaiさんの性癖を教えてくれたら…
なんて言ってますけど、インターネット上である以上絶対に言いませんよ笑2022/05/06
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たまにいる「なにを考えているかわからない人」が
どんなふうに見えてどんなふうに感じているのかが
淡々と描かれている様がある意味でリアル
誰しもの「自己中心的」で世の中が形成されている -
怒ってほしい。
あなたの思うままに怒ってほしい。
あなたの感情はあなただけのものなんて、安っぽく聞こえるのかもしれないけど、それでも、と思わずにはいられない。
遠野さんの他の作品も読もうと思います。 -
『つまり、ブスだから何かほかのことで頑張らなくちゃっていう、そういう意識があったような気が、最近するのね』
『自分の意思だと思ってやっていたことが、実はブスだったことによってやらざるを得なかったことなんじゃないかっていう、つまりわたしが本当にやりたかったことではなかったんじゃないかっていう、そういう気もするの。』
この若い作家にしか書けない作品だと思った。
容姿至上主義やルッキズムを批判しながらも、美しさを持て囃し消費していく社会。
みんなどうやってルッキズムへの批判に納得してるのかな???この作品を読んでわからなくなった。
ルッキズムが蔓延する社会でただ自分の美しさを追求する主人公は、歪んでいてもいっそ清々しいように感じた。
だって橋本環奈の完璧にシンメトリーな容姿はため息が出ちゃうし、吉沢亮の顔の造形は神様の作品だと思うし、木村拓哉や石田ゆり子は歳取って衰えないし、矢沢永吉のカッコよさが枯れるなんて70歳超えても考えられないじゃないか?
そして私たちはそれらを愛してしまうし求めてしまう。
自分だってなれるならそうなりたいって思うし、生まれ変わったとしてもブスやブサイクには生まれたくないってなんとなく自然に思ってしまうよね?
でも生まれ変われないから今の自分で生きていくしかないのだけど、容姿で存在意義がぐらついちゃう社会。生きづらいったら仕方ない。
ルッキズム批判の薄っぺらさに見事に肉薄してみせる作品。
ちなみに、村上龍の芥川賞受賞作品くらいエログロバイオレンスあるので苦手な方は注意です。 -
遠野遥さんの本は初めて読みます。
「解説」にて主人公の「納得」であったり「秩序観」などについては語られていますので、その辺りは割愛するとして。
個人的に感じ取ったテーマは以下の4点です。
・思春期
・ルッキズム
・ジェンダー
・性的消費
背表紙のあらすじに「ゆるやかな絶望を生きる大学生の「私」は~」とありますが、ゆるやかな絶望というよりは性的トラウマのある人、という感じがしました。
幼いころに受けた傷がじわじわと化膿した結果、必然的に手を出したとある趣味。そしてその趣味から導き出される「理不尽な暴力」というものまでが、一本道でひと続きになっているように思えます。
そこに織り込まれているのは、主人公の秩序観であったり、ジェンダーの問題だったりします。作中で述べられているように、何故女性と男性では求められる理想像が異なるのか。女性として過ごすうえで、男性と違って不便なことは何なのか。
ジェンダー問題というのは、往々にして男女の違いにばかりフォーカスされてしまうものですが、そこには「違い」だけではなく、「道徳観・倫理観」「性的役割」「性産業での立ち位置」などが深く根をおろしています。
男性が「女性はいいよな、いざとなったら身体を売れば金になるし」と言うとき、発話者は「自分」を棚上げしています。
そういう当事者ではない者が後ろ指を指す現象について、この作品はそれと明言しないまでも、鮮やかに浮き上がらせているのです。
美しさを求めた少年の純真な追及は、そうした社会の荒波に、無惨にも飲みこまれてしまいます。
美しさを手に入れることは文字通り「社会の一部分から付け狙われ、汚い手によってあっけなく消費される恐れのあること」をも意味するのです。
その点で美しくない「つくね」に対する「私」の言動は、時には残酷なくらい冷淡に見えます。それは「私」が美への努力を怠らないが故に、努力をしているようには見えないつくねが軽薄に思えるからなのでしょうか。
しかし、物語終盤で再びつくねの存在が浮き上がってくるのを見るに、やはり美へのアンチテーゼ的な作品であるということは、恐らく間違いないのでしょう。
美醜が支配する社会は、どこかいびつで間違っている。けれども我々はどうしたってそこに一部分は迎合してしまうし、どうしても完全に足を洗ってさっぱりすることができないでいるのです。
パートナーは美しい方が良いし、美人とブスではブスの方が圧倒的に不利な社会に我々は生きている。
読んでいて決して面白くて仕方がない本ではない。
寧ろ、同質の苦しい経験がある人にとって、この本は辛いばかりかもしれない。読むのもおすすめはできない。
それでも、この本は存在しなければならないし、大勢の目に留まることで何かがほんの少しでも変わるかもしれない。
そんな可能性を感じた一冊でした。 -
芥川賞受賞作「破局」を先に読んでからの今作。「改良」は「破局」のプロトタイプ。表現の強度は上がっても、軸は頑固なほどブレていないのが理解できた。
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浅はかだと思われるだろうか、私自身もルッキズムが持つ正義性からどうしても逃れられない。美しさの前では知識も強さも正しさも脆くなり、美しさが正しい。
主人公が自分の容姿に少しずつ自信を持ち始め、自分自身を美しい女として扱っていくのに、周囲からの目はそれとは大きく乖離している。カオリに対する「なんで可愛いと言わないのか」(的な)セリフが苦しかった。
自分が完璧に作り上げた(と思った)可愛い自分が、他者から見てそうでなかった時の虚しさは、感じたことがある。
そこまで深い読みはできていないし、主人公のような人間はよくいるよねー!ってわけではない、けど、通ずるものは誰にでもある
こんばんはー!
レビューなんですけど、エッセイみたいに書くのが好きなんですよね~
自分と重ねがちなんです笑
平野さんの解...
こんばんはー!
レビューなんですけど、エッセイみたいに書くのが好きなんですよね~
自分と重ねがちなんです笑
平野さんの解説、難しすぎました!笑
作品はスラスラ読めるのに、解説苦戦しましたよ!笑
そういうのわかります!
電車で隣に人が座った時に「自分はやばいやつだと思われてない」「臭くないんだ」と思って安心します笑
ってこれもまた別のお話ですね笑笑
> 運営側の方でしたー!
失礼しました、、、
でも学ばれるんですね。素敵だワ!!!
> 運営側の方でしたー!
失礼しました、、、
でも学ばれるんですね。素敵だワ!!!
読み終わりました。
面白いというか、衝撃的というか…
でも、また一人面白い作家さんを知るキッカケになったので良かったです。
...
読み終わりました。
面白いというか、衝撃的というか…
でも、また一人面白い作家さんを知るキッカケになったので良かったです。
ありがとうございました。