平ら山を越えて (奇想コレクション)

制作 : 中村 融 
  • 河出書房新社
4.00
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本棚登録 : 102
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309622064

感想・レビュー・書評

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  • すごい創造力だなぁ。
    環境問題や人口問題、犯罪被害者の問題などへの風刺の利いた作品が多いが、どれも面白かった。
    「マックたち」に背筋が凍った。
    「ちょっとだけちがう故郷」は、少年少女のノスタルジックな冒険話で、ちょっとだけちがう世界を望む気持ちが切なかった。

  • 「スカウトの名誉」が面白かった。
    ネアンデルタール人の生態の記述だけでだいぶ興味深いのに、ラストの一言がストローク。おっと、そういう話だったのか!

    「謹啓(Greetings)」は邦題が無意味に堅めだけど、まあ、ディストピアものだからなあ。くたばれサンセット旅団、DNRは本人が発するもんだ!更に絡んでくるレジスタンスの面子が微妙に高飛車で(ゆーてもこの辺りが、真っ当に行かないビッスンの本領発揮な気もする)、彼らの有り様によっちゃ、トムとクリスも違う末路があったろーに、あーあ。
    クリスの唱え続ける「ハベアス・コルプス」が意味シン。

  • 同コレクションで「ふたりジャネット」も出しているテリー・ビッスンの作品集。
    以下、各話の超簡易感想です。

    「平ら山を越えて」
    表題作にもなっている作品。
    アパラチア山脈が周囲の街をすべて巻き込んで隆起したという天変地異の後の世界を描いた物語ですが、読み心地はどこまでもノスタルジック。
    なんせ語り部がモンスタートラックで山越えするオッサンで、そのオッサンがかつての自分にそっくりなヒッチハイカー少年を拾うというお話なわけで。
    古くてちょっと良い感じのロードムービーを観たような読後感で、ほっこりしました。
    オッサンかっこいい。

    「ジョージ」
    羽の生えた赤ん坊をめぐる父親の葛藤と母親の強さ、そして選択。
    とてもシンプルで温かいメッセージが伝わる作品でした。

    「ちょっとだけちがう故郷」
    静かな町に住む少年と少女の冒険と別れ。
    古い競走場のアーケードが飛行機になるとか、それに乗ってたどり着いた場所が自分たちの町とそっくりだけど少し違う平行世界というジュブナイル的なワクワク感!
    あとがきを読んでからもう一度本編を読むと、結末の切なさとそこに作者が込めた思いにホロッと来てしまいます。
    もう一つの町で彼らが幸せに暮らしていますように。

    「ザ・ジョー・ショウ」
    ばーーーーーっかじゃねえのwwww
    的な軽くて笑えてエロい作品。
    宇宙人だかプラズマ雲だかなんだか知らないけど、とにかく宇宙的なスケベ野郎ということは伝わった。
    その心意気や、よし。

    「スカウトの名誉」
    孤独な考古学者のもとに届く、彼方からのレポート。
    クライマックスに向けてジワジワと彼女の現状や今後起こる出来事が明らかになっていく構成がいいですね。
    孤独な生き物同士が寄り添って滅び行く姿がどうにも切ない。

    「光を見た」
    月面に現れた光との邂逅、そして喪失。
    解説にアーサー・C・クラークの短編と同じアイディアを使っていると書いてありますが、不勉強なのでそちらは読んでことがありません…。
    信者ではなく友人がほしい寂しんぼの光さんに萌える話でした(違う)。
    あと犬かわいい。

    「マックたち」
    犯罪被害者の加害者に対する思いの精算と、そのやるせなさ。
    被害者家族に私刑にされるために作り出された犯人のクローン(一体だけ本物)という狂気じみた設定が素敵。
    インタビュー形式で描かれているお話ですが、もしや…と思いながら読んだ先の最後の一文が素晴らしいですね。

    「カールの園芸と造園」
    死にゆく星の現状をガーデニングという題材で描いた作品。
    ゲイル…(´;ω;`)ブワッ

    「謹啓」
    百ページを超す中編作品。
    爆発的に増えた人口をコントロールするために老人が口べらしされるディストピア世界が描かれています。
    星新一や藤子不二雄にも同じような設定の作品がありますが、それらは毒を込めながらも静かな切り口だった一方、こちらは徹底抗戦。
    結末の空虚さ、やるせなさと言ったらもう…。

    どの話も読みやすく独特の味わいで面白かったです。
    やはり短篇集やアンソロジーは好きだなぁ。

  • 「マック」と「ちょっとだけ違う故郷」が読めてよかった。「ジョージ」の神父の恐ろしさに震えました(笑)

  • 図書館で借りました。面白かったです。前にふたりジャネットを読んで面白かったのでこちらも借りて読んでみました。

    なるほど表紙のアレはロブスターだったのかあ…と読み終わって納得。子供時代にしたことって自分はものすごい計算高く行動したつもりがあとから思い返すと大人には丸わかりだったんだろうなあと思うことがあります。そんなことを思い返しながら読みました。ジョーのショーも面白いですね。Almost homeはだったら ほぼ家 ぐらいでもいいような気がします。少し物悲しい、出会うはずの無かった兄弟が好きでした。

    後半の作品はなかなか重たいテーマで色々考えさせられます。マック達は今後ありうるかもしれないし、それを行ったら黄昏軍だってありえないとは言えない。ガイアは言うに及ばず。この間見たTEDでの昆虫が絶滅したら地球上の生物が大多数(数字を忘れました)絶滅するけれども人間が死滅したら他ほぼすべての生物が繁栄する、と言う話をしみじみと思い出しました。とはいえ消費活動を推進することにより企業が発展し、我々も豊かな暮らしをしてきたのだからそのかじ取りが直ぐに切り替えられるとは思ってはいないのですが。こんな世界になったら大変だ、と言う例を上手に切り取って見せてくれるそんなSFだと思いました。まるっきり嘘な訳ではなく、ありそうな話をシニカルにそしてどこかコミカルに提示してくれる。すごいなあ~。他の作品も是非読んでみたいなあと思います。

  • 2012/7/7購入

  • トラック乗りと少年の旅を描くノスタルジーに満ちた表題作をはじめ、若い夫婦が授かった不思議な赤ん坊をめぐるハートウォーミング・ストーリー「ジョージ」、少年が古い競技場で見つけた“あるもの”が導く、優しくて切なすぎる物語「ちょっとだけ違う故郷」、太古の世界がテーマの異色作「スカウトの名誉」、インタビューの回答だけを並べて現代の暗部を暴き、ローカス賞、ネビュラ賞をW受賞した傑作「マックたち」、究極のディストピアSF「謹啓」など、全9編を収録。

  • "現代のホラ話"の語り手ビッスンの日本オリジナル短篇集第2弾。『ふたりジャネット』と比べるとユーモアのなかにどこか切なさを感じさせる作品が多いかな。個人的にはこちらのほうが好み。
    お気に入りは表題作、「ちょっとだけ違う故郷」、「マックたち」。

  • Amazonによると
    《地殻変動で生まれた巨大な山を越えるトラック乗りと少年の旅を描いた表題作他、ローカス賞&ネビュラ賞受賞の「マックたち」など、SF界屈指の短篇の名手による<現代のほら話>9編。》

  • どの短編も違った持ち味があって、テリー・ビッスンの引き出しの多さを感じた。特に気に入ったのは、『ちょっとだけちがう故郷』。二人の少年と一人の少女が、捨てられた飛行機を修理して乗る、というノスタルジックな展開と、切ないラストがとてもきれいに繋がっている。『マックたち』のオチは一読で理解できなかったのが悔しいけれど、とても巧いと思う。これは実際に起こった事件のブラックな風刺のようだ。『謹啓』はてっきり老人たちが死を前にしみじみ語るセンチメンタルストーリーかと思ったのに、半ばからまさかの急展開。センチメンタルどころかアクション満載だった。他の六編も個性豊か。中村融氏のセンスが光る編纂。

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テリー・ビッスンの作品

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