ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来 (河出文庫 ハ 15-3)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309467597

感想・レビュー・書評

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  •  文庫本が出たので再読しました。サピエンス全史に比べると、妙に説明が長くわかり辛いと思っていたのですが、考えてみれば過去の歴史の場合の説明とまだ起こっていない未来についての説明ではその困難さが大きく違うのは当たり前です。未来のことは誰もわからないので、未来予測はほとんど当たることはありません。
     でもこの本の秀逸なところは、サピエンスの行く末についてその根源的な方向性について語っているところです。きっとハラリは、この本を書くために、「サピエンス全史」を書いたんじゃないかと思うのです。
     というのも、現在我々は自由主義という経済体制と民主主義という政治体制の下で生活をしていますが、それぞれの体制が予定している個人というのは、森羅万象についてきちんとその意味を理解できて適正な判断ができるという個人です。ところが現代人は森羅万象どころかどんな社会を目指すべきだとか、何が正義であるかはもちろんのこと自分自身についても全く理解できていません。
     そして科学的には「生き物はアルゴリズムである」そして「生命はデータ処理である」という前提に立てば、サピエンスより高度な知能を持ち、圧倒的に優れたデータ処理のできるアルゴリズムにその判断を委ねる事になることは当然のことなのだと言えます。
     考えてみれば私たちが今後目指すことは、健康、幸福、長生きなのですが、これを実現するために我々は多くのデータをアルゴリズムに供給する事になり、そして誰もそのアルゴリズムを理解できないままそのアルゴリズムの判断を尊重するようになっていくのは当然だと言えます。
    その行き着くところは新しい神への従属かもしれません。
    現代人はこの事を理解しておく必要があります。

  • 少し自分には読みにくかった。いつか読み直そう。

  • 人類はこれからどこへ向かっていくのであろうか。私たちが生きていく時に思う人類全体としての未来。テクノロジーの発展により不死と幸福を追求することが目的となり、神聖さも獲得しかけている人類。ただし、そのために生きている意義、といった内面的なものは無くなっていってしまう。新たな観念的な考え方であるデータ至上主義により、人類の個人としての経験はたいした意味を持たず、人類としての経験が今を有するようになるといった悲しい未来になる可能性があると筆者は主張している。
    示唆に富んでいるだけでなく、歴史からの学びを重視しておる歴史学者ならではの視点で語られており、とっても勉強になる一冊だった。
    また、文庫版の序文では、Covid-19は、テクノロジーにより疫病は対処可能な課題になったのにも関わらず、大人としての振る舞いができない人類しかいないため、人災となってしまったというところが、とっても共感できる一説であった。
    また、ロシアのプーチンによるウクライナ侵攻も、せっかく克服したと思われていた戦争と貧困と病気の時代への逆戻りになってしまうというのも、確かに頷けるものであろう。
    この序文だけでもこの本を読む価値があると思う。

  • 著者の歴史(事実)を知ることは、未来を予測するために役立つのではなく。過去から離れるために有効という考え方が面白いと思った。
    知るほど視野が広がることは、自分の経験でも思い当たる節があるため腑に落ちた。

    人類という大きな推論のため、すぐに自分に活かせることは思い当たらなかったけど、著者の言う通り視野を広げることができた。

  • 難しくて読みづらい部分も少しあったが面白かった。人類が繁栄してきた歴史を振り返りつつ、それに基づいて今後の未来を予測していく。今後、人類とAIやアルゴリズムがどのように共存していくのか、はたまた人類はオワコンとなっていくのか。これからを生きていく上で頭に入れておいて損はない考え方の1つを提供してくれる本だった。

  • 著者による未来予想図としてのデータ市場主義が描かれているが、あくまで望ましくないけどなりうる未来としての扱い。
    生物学をすこし齧った私にしても、生命が全てアルゴリズムに還元される本書の考え方はあまりにも機械論的人間観、生物観ですこし引くが、かなりの部分はありうる未来と感じる。
    ウクライナ戦争が始まった2022年は人類の時間が巻き戻ってしまった感はあるが、今からでも読むべき一冊。

  • データ、データ、データ。
    確かにそうだなーと。
    私たちは単なるアルゴリズムだと言われると、そんな気もする。
    私はアップデート出来る気がしない、、、

  • サピエンスの歴史をベースに未来の可能性を示唆。脳科学や生物学の動向を語りながら、それはアリゴリズムに過ぎないことを説く。とはいえ、それを結論としているわけではなく、意識研究が進めば違う未来も見えてくる可能性は残す。
    様々な快楽も所詮脳の電気反応に過ぎず、だとすればさらなる刺激を求め続けるだけという、人間の退屈さのベースとなるものも垣間見えて納得。
    歴史は漸進的に進むように思っていたが、データー教は確かに急速に進んでいて、自分の身の回りだってこの10年20年で大きく変わってきた。長い歴史の中の人一人の人生での変化はたいそうなものでなくともあと何十年かの未来から振り返ればたいそうなものになっているのだろう。
    サピエンス全史とこのホモ・デウスと客観的な理論をベースに語られていて非常に面白く読んだ。

  • 近未来の地球は「データ至上主義」が覆い、人間の知能や思考はすべてアルゴリズムに置き換わるーー。稀代の歴史学者が未来を予測し、現代人に警告する。

  • (上下巻まとめて)
    サピエンス全史で、ヒトは物語を創造しこれを基盤に大勢が協力することができたから他の動物の上に君臨できた、という著者の考え方のベースはだいたいつかめていたので、スムーズに読み始めた。
    「全史」の上に積み重ねるようにして展開する未来予測。知能と意識を分けて考え、生命はアルゴリズムか?と問う。私たちが普段考えている「感情」が脳の働きから来ることを考え、自由意思はあるのか?と問題提起。欲望や選択という行為は自由だ、と考えたいが、その欲望自体が遺伝子コードを反映していると解釈しないと、ダーウィン流の”自然選択”の出番がなくなる、と説明する。なるほど、だとすれば、生命はアルゴリズムだ、というテーゼに限りなく近づいていく。
    人間至上主義からデータ至上主義へ、という流れを合わせて考え、このアルゴリズムの外部化というか、データ共有を重視する主義、世界の分析はなかなか面白かった。自分しか読まない従来の日記に意味はなく、経験は共有されなければ無価値だ、と。旅先で珍しいものを見た時、自分はどう感じるか?と問うのではなく、この経験を大量のデータフローにつなげることが重要。データ至上主義の世界では、データフローを妨げることが最大の罪になる。死とは、情報が流れない状態だ。
    ああ、これはすでに我々が住んでいる世界の話だと改めて気づかされ、本書の未来予測がより説得力を持つ。

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『「サピエンス全史」「ホモ・デウス」期間限定特装セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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