資本の帝国

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314009621

作品紹介・あらすじ

ローマ、アラブ・ムスリム、オランダ、スペイン、イギリス…「帝国」の系譜をたどり、資本主義の発達史を活写しながら、現代アメリカの野望と戦略、そしてその破滅的行く末を浮き彫りにする。

感想・レビュー・書評

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  • 光先生推薦

  •  ヨーク大学元教授、ネオマルキストによる現代帝国論。興味深いのは、アンチグローバリストや<帝国>論者(ネグリらの)とは全く主張が違う点だね。グローバル化は国家権力を弱めるどころか国家権力と国民国家の存在を不可欠にしているという主張はなかなかおもろい。グローバル化が先進国による経済システムの構造化とそれに基づく先進国にとっての自由化に過ぎないという主張はマルキストでありがちで、「まあそうした面は否定出来ないけど、だから資本主義打倒はないでしょ?」といつもは思うのだが、この著者の主張には続きがある。つまり、グローバル化は実は自由化ではなくて、経済的なルールによって縛ること、つまり制限化なんだよと。これはただの言い換えに感じる反面、ウォーラーステインらの世界システム論から政治地理学を論じるP.J.テイラーの言説を思い起こす。即ち、「帝国主義とは、世界経済を制限し、他国の干渉がないように自らの勢力圏に構造化することである」と。こう考えると、グローバル化とは、「解放」ではなく「規制」である。エレンの主張は、第二次大戦後の資本主義のシステム化(制度化)が、資本主義経済を保護し、運営して行く為に政治、外交、軍事的措置を使う新しい帝国を作り出したというもの。政治の基盤のあるのが経済というマルクス主義的見方をある程度受入れる一方、上部構造の存在が下部構造の安定的作動には不可欠としている点で、彼女自身が望む望まむを問わず国家主義者ということを表している。ちょっと議論が飛躍したり、定義が曖昧な箇所も多いが。要はアイケンベリーらが主張する戦後構築としての戦勝国による制度化と同じことを述べている。これを帝国と言い換えるとき、戦勝国の利益に注目し、これをアイケンベリーの言うように協調と見る時に、システムの保持、ブル的な言い方をすれば国際システムの維持による国家の利益に注目する。但し、これを「新帝国」の形態と主張出来るのかは疑問。過去の帝国と現代の「帝国」の違いはまさに個人的にも納得出来るし、主張していることなので同意するが、ただそれは性質としての帝国、つまり「非公式の帝国」への移行であり、資本の帝国という論理は大英帝国の金融市場のニーズと植民地運営と大差ないと思う。無論、「非公式の帝国」もギャラハーやロビンソンが主張していたのはまさにこれなので、彼らの定義を「非公式の帝国」としちゃうと、三者は一致しちゃうけど。要は、帝国性、帝国的特徴が再生産されているというのが、彼女の主張なのだが(彼女自身は形が変わっていると主張するが)、最後の言葉、つまり米国も英国のインド統治のように領土的侵略を選択肢に導入している点から帝国が一周して元の帝国の形に戻った、との主張を見れば分かる通り、はっきりしない。個人的には、やはり変化は質だと思う。形ではなく。無論、ベイジンガーが主張するように形がそもそも一貫しているとか変化しているとかも時代や周辺環境が異なっており、且つミクロな分析せず、通史的に見るのは誤りとも言えるが。

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