挑発する少女小説 (河出新書)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309631349

感想・レビュー・書評

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  • 「風よ あらしよ」村山由佳 : 著 に、
    共感できなかった答えがここにあった!

    私は「風よ あらしよ」を日本版「風と共に去りぬ」「嵐が丘」と期待して読んでいたのだが、この小説の構成はどんぴしゃ「少女小説」だった。

    少女小説を特徴づける四つのお約束事
    1. 主人公は皆おてんばな少女である
    2. 主人公の多くは孤児である
    3友情(同性愛)が恋愛(異性愛)を凌駕する世界である
    4. 少女からの卒業が仕込まれている

    但しこの小説は3だけが真逆に描かれている。
    主人公の伊藤野枝には平塚らいてうや神近市子と手を携えて、女性解放運動に邁進して欲しかった。
    ベタに恋愛に走って欲しくなかったのだ。いつの間にやら私は『少女小説』の王道ストーリーを期待していて「話が違う!」と思ってしまっていた…。

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    全9作品。日本でもおなじみのラインナップで、どの作品もそれぞれに魅力的。特にアニメ「アルプスの少女ハイジ」「赤毛のアン」は高畑勲監督作品で、今見ても全く色褪せることがなく、見るたびに新たな発見がある不朽の名作だ。

    小学生時代の私を魅了したのは、
    少女漫画の金字塔「キャンディ・キャンディ」。
    少女小説の”ありあまる魅力”がすべて入っていた。
    全世界の少年少女達に、この漫画を気軽に読ませてあげたい! 切なる希望!

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    斎藤美奈子さんには、思春期の少女たちを描いた映画についても、執筆をお願いしたい。
    「悲しみよこんにちは」のセシル、「なまいきシャルロット」のシャルロット、「マイライフアズアドック」のサガ、「セーラー服と機関銃」の星泉、「魔女の宅急便」のキキ。 で、どうでしょうか?

  • 少女小説の楽しさ、そこに込められたメッセージ、時代背景を鮮やかに解説してくれて、現代の私が読んで感じた違和感はすっきり解消。こんな風に本を読み込んで人に語れるって、ホントにすごいことだと思う。

  • 子どもの頃はそうと意識して読んでいたわけではありませんが、いわゆる少女小説と言われるジャンルの小説は、小学生の頃の愛読書でした。
    19世紀後半から20世紀前半に書かれて、作者も多くは女性です。
    ”少女小説は、広い意味での児童文学に含まれますが、文学史的には「家庭小説」と呼ばれるジャンルに属します。家庭小説は、家庭を主な活動の場とし、将来的にも家庭人となることを期待された少女のためのジャンルとして発展しました。”

    小学生の私にとっては家庭人となるための知識ではなく、遠い外国の知らない世界を見せてくれるのがこれらの作品でした。
    もちろん少女小説以外にも「宝島」や「トム・ソーヤ」なんかも読みましたし、民話や童話なども読みましたけど。

    なんでこんなに少女小説が好きだったのか考えてみると、主人公たちが伸び伸びと活動しているのがうらやましいというか、眩しかったんだと思います。
    だから実は『小公女』はあまり好きではなかったな。
    ちょっといい子過ぎて。
    あと、校長先生の掌返しが怖かった。

    帯の裏側にポイントが書いてあります。(なんと親切設計だこと)

    ”あの名作にはいったい何が書かれていたのか――!?
    魔法使いと決別すること@バーネット『小公女』
    男の子になりたいと思うこと@オルコット『若草物語』
    資本主義社会で生きること@シュピーリ『ハイジ』
    女の子らしさを肯定すること@モンゴメリ『赤毛のアン』
    自分の部屋を持つこと@ウェブスター『あしながおじさん』
    健康を取り戻すこと@バーネット『秘密の花園』
    制約を乗りこえること@ワイルダー『大草原の小さな家』シリーズ
    冒険に踏み出すこと@ケストナー『ふたりのロッテ』
    常識を逸脱すること@リンドグレーン『長くつ下のピッピ』”

    これらの作品に書かれているのは、自分の居場所をつくること、守ること。
    自分らしく生きること。
    子どもの頃は気づきませんでしたが、そういうことです。
    「ピッピ」以外は全部完訳版や一般向けの文庫本で読みなおしましたが、大人が読んでも十分に楽しめました。

    この本を読んで、子どもの頃にはわからなかった、深いメッセージの意味を知り、また読み返してみたいと思いました。
    特に、ケストナーの『ふたりのロッテ』。
    ナチスに強く抵抗していたことは知っていましたが、両親の離婚により別れ別れになった双子のロッテとルイーゼの物語は、戦勝国の勝手により分断された祖国ドイツの物語である、とは気づきませんでした。
    子どもにとって親は独裁的な権力者。

    著者は、少女小説には父親の影が巧妙に遠ざけられていると言います。
    それは、少女が自由に活躍するためには、家父長的な父親が邪魔だからだ、と。
    唯一父が健在の『大草原の小さな家』は、自由人の父親が定住派の母親の希望通り、町に住むことで家庭内権力闘争に負けたということになるのだそうです。
    少女が飛び立つための大きな障害が父親という存在(または家父長制という家システム)。

    私常々思っていたのですが、どうして朝ドラの主人公の父親はろくでなしが多いのだろう、と。
    いい人であっても、家長としては役立たずとか、いい人ですらなかったり、とか。
    それは、しっかり者の父親が健在であっては朝ドラのヒロインが活躍できない、ということなのですね。
    腑に落ちました。

  • 内容はとても興味深く読めました。私にとって思い入れのある本達ばかりなので、著者の言葉に不快になることもありました。この本を読んで、私は話し言葉では何とも思わない言葉でも、本の中だと受け付けないのだと初めて知りました。でも、内容的にはその言葉も納得なのですが。恐らく、少女小説は私にとって、特別な夢の世界に浸る場所なのでしょう。いろんな意味で発見の多い本でした。

  • 「『小公女』『若草物語』『ハイジ』『赤毛のアン』『あしながおじさん』『大草原の小さな家』―子どもの頃には気づかなかった。大人になって読む少女小説は、新たな発見に満ちている。懐かしいあの名作には、いったい何が書かれていたのか?かつて夢中で読んだ人も、まったく読んだことがない人も、いまあらためて知る、戦う少女たちの物語。」

    目次
    はじめに―少女小説って何ですか?
    1 魔法使いと決別すること―バーネット『小公女』
    2 男の子になりたいと思うこと―オルコット『若草物語』
    3 資本主義社会で生きること―シュピーリ『ハイジ』
    4 女の子らしさを肯定すること―モンゴメリ『赤毛のアン』
    5 自分の部屋を持つこと―ウェブスター『あしながおじさん』
    6 健康を取り戻すこと―バーネット『秘密の花園』
    7 制約を乗りこえること―ワイルダー『大草原の小さな家』シリーズ
    8 冒険に踏み出すこと―ケストナー『ふたりのロッテ』
    9 常識を逸脱すること―リンドグレーン『長くつ下のピッピ』
    おわりに―挑発する少女小説

    著者等紹介
    斎藤美奈子[サイトウミナコ]
    1956年、新潟県生まれ。文芸評論家。1994年、『妊娠小説』(ちくま文庫)でデビュー。2002年、『文章読本さん江』(ちくま文庫)で第1回小林秀雄賞受賞

  • 本大好きだった少女時代。その当時の自分では表現し得なかった違和感、すっきり解説してくれた。
    特に長靴下のピッピは、なんだこの悲しい感じ…と当時から思っていたが、その意味もすっきり。

    これを読んでからもう一度あの頃の本を読み返したい。

  • 中学生の娘が「若草物語」のジョーを知らない、と言ったので驚いたが、私が子供の頃に読んだこれらの本は、今ではすっかり読まれていないんだなぁ。でも面白いものはやっぱり面白いし、この本片手に片っ端から再読したい!

  • 小公女、若草物語、ハイジ、アン、あしながおじさん、などの名作の魅力を語る。
    現代の視点で読み解くことは茶々を入れることでなく、新たな魅力を見出す。また作品の骨格は現代の視点に晒されても動じない。
    作品や主人公の比較も楽しく、どれも読み返したい。

  • どの少女小説も頃夢中になって読みました。「若草物語」と「パレアナ」が特に好きでした。 保守的な大人になっています。今読めば突っ込みどころ満載なのでしょうが、やはり主人公の前向きな姿は憧れでありずっと大好きなままです。斉藤さんの辛辣な文章にも
    少女小説への愛は溢れています。

  • なかなか面白かったです 懐かしさもあったけど、作者が結構斜め上目線じゃないか?と思う所あり 子どもの頃読んだ時はそんなふうには読んでないわ
    と思う所あり
    時代が変わったからね
    今の子どもたちはどう読むのかな?
    ちなみに私のバイブルは「若草物語」でした 5~6冊持ってた

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤美奈子の作品

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