屋根裏に誰かいるんですよ。: 都市伝説の精神病理 (河出文庫 か 17-4)
- 河出書房新社 (2022年10月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309419268
感想・レビュー・書評
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精神科医の著者が語る「屋根裏」と「都市伝説」についての本。
読む前に「臨床体験から得た、『屋根裏に人がいるんですよ』と語る患者の話を詳細に語っている本なのかな」と思っていたのですが、全然違っていました。
予想は大外れで、実際は「屋根裏マニア/天井裏マニア」を自称する著者が、屋根裏と天井裏にまつわる話(都市伝説を含む)について、蒐集した情報を提示しながら思ったことを語る……というものでした。
私のように、臨床体験で得た患者さんの話が沢山語られると思っている方には、「この本は違うかもしれない」と伝えたいです。
エッセイ本、趣味本……なんというか、そういうテイストの一冊でした(面白かったけど)。 -
侵入者はなぜ床下ではなく屋根裏に潜むのか
野暮という言葉の解像度が上がった
患者達の主張は荒唐無稽なんだけどだからこそリアルで怖い、玄関開けてすぐに箪笥の裏側待ち構えてるのはくるものがある -
精神科医の著者が、書名となった「自宅の屋根裏に見知らぬ何者かが潜んでいる」という妄想(など)について、縦横に考察を繰り広げる1冊。
学術的というほどではなく、エッセイに近い内容だが、面白い。
江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」を筆頭とするフィクションや、事件報道、医学論文など、様々な素材を用いて、「他人密入症状」妄想を巡る考察が、とりとめなく続いていく。
著者はその種の妄想を「文学的狂気」「物語の胚珠」と表現するのだが、本書自体がかなり文学的だ。
「屋根裏に~」という妄想を持つ人には、独居の高齢女性が多いのだという。
女性に多いのは、一人暮らしの住まいに侵入されることが、男性よりも女性にとってこそ切実な恐怖だからだろう。
《幻の同居人は、彼女たちの孤独救済願望の産物でもある》という著者の分析が面白い。
つまり、妄想は恐怖や不安のみならず、ある種の安らぎももたらす。「幻の同居人」は、一種のイマジナリーフレンド(著者はこの言葉を使っていないが)でもあるのだ。 -
乱歩の「屋根裏の散歩者」を再読する機会があり、これを読もうと思っていたが、なかなか時間が取れず、またまた医者に行った待ち合いで読んだ。
非常に興味深い話だった。何処か異常でなければ、ここに書かれるような訴えをすることはないのではあるとしても、沢山建ち並ぶ家々のどこかで、人知れず妄想に悩まされて生きている人々が、屋根裏の誰かを憎みながらも時に親しみすらいだいたりしながら生きているという事実。
つい最近、他の本の感想を書いた折に、様々な家の中で実は起きているかもしれぬ興味深い事象を空想することがあると書いたけれども、そんな空想が行き着いた一種の到達点が、屋根裏に誰かがいるのです、という心理なのかもしれない、と思う。孤独や不安が、不意に見えない存在を立ち上げてしまうのだろう。
家の中に誰かが潜んでいる、という空想は、する分にはなかなかエキサイティングなものだけれども、信じ込むところに至ったら恐怖しかないが、不思議なことに見えない誰かが罪滅ぼしをするために、わりとどうでもいい親切をして行ったと話したり、もてなそうと思ったり、ということには驚くけれども、実在ではない誰かは、ひどい実害を及ぼさないし、作り出した友達のような部分も持ち合わせるのだろう。
一方で、幻の同居人だけでなく、実際に、家の中の誰かだけが知る、実態のある隠れて暮らす人の話も出てくる。認知症の方の話もある。
人間の心の中の不思議を面白く読んだ。 -
勝手にエッセイと思って読みましたが専門書です。
最終的に皆同じ所へ行き着く。 -
題名に惹かれて購入した。統合失調症や痴呆になると、稀に幻の同居人が現れることがあるらしい。不安を口にしつつもなんだか馴れ合っているのは意外でした。屋根裏を題材にした小説なども紹介していたが、精神科医として経験した実例の内容が興味深かった。
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江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』の話をちりばめながら、「屋根裏に誰かがいる」という妄想に取り憑かれる人に対しての、精神科医である春日先生の考察など。
「幻の同居人」という表現から、痴呆や妄想に取り憑かれた人の頭の中がよく想像できた。読後、天井裏が気になって仕方がありませんが、強いてそこを開けようとは思わないな。でもその存在を意識するようになったのは確か。それと、実家にも足を運んで両親で暮らす家に、外からの空気を積極的に入れ循環させようと思った。