法とは何か---法思想史入門 (河出ブックス)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 209
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309624334

作品紹介・あらすじ

私たちは、生きていく上で多くのことがらを自分で判断して行動する。一方で、憲法改正や税制から、交通規則や婚姻制度まで、社会全体として答えを出さなくてはならないことがらについては、法に照らして考えようとする。しかし、なぜ法に従うのか。そもそも法とは何なのか。国家の権威や法の力、立法のしくみや民主政の意義について、近代国家成立以降に先人たちが唱えてきた法思想の系譜を読み解きながら、法とともにいかに生きるべきかを問う。法を自らの問題としてとらえ直すことができる、はじめの一冊として最適の書。

感想・レビュー・書評

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  • 憲法学者の長谷部先生による法思想史・政治思想史入門です。
    法思想史及び政治思想史の体系書はなかなか初学者には取っ付きにくいですが、長谷部先生の著作はジョーク交じりで書かれていて、楽しみながら読み進められます。
    ハンス・ケルゼンやロナルド・ドゥオーキンの提唱した概念はなかなか理解しにくいですが、本書では日本国憲法の理解を中心に解説されており、とてもわかりやすいです。

  • 西洋に起源を持つ、法と国家、道徳をめぐる学説の整理。喩えが分かりやすく、学説の整理もこんな簡単でいいの?というぐらいさらりとしている。法思想史入門の副題通りの内容。

    ・カントの『永久平和論』に先立って、ルソーは『社会契約論』で同様の議論をしていた。人民武装、国家間同盟、国家解消。
    ・立憲主義は、憲法を通じて国家を設立すると同時に、その権限を限定する。限定することがなぜ必要かと言えば、多様な世界観を抱く人びとの公平な共存を可能にするために、公私を区分し、国家の活動範囲を公の事柄に限定するため。
    ・プレコミットメント:憲法、結婚
    ・個々の政策の実現よりもマニフェストを掲げて闘う方が効果的。
    ・直接民主制よりも間接民主制の方が賛成率が低くて良い。

  • 自分の進むべき道を考えていて、行政という選択について改めて考えてみようと思った時に書店で見つけた本。
    政治哲学(国家の役割)→法哲学(法の意義)という構成で、法哲学は理解が不十分ですが、政治哲学の方は新たな発見もありました。
    著者は、国家の役割として、①優れた知識により正しい判断を導くこと、②国民の意見が分かれているがどちらかの結論に決まりさえすればよい場合にそれを調整すること(調整問題:車の走行車線など)の二つであるとし、後者が主とします。しかし、行政は、対立し各当事者が主張を譲れないような事柄を、憲法をはじめとする価値や長期的な視点に基づいて調整するのでは?とまず思いました。本書で引用されている著者の『憲法の理性』を立ち読みしたところ、国家の3つ目の役割として、囚人のジレンマ状況の調整が書いてあり、実感としてはこれが大きいのではと思ったのが1つ。本書ではわかりやすくするためにこれも調整問題に含めているのかもしれません。なお、税額の決定も調整問題とされていますが、これは囚人のジレンマや上記の①ともいえ、公平性や適正な税収の観点から国家が決める側面があると思います。
    2つ目は、ルソーが一般意思は天才が出現しないと到達できないと考えていたこと。しかし、カントも「人間性というねじ曲がった素材から完全にまっすぐなものを作り出すことはできない」といいつつも、だからこそ社会契約のもとで理想を追求すべき(するしかない)と考えていて、そこで国家の意義を再確認できたような気がしました。

  • 本書は3部からなり,国家・法およびその結びつきについて解題する。法哲学という分野を一通り知るのに読みやすい本。

  • かなり優しい言葉で各種主要な文献をテーマごとに説明してくれているのはありがたい。この本を元に、ホッブズ・ロック・ルソーの原著に当たるのもありかもしれない。
    法哲学を学ぶ人のガイドになりうる。

    著者のいうことで、そりゃそうだと思えるのが、
    法律があって、どのようなケースでも一辺倒に適用していいわけではないし、実務上でそのようになされているわけでもない。
    ということ。それは、色んな人が法について様々な議論を重ね、突き詰めればどれも直観としておかしな結論に至ることを鑑みて、改めてそう思わされる。
    裁判が裁判官という人間によって行われる理由も、システマティックに法適用を行い難いから、という点にあるのだろう。

    道路は左車線走行というのは調整問題で、殺人を犯したものは刑法にて処罰されるというのは禁止を定めている。
    道徳と法は、必ずしも一致せず。

    法の論理から、法の正統性まで、捉え方の視点が広がる良書だった。

  • テーマ史

  • 読み直したさ:★★☆
    よくまとまっている。短時間で一周できる。ロック他,ケルゼンやハート。

  • 法政治学の歴史

    ざっと読んだだけで、特に引っかかるところはなかった。

  • 著者は、本業が憲法学で、法哲学、法思想史は専門外でありながら「自分が読みたい内容の本を専門家に書いてもらえないので自分で書いた」と豪語されていて、まさに長谷部節、全開。いつもながら自信にあふれて中身の濃い本です。
    http://d.hatena.ne.jp/yasu-san/20111012

  • ・法を権威authorityとして扱う実践的理由
     …よりよい知識/調整問題/囚人のジレンマ状況
     →比較不能の価値のなかでは強制する客観法秩序が必要(カント)
    ・政治的決定の限界…公私の区分論(立憲主義)
     →権力分立/違憲審査制度/硬性憲法(プレコミットメント)
    ・ケルゼンやハートは事実として従っていることを指摘しているだけ
     →なぜ従うかを問うていない…よりよい知識/調整問題
     →一般的な法律の妥当性は論じえない…適用違憲
     ※ドゥオーキンでは弱すぎるが、カントでは強すぎる

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2022年 『憲法講話〔第2版〕 24の入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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