いいなづけ 中 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462707

感想・レビュー・書評

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  • スティーヴン・キングの大長編読んでるときも、ヒイヒイ言いながら読んでいるのだけど(面白くないわけではない)、この『いいなづけ』もヒイヒイ言いながら読んでます(面白くないわけではない)。
    話は時々脇にそれ、そして何より持って回ったような言い方や表現が、段落もほとんど分かれることなく続く、続く。
    文字が文庫本の見開き一杯に、ダーッと並んでいるのを見ると「文学読んでますわぁ」と、どんどん脳内がスパーク起こしていくように感じます。

    上巻で、領主のロドリーゴからの魔の手を逃れるため、故郷を離れたレンツォとルチーア、そして、ルチーアの母、アニューゼ。
    しかし二人の苦難は続き、レンツォは暴動に巻き込まれ、警察に追われる身となってしまい、ルチーアにも魔の手が迫る。

    先に書いたように、中巻の中盤までヒイヒイ言いながら読んでいたのだけど、それ以降が不思議とさらーっと読めたような気がします(当社比)。

    序盤がレンツォが暴動に巻き込まれ、逃走する様子、中盤からルチーアの方に話が移り、彼女が誘拐されインノミナートというその土地の悪党と対面する場面に移っていきます。

    このインミナートがなんとも不思議なキャラ。昔はかなりの悪党だったようですが、最近は自分の侵してきた罪に、何やら懊悩している様子。そんな中持ち込まれた、ルチーアの誘拐の依頼。
    インミナートはその依頼をこなすも、泣き崩れるルチーアの様子にますます気分は暗くなり、召使いの女にルチーアを丁寧に扱うよう指示すると、たまたま近所にやって来た枢機卿に会いに行き……

    海外の宗教観や信仰の深さ、宗教文化もよく分からないのだけど、インミナートの過去の後悔であるとか、司教との出会いによる変化であるとかは、不思議と伝わってくるものがあるし、なぜかストンと自分の中に入ってきました。

    大仰な雰囲気ではあるのだけど、それで冷めてしまう、ということではなく海外の崇高な舞台を見てるような感覚。表現とか文章の言い回しや。荘厳な文体や表現の雰囲気が、こういう場面と合います。

    インミナートとの会見の後、枢機卿はアッボンディオ司祭に会いにいくことに。アッボンディオ司祭は、ロドリーゴに脅され、レンツォとルチーアの結婚の立ち会いを拒否した人物。これのせいで、レンツォたちは村から逃げる羽目になったわけですが、そんなアッボンディオ司祭に、枢機卿は何と声をかけるか。

    枢機卿にわざわざお説教されても、グチグチ言っているアッボンディオ司祭はある意味面白かったけど、そのアッボンディオを包み込む枢機卿の大きさ。説教臭さはあるのだけど、宗教の精神というのは、この場面からなんとなく伝わってきました。

    何とか中巻も読み終え残すは下巻。ちょっと間を見つつ、またヒイヒイ言いながら読んでいくのだろうなあ。(面白くないわけではない)

  • 文体が癖になってくる
    日本の古典よりキャラが立ってる

  • 973||M-1||B10049170-2

  • 原書名:I promessi sposi

    第42回読売文学賞研究・翻訳賞、第26回日本翻訳出版文化賞、ピーコ・デッラ・ミランドラ賞
    著者:アレッサンドロ・マンゾーニ(Manzoni, Alessandro, 1785-1873、イタリア・ミラノ、詩人)
    訳者:平川祐弘(1931-、北区、比較文学)

  • 中巻の途中あたりから、突然おもしろくなってきた。

  • 「いいなづけ」の第15章から。
     そして多少分別を取戻したところでふと気がついてみると、自分は大いに分別を失っていた。 (P47)
    安酒場で酒を飲み過ぎたレンツォの描写だが、楽しい。だが、これがレンツォにとっては苦い体験となり、警察の密告屋に自分の身分を打ち明けてしまい、翌日はパン暴動を煽動したとして逮捕される運命にある。
    一方、安酒場兼宿屋の主はひやひやしながらこの様子を見ていたが、レンツォがもう寝てしまったとみるや自分も密告しに出かける。その前にレンツォの顔にランプをかざしてじっと見る場面は、レンツォと宿屋の主、双方の人間の奥底をかいま見ているようで、この小説の中で印象深い場面を構成する。
     人間は時々癇癪の種をまるでそれが愛玩の種ででもあるかのようにじっと見たいという一種の磁力に引かれることがある (P52)
    (2009 4/20)

    「いいなづけ」の第18章から。
     問題は出来心を起こした以上、いかにして得心させるか、だ。(P149)
    人間の歴史とか、もっと言うと人間の本質なるものは、実はこういった「出来心」とそれに対する「得心」で成り立っているのかもしれない。

     イタリアの薬局にあるアラビア文字の箱
    これは何のことだと思われるだろうか? そのこころは、実際中には何も入っていないけど、周りからありがたられ信頼を維持できるもの…だとか。
    この箱の位置は、日本では床の間にある掛け軸とかにあたるのだろうか? あるいはもっと家風があるお宅では日本刀とか?
    このマンゾーニの比喩、イタリアとアラブの歴史をかいまみさせてくれる。箱はヴェネツィアから来たのだろうか、シチリアからか、ひょっとしたらスペインから? (2009 04/24)

    今回はインノミナートという悪党の大将の改心と、ルチーア救出…と、物語は滔々と流れる力強い大河のように第1章からずっと続いているが、そこへ今回久しぶりにアッボンディオ司祭が第8章以来久しぶりに登場し、インノミナートの城へ改心した彼と一緒にルチーアを迎えに行く。大河の流れをまるで知らないように(実際知らないのだろう)、今までのように小心者の司祭。祝賀モードの周りから一人だけ浮いていて、始めて会ったルチーアを一時的に引き取る主婦からも作者からもつっこまれ放題…なのだが、彼がいなくては「いいなづけ」という小説は数段もつまらなくなるのか、と思ったりもする。
    言ってみれば、アッボンディオ司祭の役割は、先の大河に降ろした錘みたいなもの。アッボンディオ司祭が平常心か大きく揺れているかで、物語の流れが遅いか早いか、がわかる。アッボンディオ司祭で定点観測ができる、というわけだ。 (2009 04/29)

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