メグレ間違う (河出文庫 シ 2-7)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 32
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462004

感想・レビュー・書評

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  •  メグレ警部(警視)は世界でもっとも有名な「名探偵」のひとりだと思うけれど、僕自身はジョルジュ・シムノンの本を読んだことがほとんどなかった。唯一の例外は、小学校の時に読んだ子供向けの世界推理小説全集の中の1冊だと思う。別に嫌いだったわけではなく、創元社とか早川書房とかからあまり出版されていないからに違いない。図書館がなかったらやっぱり読まないでいたような気がする。

     読んでみて思ったのだが、古き良き落ち着いた気持ちのよいミステリである。豪華なアパルトマン(この「アパルトマン」という響きがいいね)で、若い女性の死体が発見されるわけだけど、ある意味種も仕掛けもなく殺人事件の捜査が淡々と進んでいく。密室とかびっくりするような不可能状況があるわけでも何でもない。別にトリックらしいトリックが使われるわけでもない。容疑者がいてそれを追いかける。関係者の話を聞く。そして最後に犯人がわかる。それだけである。

     それだけなのに魅力的なのは、やっぱりメグレの魅力であろう。世界でも指折りの名探偵として、強い印象を残してきたのはわかる気がする。特に、さまざまな関係者と話をするときの、ぶっきらぼうだけど何か余韻を感じさせる会話の描写がよい。さりげない言葉の端々に、人間の心の奥深さを感じさせるのである。

     そういう点で、中心人物である医師も、メグレ警部に劣らず印象的だ。かなり不愉快な奴ではあるのだが、妙に心に引っかかる。孤独が背中に張りついているのが見え隠れする。それにしても、そういう登場人物にまったく「けじめ」をつけず、唐突に終わってしまう物語のあり方に、深い余韻を感じると同時に、かなりはっきりとした不満も感じたのは確かである。
    2009/9/24

  • 確かに犯人を暴き事件は解決するのだけど、これはメグレの敗北と言っていいんじゃないだろうか。ラストの文章がすべてを物語ってる気がする。

  • 587.初、並、元ビニ、黄ばみ、帯付。(メグレ警部シリーズ)
    2011.10.26.鈴鹿ベルシティBF。

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著者プロフィール

1903年、ベルギー、リエージュ生まれ。中学中退後、転職を繰り返し、『リエージュ新聞』の記者となる。1921年に処女作“Au Pont des Arches” を発表。パリへ移住後、幾つものペンネームを使い分けながら数多くの小説を執筆。メグレ警視シリーズは絶大な人気を
誇り、長編だけでも70作以上書かれている。66年、アメリカ探偵作家クラブ巨匠賞を受賞。1989年死去。

「2024年 『ロニョン刑事とネズミ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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