- Amazon.co.jp ・本 (494ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309464640
感想・レビュー・書評
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【読書前メモ】
人類学・考古学の学者によって書かれた本書。人類が「海」とどう向き合い、どのように切り開いてきたか。人類は南極大陸以外の大陸に自ら足を踏み入れた点で特異な種といえる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前、国立民族博物館でオセアニアの海洋民が天文航法を獲得していたという展示を見た。それ以来、疑問に思わず教科書どおりにしか覚えていなかった、「航路をひらく」ということがどういうことなのか気になっていた。
GPS航法が当たり前じゃないことくらいすぐにわかるが、そういえば燃料で動く船も当たり前ではない。人力で遙か沖まで船・舟をようにも進めようにも、人力で活動できる海域は限られている。潮流や風を使えば、気候風土の異なる土地を目指して狩猟や交易を発展させられそうだが、7つの海はそれぞれ潮も風も全く特性が異なる。風に乗って遠くへ行ってもいつか逆風が来なければ帰れない。潮流も大きな渦を巻いていてもとに戻れるなんて想像もつかない。この本を読んで、海洋での人間の営みには、自明ではないことがかなり多くあることに気付いた。そして、いったいどういう動機で人々は沖に出たのかという興味を駆り立てる。
今回はとりあえず、通し読みである。私の予備知識が浅かったことと、章の区切りが少なくて通勤の伴として消化しきった自信はない。この本は、(言い方は悪いが)考える要素の少ない記述本であり、記述の範囲がかなり広い。地図(海図)や潮や風といった気象データ、沿岸の地形や海底の土壌、そして舟の分類と変遷、人間社会の歴史的経過を補いながら読むと楽しいだろう。再読はまず、カヌー、カヤック、ヨット…と、船のつくりをスケッチしながら読むことにしたい。