創造―生物多様性を守るためのアピール

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314010641

作品紹介・あらすじ

地球の生物種は「第六の大絶滅」と言われるスピードで減少している。生物多様性論の旗手、E・O・ウィルソンからの警告と提言。

感想・レビュー・書評

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  • 朝日新聞の書評で見つけた。ウィルソンという著者自身に興味があったのではない。訳者の岸由二さんという名前にひかれた。その名も前から知っていたのではない。養老孟司さんとの対談を読んで名前を覚えていた。読書というのはおもしろい。こうして世界が広がる。さて、本書について。とにかく生物の種類の多さが強調されている。そして我々人類は、そのうちのほんのわずかな種類の生物としか付き合って来なかった。いや、実は菌類・細菌類まで含めると、ものすごい種類の生物と知らぬ間に付き合っているのかもしれない。生物の種をすべてデータベースとして残して行こうという動きがあるらしい。ネット上で情報がどんどん更新されていく。おもしろそうだ。我が家でも子どもたちに生き物と触れ合ってほしくて、モンシロチョウやアゲハを卵から育てたりしている。しかし、どちらかというと、子どもより大人の方がわくわくしているようだ。今年、名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議が開かれる。我々人類が巨大隕石と化して、生物を大絶滅に追いやっていいわけがない。図書館に購入してもらいました。

  • タイトルだけ見ると宗教に関する本のように思えますが、生物多様性にテーマを絞った自然保護に関する本。自然保護を推進するため、生物多様性に化学で対応しようとする非宗教的勢力と、大破滅後の救済を信じる宗教的勢力の連携を目指す著者が、キリスト教の牧師に語りかける形式を取って持論を展開しています。

    前半では生物多様性が損なわれる要因について明らかにし、後半には生物学を楽しむためにはどうすればいいか、ということにも触れてます。著者の見解を理解していくにあたり、このへんの理論は面白い。

    自然保護と生物多様性の維持のために、本当に化学者と宗教者が連携できるのかどうかはまだ分かりませんが、著者の持論が現実になったら、それは素晴らしい世界になるんだろうなと思います。

  • 進化論を否定し、自然保護を軽視するクリスチャン向けに書かれた本で、架空の牧師宛の手紙の形式をとっているのだけれど、めちゃめちゃ浅いのでガチガチの創造論者でもなければ読む必要ないと思った。

    唯一印象に残ったのは居住環境の本能的な好みの下り。
    "人の眺望の好みに良い事例があります。北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカを含む異なる文化の人々に、自宅や仕事場の環境を自由に選択させると、三つの基本特性を備えた共通性のある環境を選ぶことがわかってきました。

    ①前方に開け、世界を見下ろすことのできる高台に住みたがる。
    ②樹木や木立が前方に散財し、草原でも密林でもなくサバンナに近い展望のある公園的な眺めを好む。
    ③湖、川、海などの水域の傍を好む。

    これだけではありません。選択テストの被験者たちは、背後に壁、崖など何かしっかりした構造のある、やや奥に引いた感じの場所に住みたがるのです。(中略)人間の本性のこれらの癖のようなものは、ヒトはサバンナで進化したというサバンナ仮説を証明するわけではありませんが、その仮説と整合的とはいえるものです。サバンナ仮説によれば、人類は今日もなお、ヒトという種が数百万年に渡るその前史において進化の地となった、アフリカと似た生息地を好んでいます。(中略)人類の遠い祖先たちは、雑木林のような森に潜み、そこからサバンナや遷移途上の樹林地を展望することを好みました。大地を見渡して、追跡すべき獲物や、漁る対象となりそうな動物の遺骸、採集の対象となる食用植物、そして回避すべき敵生物などを探すのですね。近くにある水辺には、テリトリーの境界として、あるいは補助的な食物確保域として役立ちました。(中略)我々の遺伝子には依然として自然の世界が埋め込まれており、根絶できないのだとすれば、その効果は、住み場所の好みだけでなく、精神的・肉体的な健全さの他の領域にも及んでいるのではないか、確認が必要です。心理学者たちによれば、人は自然的な環境、特に公園やサバンナのような光景を目にするだけで恐れや怒りの感情がおさまり、気分が穏やかになることがわかってきました。(中略)人間の本性のかなりの部分は、ヒトという種が人間以外の生命世界と親密に暮らしてきた長大な時間に、遺伝子に刻印されてきたものであることを示唆しています。"

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:519.8//W75

  • 第一章 南部バプティスト牧師様への手紙
    第二章 自然の位に上ること
    第三章 本来的の生命ある自然とは何か
    第四章 生物多様性はなぜ大切なのか
    第五章 地球からの侵入者
    第六章 二種の驚くべき動物について
    第七章 野生の自然と人間の本性
    第八章 地球の窮乏化
    第九章 否定とそのリスク
    第十章 最後のゲーム
    第十一章 生物学は生きた自然についての研究である
    第十二章 生物学における二つの基本法則
    第十三章 ある知られざる惑星の探検
    第十四章 生物学 いかに学びいかに教えるか
    第十五章 ナチュラリストの育て方
    第十六章 市民科学
    第十七章 生命のための連携を

  • ゼミの先生から借りた。著者エドワード・ウィルソンはバリバリ現役昆虫学者81歳。アリの研究者。毎日せっせとフィールドに出ては材料を探し、家に持ち帰って形を作る。アリのような男である。
    法政の社会学部の講義の中に『自然科学特講』というのがあって、ウチのキャンパスを生かした(!)自然観察実習をやる。僕も後期から受講することになってるので楽しみ。
    今は鞠子という教授が担当している。専門は生態学。どうやら法政社学の理科系の先生は代々生態学の先生と決まっているらしい。昨日ウチのゼミのOB(90年代前半に学部生)に会いに行って色々と話をしたのだけど、彼は生態学目当てに社学に入ったのだということだ。当時は金子(?)という先生が担当をしていたらしい。
    生態学の先生を選ぶのは社学が『環境社会学』学会設立の場所だからかな、と考えていた。環境社会学は公害問題や環境評価をあつかう。だからカリキュラム的に親和性が高い生態学を選ぶのかと。
    それを鞠子ゼミの友達に言ってみたら「どうだろうね。キャンパスの環境調査やってくれるから運営的に一石二鳥って事なんじゃないの?」とのこと。まぁそれも一理ある。
    だいたいよほど真面目に考えないと『環境社会学だから生態学なのか!』なんて見方は出てこないからね。考えすぎかな。なんにせよ、生態学を取り入れてるのは21世紀に誇るべきこと!だと思う。ウィルソンが語るように、生物学は全学問の駆け橋となりうるからだ。
    本書でウィルソンはナチュラリストの視点から「人間の価値観の中で自然というものをどう位置付けるべきか」「科学と宗教はどうしたら手を結べるか」「科学とは何か」と言うことに関する提言を行う。長年の研究に裏付けられた生物研究に関する蘊蓄と、彼の歩んできた人生、そこから人間世界全体について語り、生物多様性の必要性を訴える。刺激的な「説教書」だ。
    「物事に取り組むための、然るべき態度」を問うところは、今読んでいるミルズの『社会学的想像力』に通じるものがある。その21世紀版であると僕は思っている。
    アインシュタインの言葉「人間性について絶望してはいけません、なぜなら私たちは人間なのですから」。「なぜなら私たちは日本人なのですから」「なぜなら私たちは生き物なのですから」。どうやったら繋がっていけるか、何故繋がっていられるのか、多様性の想像力をそこから始めたい。

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エドワード・O.ウィルソンの作品

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