- Amazon.co.jp ・本 (158ページ)
- / ISBN・EAN: 9784323006604
感想・レビュー・書評
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シェリダン・レ・ファニュの作品を収録した短編集。
図書館本。
児童向けの抄訳ホラー全集のうちの1冊。抄訳とはいっても雰囲気を損なわない、ツボを押さえたものなので、なかなかの読み応え。ただ、やたらと『きゃあー!』と悲鳴が入るのがちょっと……(笑)。
まえがきの、怪奇小説に関する考察も面白い。
入手困難本にのみ収録されている話が載っていて、児童向けとは言えども貴重な存在。
ちょっと気になるのは、話の流れがやや散漫な作品が多いこと。小学校中学年以上向きとのことだが、小学3年生くらいだと要点がつかみにくいのでは?
◆「絵にかくされたふしぎな話」
ゲルアルド・ドウ画伯の弟子・シャルケンは、ドウの姪のローゼに心惹かれていた。ある晩、バンデルハウゼン卿と名乗る男がドウの家を訪れ、ローゼとの結婚を迫る。卿の財力に目の眩んだドウは結婚を承認してしまう……。
「シャルケン画伯」の邦題で創元推理文庫の「吸血鬼カーミラ」に収録されている。
正直、作中でシャルケンが果たす役割からすると、本書の児童向けタイトルの方がまだしも相応しいんじゃないかと。
◆「緑色の目の白いネコ」
ドノバン一族に死を告げる白い猫。大おじが過去に行った卑怯な行為とは?アイルランドの因縁話。
徳間文庫から出版された「猫に関する恐怖小説」に「白い猫」の邦題で収録されている。
日本の昔話などにもよくあるタイプの祟り話で、そのへんは洋の東西を問わないんだなと思った。
◆「かわら屋根の家のゆうれい」
果樹園に現れる白い服の女と幼い少女、執拗に扉を叩く何者かの手……。かわら屋根の家にまつわる2つの幽霊話。
長編小説「墓地に建つ館」から、怪談めいた部分を抜粋したもの。
『レベッカおばあさんの話』は「白い手の幽霊」等の邦題で数多くの短編集に収録されている。抜粋でありながらファニュの代表作。最後の部分が割愛されているものの、怖い雰囲気は充分。
どちらもイマジネーションを刺激される話だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示