屋根裏に誰かいるんですよ。: 都市伝説の精神病理 (河出文庫 か 17-4)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419268

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  • 屋根裏に誰かいるんですよ。―都市伝説の精神病理 | ダ・ヴィンチWeb
    https://ddnavi.com/book/4309242200/

    屋根裏に誰かいるんですよ。 :春日 武彦 | 河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309419268/

  • 精神科医の著者が語る「屋根裏」と「都市伝説」についての本。

     読む前に「臨床体験から得た、『屋根裏に人がいるんですよ』と語る患者の話を詳細に語っている本なのかな」と思っていたのですが、全然違っていました。
     予想は大外れで、実際は「屋根裏マニア/天井裏マニア」を自称する著者が、屋根裏と天井裏にまつわる話(都市伝説を含む)について、蒐集した情報を提示しながら思ったことを語る……というものでした。
     私のように、臨床体験で得た患者さんの話が沢山語られると思っている方には、「この本は違うかもしれない」と伝えたいです。
     エッセイ本、趣味本……なんというか、そういうテイストの一冊でした(面白かったけど)。

  • 「屋根裏に誰かが住み着いている、そしてそのヒトが時々部屋に侵入して悪さをしていくんです…。」
    そんなことを訴える精神分裂症の患者は意外と多いという(驚いたことに、分裂症でも痴呆でもない老婦人にも同様の訴えをするヒトが多いという)。なぜ患者の妄想上の侵入者は共通して屋根裏にいるのか?筆者は本著の中で、屋根裏妄想の謎を解くヒントとして、実際に屋根裏妄想を抱えていた患者の例や本当に起きた屋根裏侵入事件などの事例を沢山紹介している。

    以前、部屋のWifiの調子が悪くなり管理会社に連絡したところ「お風呂場の天井の一角を押し上げて通信機の元電源をオフにし再起動してみてください」と言われた。その通りに天井の板を押し上げると、そこには意外なほど広い空間が広がっていた。まずは不気味というよりも秘密基地のようなワクワク感を覚えたのだが、賃貸マンションなのだからその隣の部屋でも同じ構造になっているはずで、つまりはここから容易によその部屋に侵入できてしまうのではないかとゾッとしたことを覚えている(本著では本当に同じ手口で起こった殺人事件も紹介されている)。天井裏とは不思議な空間だ。家の最深部にあるはずで正規の入り口でありはしないのに、なんとなく暗黙の了解で外と繋がっているというか。精神分裂症の患者の妄想を受け入れる場所といえば、家の中でも屋根裏部屋しかないのかもしれない。

    孤独に生きるヒトは妄想をこじらせて病的な状態に陥りやすく、屋根裏に侵入者がいるという妄想はその孤独を癒やすための自己防衛本能なのではないかという考察が面白かった。

    また、家の中こそそのヒトの内面が現れるという話も興味深い(ゴミ屋敷とかも)。家の中で表現されるその人の狂気が、更に狂気を濃縮させ妄想をエスカレートさせるのだという。
    逆の発想だが、最近流行りのミニマリストたちはミニマルな環境に身を置くことによりよりシンプルな考え方に染まっていくものなのだろうか。ミニマル主義がミニマルな部屋の中で濃縮されエスカレートして、これも無駄、あれも無駄、趣味なんていらない、最終的には生きていることも無駄…みたいな思考に陥らないものなのだろうか。なんて、散らかった部屋で考えてしまった。

  • 侵入者はなぜ床下ではなく屋根裏に潜むのか

    野暮という言葉の解像度が上がった
    患者達の主張は荒唐無稽なんだけどだからこそリアルで怖い、玄関開けてすぐに箪笥の裏側待ち構えてるのはくるものがある

  • 精神科医の著者が、書名となった「自宅の屋根裏に見知らぬ何者かが潜んでいる」という妄想(など)について、縦横に考察を繰り広げる1冊。

    学術的というほどではなく、エッセイに近い内容だが、面白い。

    江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」を筆頭とするフィクションや、事件報道、医学論文など、様々な素材を用いて、「他人密入症状」妄想を巡る考察が、とりとめなく続いていく。

    著者はその種の妄想を「文学的狂気」「物語の胚珠」と表現するのだが、本書自体がかなり文学的だ。

    「屋根裏に~」という妄想を持つ人には、独居の高齢女性が多いのだという。
    女性に多いのは、一人暮らしの住まいに侵入されることが、男性よりも女性にとってこそ切実な恐怖だからだろう。

    《幻の同居人は、彼女たちの孤独救済願望の産物でもある》という著者の分析が面白い。

    つまり、妄想は恐怖や不安のみならず、ある種の安らぎももたらす。「幻の同居人」は、一種のイマジナリーフレンド(著者はこの言葉を使っていないが)でもあるのだ。

  • 乱歩の「屋根裏の散歩者」を再読する機会があり、これを読もうと思っていたが、なかなか時間が取れず、またまた医者に行った待ち合いで読んだ。
    非常に興味深い話だった。何処か異常でなければ、ここに書かれるような訴えをすることはないのではあるとしても、沢山建ち並ぶ家々のどこかで、人知れず妄想に悩まされて生きている人々が、屋根裏の誰かを憎みながらも時に親しみすらいだいたりしながら生きているという事実。
    つい最近、他の本の感想を書いた折に、様々な家の中で実は起きているかもしれぬ興味深い事象を空想することがあると書いたけれども、そんな空想が行き着いた一種の到達点が、屋根裏に誰かがいるのです、という心理なのかもしれない、と思う。孤独や不安が、不意に見えない存在を立ち上げてしまうのだろう。
    家の中に誰かが潜んでいる、という空想は、する分にはなかなかエキサイティングなものだけれども、信じ込むところに至ったら恐怖しかないが、不思議なことに見えない誰かが罪滅ぼしをするために、わりとどうでもいい親切をして行ったと話したり、もてなそうと思ったり、ということには驚くけれども、実在ではない誰かは、ひどい実害を及ぼさないし、作り出した友達のような部分も持ち合わせるのだろう。
    一方で、幻の同居人だけでなく、実際に、家の中の誰かだけが知る、実態のある隠れて暮らす人の話も出てくる。認知症の方の話もある。
    人間の心の中の不思議を面白く読んだ。

  • 勝手にエッセイと思って読みましたが専門書です。
    最終的に皆同じ所へ行き着く。

  • 題名に惹かれて購入した。統合失調症や痴呆になると、稀に幻の同居人が現れることがあるらしい。不安を口にしつつもなんだか馴れ合っているのは意外でした。屋根裏を題材にした小説なども紹介していたが、精神科医として経験した実例の内容が興味深かった。

  • 読書会課題本。今頃読了していますが。
    「妄想はステレオタイプ」や、「同居人がいるほどエスカレートする」というのを知れたのが新しかったです。孤独に蝕まれるのが大いにあるんだろうけれど、誰かと一緒にいて孤独を感じる方が人は病むんだなと改めて感じました。
    私宅監置の座敷牢も落ち込みます。てっきり目につかないところに座敷牢あるんだろうと思ってたら、家族が毎日過ごす部屋にあったりする。呉秀三さんはドキュメンタリーあるみたい…。
    春日先生、子どもの頃に憧れていた仕事は遊園地で切符売る仕事だった、というあとがきにこちらまでしんみりしました。どんより曇った平日がいい、とまで。

    読書会で、「家には縁の下や地下室などの地下もあるのに、屋根裏や天井裏など狂気は上なのはなぜか」みたいな話になったときに「屋根裏は私的な空間だから」という意見が出たのが印象深いです。

  • 江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』の話をちりばめながら、「屋根裏に誰かがいる」という妄想に取り憑かれる人に対しての、精神科医である春日先生の考察など。
    「幻の同居人」という表現から、痴呆や妄想に取り憑かれた人の頭の中がよく想像できた。読後、天井裏が気になって仕方がありませんが、強いてそこを開けようとは思わないな。でもその存在を意識するようになったのは確か。それと、実家にも足を運んで両親で暮らす家に、外からの空気を積極的に入れ循環させようと思った。

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著者プロフィール

1951年生まれ。産婦人科医を経て精神科医に。現在も臨床に携わりながら執筆活動を続ける。

「2021年 『鬱屈精神科医、怪物人間とひきこもる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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