- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309624310
作品紹介・あらすじ
解放令はなぜつくられたか。前史と以後の反対一揆を含め、その背景に実証的に踏み込む。解放とは、弾圧の別名であったのか、近代の黎明神話を暴く。
感想・レビュー・書評
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歴史の授業で明治になって穢多非人身分が解放されました、と教わる一行の中に含まれる大きな渦とうねりを詳しく知ることができる。穢多が百姓と一緒になるということは、百姓が穢多になることだと起こる反対運動、建前上身分は一緒になったものの実質の差別がなくならない上生業を奪われることになった穢多身分などなど、多面的に明治期の解放令を解きほぐす好著。
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社会が大きく変わっても、昔のままでいたい人たちがいる。変化を僥倖とする人がいる。
思い込みと無知が暴動になったり新たな差別意識をうんだりする。
こうやってあとから丁寧に、解放令の背後を読み解くことはできても、どうやっても万人が巨視眼を持つことはできない。
差別の歴史背景を知るたびにどうしたらいいのかと、立ちすくんでしまう。 -
明治4年の「解放令」に関する歴史書。解放令の前提を公議所における議論ではなく、慶応3年2月大坂渡辺村が出した賤称廃止の「要望書」に見いだしている点が独特である。
わからなかったのは、松本良順がなぜ「浅草の新町」に現われたのか、ということ。また、第3部で扱われた美作津山一揆や筑前竹槍一揆がなぜ終焉したのか、ということ。 -
明治維新にともなう解放令により、大きな影響を受けた被差別部落の現状についての克明な解説。歴史の教科書では教えられない貧民層の話が分かる。
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明治維新にともなって、士農工商の更に下の人たちに出された解放令について。史料を読んでいく風なつくり。
上の人が「開明しましょう」「人道でしょう」と勝手にやったことではなく、弾直樹の当事者運動的な部分もちゃんと見なければという指摘がある。
その一方で、新政府が税金を「平等に」取り立てるために上から押付けた「解放」であるという指摘もある。
新政府への不満を募らせた農民たちによる一揆で、仮想敵とみなされた「新平民」の村が襲われる部分は現在を連想させて恐ろしくて、愚昧な農民どもへの怒りが募る。
が、愚かな反革命にしか見えない暴動の裏にある農民たちの苦しみや、権力に抗ってでも守りたいものについても思いをはせる。
こちらからとあちらから、違った角度の見方を提示してくれる。
「現在」や現在も続いている一方的な見方への警鐘として受け取るべきなのかな。