- Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309620725
感想・レビュー・書評
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松下竜一は、田中正造とか宇井純と同じくらい偉大だけれど、まったく違う地平でもっと、とてつもなく大きな意味をもつ存在です。
『豆腐屋の四季』は、穏やかな中にも清々しい、凛とした本でした。否、病弱な身体で過酷な豆腐作りを命を縮めるように、不器用に失敗の連続が描写されるところを小学生の頃読んで、大好きな豆腐をしばらく口にすることができなかった記憶が蘇ります。
豆腐屋さんが書いた本ということで、デビュー当時たいへん話題になり、TVにもご夫婦で出演されたところをビデオで拝見したことがあります。
ごっつい感じだけれど繊細そうな松下センセと、たしかまだ高校を卒業されたかされないかの、かわいい奥様を見て「美女と野獣」みたいという感想を抱いたことをうっすら覚えています。
2004年6月17日に亡くなったからもうすぐ3周忌なんですね。まだ63歳でした。
はたして、短歌好きの豆腐屋さんが、どうしてその後、公害運動や反権力闘争に同伴されたか、いや、ある意味で牽引された、といっていいと思いますが、それはこの本を読めばわかります。
東アジア反日武装戦線狼部隊の丸の内・企業連続爆破事件を克明に記録。(無差別テロは確かに極悪非道の犯罪には違いありませんが)何か思想的なイデオロギーに基づいてでも、文学的にでもなく、普通の人の視点で事実を事実として明らかにするということで、真実に迫って私たちを惹きつけます。
身辺雑記風の『底ぬけビンボー暮らし』や『ビンボーひまあり』も、ほのぼのとして好きで愛読していますが、こういう硬い本がいかに売れないか、ということはいかに関心が持たれないか、を知り唖然としたりしましたが、でもそれにも負けず(たとえば売れるようなユーモア小説やルポやノンフィクションを書けば書けるしその実力はあった訳ですが、そうはなさらなかった)むしろその貧乏を楽しんで、悠々自適生涯をまっとうされた松下竜一を、すごく尊敬し憧れてもいます。
松下竜一をどう継承していくのか。これは愛読者の一人として単なる行為として文学作品を読むこと以外に、実践や行動が伴うことで甚だ困難なことですが、何かやらなければ・・・・・詳細をみるコメント0件をすべて表示