パラークシの記憶 (河出文庫)

  • 河出書房新社
4.15
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463902

感想・レビュー・書評

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  • 「ハローサマー、グッドバイ」の続編。時代的には、ドローヴとブラウンアイズが生き延びた前回の大凍結から数十世代後(千年以上後?)。再び大凍結が到来する予兆を見せる中での、青春恋愛、殺人事件の謎解き、村同士のいさかい、大凍結の到来、そしてスティルクやロリンに関する宇宙スケールでの謎解き、と盛り沢山な内容。癒し系の不思議な生き物、ロリンは健在。本作には地球人ミスター・マクニールも登場して、物語に奥行きを与えている。

    大凍結以降、スティルクの女性達は代々の母親の、男性達は代々の父親の記憶を遡って辿れる "星夢" や逆流(バックラッシュ)の能力を身につけた(遺伝記憶)。彼らは、内陸の民(農業と狩猟)の集落ヤムと、海辺の民(漁業)の集落ノスに分かれていて、陸の民を根掘り虫、海の民を水掻き持ちと罵るなど、お互いを蔑視。それぞれの集落は、男族と女族で別々に暮らし、最も古い過去まで記憶を辿れる者を男長、女長として戴いている、という設定だ。

    大凍結に向かう気候の寒冷化により、ヤムに飢饉が発生。食糧調達交渉のため息子ハーディを連れてノスを訪れていたブルーノ。チャームと出会ったハーディはたちまち恋に落ちるが、食糧交渉が難航する中ブルーノが何者かに殺害されてしまう。犯人を突き止めようとするハーディだが、ノスでは不用意な発言から孤立・監禁され、ヤムでは父親殺しの濡れ衣を着せられて、窮地に陥ってしまう。

    ハーディの叔父でヤムの男長、スタンス。権力欲に駆られた小心で愚鈍で邪悪な驢馬男。ほんとムカつく。ハーディと、この無能だが扇動に長けた権力者スタンスとの戦い(そして、スタンスの致命的な欠陥の解明)が物語の大きな柱。

    そして、神話的なドローヴとのブラウンアイズの時代に40年にわたる大凍結を二人はどう凌いだのか。ハーディとチャームがこの謎を解き、人々は再び大凍結を生き残ることができるのか。実はこの手立ては「ハローサマー、グッドバイ」を読んだ読者には分かっているのだが、ラストでミスター・マクニールによって明かされた、第一入植者たるスティルクの存在理由、そしてロリンの役割には驚愕した。全ては、宇宙航行種族(エイリアン)キキホワホワの植民のための壮大な環境整備計画の一環だったのだ!!

    「ハローサマー、グッドバイ」の続編として、物語を見事に完結させている。前作よりも大幅にスケールアップした作品だった。

  • 『ハローサマー、グッドバイ』の続編小説。
    SFであり、ミステリであり、恋愛小説でもあり、青春小説でもある。

    ある種中二病的とでもいうのか、青くて自尊心強めの子供世代の登場人物が多く、保守的な大人世代と対立する構図が前半主なのですが、痛々しくて辛かった。読むのにもエネルギーが要りそうです。
    でも、恋愛小説的な観点からみると若くて強く一途な思いは甘酸っぱくて好きでした。

    私は『ハローサマー、グッドバイ』を読んだのが大分前なのですが、できれば記憶が薄れないうちに読んだほうがいいと思います。設定も色々増えてたり。

  • 『ハローサマー、グッドバイ』がおもしろかったので、続編も読んでみました。前作の縮小再生産に陥らず、新たな魅力を創出しています。
    SFミステリ小説、といっていいと思いますが、よくぞまあこれだけうまく組み立てたものだと感心しました。そのうえ、箱庭感があまり感じられないのですごくよかったです。【2019年1月12日読了】

  • 『ハローサマー、グッドバイ』の続編

  • SFで、ミステリーで、さらに青春ものです。前作「ハローサマーグッバイ」を先に読んでおくと、いっそう楽しめます。?

  • 恋愛小説が終盤にかけてSFらしくなる
    釈然としなかった『ハローサマー、グッドバイ』の結末からの経緯も分かる

  • 2020/10/5読了

  •  愚鈍かつ保守的な老人に対する若者のエネルギー!という対立軸が、若者(30歳)から見ても鼻につく程に際立っている。最後まで読んでもこうした設定に必然性があるとは思えなかった。これが500ぺージ以上続くので、苦痛と感じる人は本当に苦痛ではないだろうか。
     主人公の言動や能力も、昨今叩かれてる俺TUEEE的なもので、ちょっと薦められない。

  • とてもよく出来た筋立てて、面白かった。
    けど、前作である<a href="http://mediamarker.net/u/ikedas/?asin=4309463088" target="_blank">ハローサマー、グッドバイ</a>ほどじゃ無いかな。
    前作はページを繰る手が止まらず、一気に最後まで通読してしまったけれど、
    本作は、なんども休み休みで、のんびりゆっくりした通読となったことからも、その差は明確だろうと思う。

    ただ、この感想は、個人的嗜好に拠るものが多分にあるだろうけど。
    本作の方が、作品としての完成度というか、しっかり具合は上だと思う。

    けど、ぼくは、前作の方が格段に好きです。
    チャームよりブラウンアイズの方が、圧倒的に好みですしw
    それはきっと、恋愛課程の長さだったり、
    エピソードの多さがそうさせているのだろうと思います。
    物語の主題をどこに置いているか、ということなのでしょうね。

  • パラークシの記憶 (河出文庫)

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著者プロフィール

1932年、英国バーミンガム生まれ。SF作家。72年にカナダのブリティッシュコロンビア州に移住。『ブロントメク!』で英国SF協会賞受賞。2005年没。著書に『ハローサマー、グッドバイ』『カリスマ』他。

「2016年 『ブロントメク!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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