- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309419350
感想・レビュー・書評
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男性ではあるけど、男性的であることも、女性的であることも、そういう区分けをすること、されることの苦手な七森。
大学で出会った麦戸ちゃんは、そんな七森と気の合う友人だったが、なぜか大学に来なくなってしまっている。
二人が所属するぬいぐるみサークルは、ぬいぐるみを作るサークルではなく、ぬいぐるみに話しかけるサークルだった。
その中で、ぬいぐるみに話しかけない白城がいる。
関わるだけで、さまざまな誤解は生じるし、知らず攻撃を受けてしまう。
だから、そんなものだと諦めたり、知らないフリをしたり、嘘をついたり、そうして処理をする。
けれど、それらに向き合って、どんどん、何故?と受け止めてしまうと、そんな攻撃のない、きれいな世界を望んでしまうと、他者のいる世界に出て行けなくなってしまう。
一緒に収録されている「たのしいことに水と気づく」では、本音をぶつける相手は水になる。
「バスタオルの映像」「だいじょうぶのあいさつ」でも、自分だけのパーソナルスペースを、強く感じさせる。
読んでいると、痛々しく感じたり、イラッとしたり、するかもしれない。
自分にもある部分、でも、自分はうまく処理しようと頑張っている部分。
だから、七森や麦戸ちゃんを、一周外から眺めている白城の立ち位置に共感する。
ぬいぐるみとはしゃべらない。
でも、ぬいぐるみとしゃべる、やさしい人を、見放さないでいたい。そんな感じ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ぬいぐるみ好きなので気になっていた本。繊細で優しいMZ世代向けなのかなと感じます。所々共感できるし、自分もぬいサーがあったら入りたいと思うけどめちゃくちゃ響く所はなかったです。でもこういう雰囲気は割と好きてす。
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ぬいぐるみと話す人はやさしいということに同感である。
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「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」という、ほとんどひらがなで書かれているタイトルに惹かれました。子供の絵本を見たときに感じる、優しさを感じる。
イラストもかわいい。(装画はumao)
4つの短編が収録されています。( )は私のプチ感想です。
1.ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい(ぬいぐるみサークルのメンバーのお話。繊細な七森くんと麦戸ちゃんが世の中の辛い出来事に対して思うところはすごく分かるから読み進めました。)
2.たのしいことに水と気づく(妹が失踪し、帰りを待つ姉のお話。いいお姉さんだなって思ったのと、自分の家族の誰かが突然消えたらって想像しただけでこわくて苦しくなりました。)
3.バスタオルの映像 (一番短い短編なのにも関わらず、伝えたいメッセージがよく分かりませんでした。(;´ェ`))
4.だいじょうぶのあいさつ(断崖絶壁に住む家族。お兄さんとお父さんの間柄が悪いのか?なんか不気味な感じでした。)
この中でお気に入りの作品は1と2かな。
3と4は、私の理解力が足りないのか何が起きているのかよく分からず、、4は若干ホラーに感じました。でも楽しい読書体験でした!
【印象に残ったフレーズ】
ひとのこと、「男」とか「女」じゃなくて、ただそのひととして見てほしい。(P.30 七森くん)
白城:「でも現実は普通にひどいことが起きるのがふつうだよ」
七森:こうやって白城のなかで、ひどいことが自然法則みたいになってるのがつらい。(P.57) -
最後の話、優しすぎて傷つきすぎたゆえの行動に恐怖さえ感じて、珍しく最後まで読めなかった。。。
表紙とタイトルでかわいいと思って買ってみたら、めちゃくちゃ重い話カーニバルだった。笑
タイトルの話も、優しすぎて乗り越えられない弱さがたくさんすぎて。あーわたしも昔こんな時あったなって場面が沢山あってしんどかった、、
少し年をとって思うのは、あの時は諦めたり見なかったことにする力が今よりなかったなということ。
わたしが許せない、わたしが受け入れられない行動をもう見なかったことにしたり、吐き出したりする術を具体的につけていかないとこの世は乗り切っていけない。
ぬいぐるみとしゃべるのはきっとみんなの処世術であり癒しであり悲しみや怒りの浄化なんだろう。
そうじゃないと、優しさと弱さだけに飲み込まれちゃうことは、時にそれが暴力や怒りに変わったりすることもある。優しすぎることは残酷にもなりえるんだよなあ。
映画でこの感じをどうやって表現されるのかすごく気になる、、、 -
2023年9月
誰にも傷ついてほしくないし、自分が誰かを傷つける可能性を考えるとゾッとする。でも考えれば考えるほど誰も傷つけないというのは難しい。常に優しくあろうとすることは難しく、考え続けることは孤独でしんどい。小説は七森の思考が通して描写されて、読者も七森と同じしんどさを味わう。思考放棄しない七森や麦戸ちゃんは優しい。 -
あらすじ
人に言えない悩みや愚痴をぬいぐるみに話す活動をするぬいサー。
そこに所属するジェンダーの押し付けが苦手な主人公の七森、そして仲良しの麦戸ちゃん。それからテニサーとぬいサーを兼部をしている白城。七森は恋愛としての好きな気持ちが分からないままひょんなことから白城と付き合うことになる。しかし最近学校に来ていない麦戸ちゃんのことも気にかけておりーー…
感想
七森は成人式で地元に戻った際男らしさの押し付けやからかいにより傷ついたが、発言した本人ではなくホモソな社会が悪いと考えていた。私は酷いことを言われた直後そのように思えないだろうから広いフィールドでものを考えていて驚いた。
また、七森は自分と関係のない悲しい出来事でもちゃんと傷ついていてすごくピュアなんだと思った。真っ白すぎるが故にちょっとでも黒い絵の具が飛び散ったら目立つみたいな。
この本を通して思ったのは本当に優しい人って人より傷つきやすくて繊細なのかもしれない。だから本当に優しい人は人間として現代で生きるには結構辛いのだろうなと感じた。全然関係ないけど会社の経営者は人格破綻者が多いのもそりゃそーかって思った。七森みたいに優しかったら経営なんてできないよ。自分とは全く違う考え方で生きている七森の視点を体験できて新鮮な気持ちで読めた本だった。 -
他の人の感想通り、やさしいというより繊細さんって感じだな…と思った
強さを兼ね添えた優しさが好きなので登場人物の中では白城が自分にとって一番好感が持てる
「強くて優しい」に一番近いのは二つ目の「たのしいことに水と気づく」の方のお話かなと感じたので、収録されてる話ではこれが一番好き
一番最後の話も村田沙耶香みがあって(他の作家名出すのごめんなさい)好き -
何回読んでも泣いてしまう。
ずっと言葉にうまくできない自分のしんどさが七森くんのしんどさと繋がる。白城さんだってちゃんとやさしいし、ヤナだってちゃんとやさしいことがなんだか余計に苦しくなる。