パタゴニア (河出文庫 チ 6-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464510

感想・レビュー・書評

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  • 祖母のプロントサウルスの獣皮と
    一角獣の寓話から始まるエッセイ

    難攻不落な構成は
    波乱に満ちた作者の人生に似ている

    南米最南端を形成した
    喧喧囂囂なアウトローたちと
    その文明の衝突

    どこかで誰かと
    繋がっている様な…
    懐かしい親和性を覚えた

  • 憧れのパタゴニアに旅しながら読んだ。アルゼンチンの歴史を語る本って中々見つけられなかったのだが、友達に勧められて手に取った。今回は行けなかったがウシュアイアとか行ってみたいな。パタゴニアの事が昔のエピソードを中心に知れて良かった

  • 見渡すあらゆる地平にはるか遠く空を抱く純粋さを示す場所なのか、吹き荒ぶ凍りついた風が大地の岩に引っかき傷を作りながら突き刺さる太陽の痛みを記録する失われた場所なのか。
    ひととひとの単調に繰り返す営みに馴染めない者がやがて吹き溜まる場所なのか、ひとがひとらしく強さと弱さをそれぞれに見せながら生きる都会から少しばかり遠い場所なのか。
    記憶はやがて薄れるものではなく、次第に好きなように姿を変えるものである。どこか本棚の隅にしまい込んだはずのパタゴニアの大地の写真は、到底自分が自分の脚で歩いて撮ったものでもなく、雑誌の付録としてあったグラビア印刷の広告だった。その荒涼とした大地には確かに道であると脳の奥でだけわかる砂利の川が流れ、特段憧れるような美しい風景が写っているわけでもなく、ただその見慣れない風景に漠然とした憧れのようなものを感じたのだった。同じ名前のアウトドア・ブランドに少しだけ惹かれていたということもあった。実際、それがどんな写真だったかも覚えていないが、ただひたすら月に降り立ったかのような異空間は、やがて機会があれば一度は見てみたい場所となったのだった。
    暫くして再会したパタゴニアは、その南の隅にあるウシュアイアという街となってテレビの中に現れた。南極に向かう船の出発点として、そこはどこか他人事のような風景を引き摺ったコンクリートの街だった。きっと南極に向かう船が眩しかったのだろう。まさにそこにいて頑強な灰色の船に乗り込んだ知人は、ただ美しいと言って多くを語らなかった。それがパタゴニアの習いというものなのだろう。もちろん、一度も行ったことのない遥かな憧れとして。

    旅行記の新たな地平を切り開いたとされるこの作品は、現実と幻想がどこかで交錯するフィクションでもある。そこでは時間までもが行き来する。それでいて、それは疑いようもなく紀行文である。読者はいつのまにかパタゴニアを放浪し、太古の時代から現代までを見晴るかす。時に強風に潮がセールをもぎ取って行く海峡を超え、時に銃弾の乾いた音に身構える。そうやって読み終えた時、遠いパタゴニアはそこにある。

  • パタゴニア・・・というと去年観たチリの監督パトリシオ・グスマンのドキュメンタリー映画『真珠のボタン』と『光のノスタルジア』の舞台が確かパタゴニアだったっけ・・・くらいの知識しか持ち合わせないのだけれど、つまりそれは大自然=砂漠と海と氷河と天体観測所があって、遺跡や化石と同時にピノチェト政権に殺された人たちの遺体が今もたくさん埋まっている場所・・・という漠然としたイメージ。

    ブルース・チャトウィンの歩いたパタゴニアは、そんな大自然(フラミンゴやペンギンがいっぱいいる!)も踏まえつつ、もっと普通に生活している人々の人間くささのある場所だった。パタゴニアへ行くきっかけになった祖母のいとこのチャーリー・ミルワードについての調査はもちろん、ウェールズからの移植者など欧米から移り住んだ人、いわゆるグリンゴ(よそもの)と呼ばれる人たちの様々な人生、チャトウィンはそういう人たちの足跡を辿っていったような印象。

    とりわけ興味深かったのは『明日に向って撃て!』のモデルになった実在のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの話。そっか彼らはパタゴニア方面に流れてきていたのか。映画と違って、実際の二人の最期については諸説あるようです。

    『真珠のボタン』で知ったジェミー・バトン(ジム・ボタン)についても言及されていました。あとシェイクスピアの『テンペスト』に登場する島の怪物キャリバンや、ポーの『アーサー・ゴードン・ピムの物語』など、マゼラン以降の冒険家・探検家の航海記を元ネタにしたと思われる創作物がとても多いことを知って驚きました。コールリッジ『老水夫行』、キプリング『王になろうとした男』、コナン・ドイル『失われた世界』(いわゆるロストワールド=ジュラシックワールド)そして本書では触れられてないけどエンデ『ジム・ボタンの冒険』はジェミーバトンを下敷きにしているし。色々興味がわいたので関連本を読んでいってみたい。

    「ブルへリア」という魔術を使う集団の話もおどろおどろしくて面白かった。しかし興味を持ってネットで調べてみると同名のメキシコのデスメタルバンドのことしかほぼ出てこない(笑)意味はスペイン語で「黒魔術」と紹介されてます。まあいかにもデスメタルの人が好きそうな題材ではありますが。

    チャトウィンの文章は、紀行文というよりは散文(?)のようで、時系列順に地図を参照に辿るような感じではなく、思いついたままをどんどん書いて逸脱も多く、突然知らない登場人物が出てくるかと思えば、あ、まださっきと同じ人の話が続いてたのね、みたいなこともあり、けして読み易くはないのだけれど、なぜかこれが抜群に面白いという不思議な文体。池澤夏樹の解説を読むと、本人もそんな感じの人だったのかなと思わされる。女性と結婚していたけれど同性愛者で48歳でエイズで亡くなったとのこと。友人が書いたという作者の伝記も面白そう。

  • この本を読むとパタゴニア地域についてさまざまな説明があるのがわかる。そして原住民のインディオをはじめ、ヨーロッパの様々な国から移民してきていることを説明している。ただし、本人がイギリス人なのでイギリスからの移民に詳しい。しかし、アジアからの移民の話はほとんど出てこない。本人の体験記ではなく、自分の家にあったナマケモノの祖先の毛皮の話からパタゴニアを放浪した状態が書いてある。ただ、それよりも、パタゴニアに住んでいる老人から話を聞き書きしたものを書いているので、話が二転三転して、本人の体験記なのか現地の人の体験記なのかが区別がつきづらい。
     南米でのマヤ・アステカ文明展の特集の宣伝としての朝日新聞での南米文学の紹介の1冊である。

  • 半分の手前でやめた。
    訳が良いのか文体はとても好きだが、ストーリーが散漫で楽しめなくなった。

  • 次々に出てくる登場人物や突如過去にあった出来事の解説が挟まったりする点などが分かりにくく、脈略がない。アルゼンチンやパタゴニアに住む人を理解できたという点は良いが物語としちゃどうかなと思った。

  • パタゴニアと聞くと有名ブランドとともに雄大な自然をイメージしていたけど、結果、真逆。ほんと人の物語。場面転換が多いので話に入っていけなかった感。どこであろうと自然美なんてものはなく、人のドロっとした生活があるんだなと感じた。

  • 読みづらすぎて挫折

  • はじめのうちは、削ぎ落とされた端正な文や、自分の持っていない常識(わからない言葉や地名など)に気後れしていたのですが、中盤、ブッチ・キャシディ話のあたりで衝撃的に面白くなり、読了まで最高でした。物事の結びつけ方が奔放で力強く、他人への視線が思慮深くあたたかい。この先何度も読むことになりそうです。
    読むのに少し知識を要求されるのですが、わからないところは別に読み飛ばしてもいいし、ブルース・チャトウィンも1940年生まれと今のおじいちゃんくらいの人なので、ちょっと調べれば普通にわかることが多いと思います。

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著者プロフィール

1940年イングランド生まれ。美術品鑑定や記者として働いたのち、77年本書を発表し、20世紀後半の新しい紀行文として高い評価を得る。ほかに『ソングライン』『ウィダの総督』『ウッツ男爵』など。

「2017年 『パタゴニア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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