デカルト哲学の体系: 自然学・形而上学・道徳論

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  • 勁草書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784326101030

作品紹介・あらすじ

形而上学から自然学、道徳論に至るデカルト哲学の全体を論述。内在的論理と論証構造に留意し、堅固で体系的な解釈を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • デカルト哲学については、近代的な主観性の哲学を打ち立てたことが広く知られている。もちろんこうした理解は誤りではないが、このことだけを強調するのは一面的だ。デカルトは、みずからの形而上学によって近代の新たな自然学を基礎づけることをめざしていた。本書は、こうしたデカルトの意図に沿って彼の哲学体系の全体像を解説している。ほんとうのデカルトを理解するための確かな導きとなる本。

    第1編では、ドゥンス・スコトゥスの思想との比較を通して、デカルト哲学、とりわけその「永遠真理創造説」の画期的意義が明らかにされる。スコトゥスは神の意志を重視する立場を採りながらも、数学などの永遠真理が神によって創造されたという見解には至っていない。これに対してデカルトは、永遠真理をも他の被造物と同じく神によって創造されたと考えた。これによって、それ自体としては抽象的な存在でしかない数学的秩序が、被造物である自然の本質と同じレヴェルに位置づけられることになった。幾何学的延長が物理的対象の本質を「実在的に」構成していると考えられるのである。数学的自然学の可能性がこうして根拠づけられたと著者は考えている。

    他方、永遠真理をも神の創造と考えることは、永遠真理が恣意的であるという疑いを私たちに抱かせる。「欺く神」の想定をくぐり抜けて確立されるデカルトの形而上学とは、まさにこの疑いに答える議論にほかならない。

    第2編では、上のような方針に基づいて『省察』の議論がていねいに解き明かされている。とりわけコギト命題についての解説では、J・ヒンティッカ、M・ゲルーらの解釈を批判した上で、著者による解釈が説得的に提示されている。「私は有る、私は存在する」という命題が必然的に真であるのは、あらゆるものに疑いの視線を向ける方法的懐疑において、意志による行為遂行的(performative)な自己の説得行為がなされているときに、かならずその行為を内的に感知する「私」の存在が認知されるということを根拠としている。

    第3編では、『哲学原理』で提示されたデカルトの科学思想がていねいに紹介されている。私自身がこの分野にもう少し深い関心をもっていたら本書に★5つをつけていたかもしれないが、関心の薄い読者にとってはやや退屈な説明だということで、★を1つ減らした。

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著者プロフィール

神奈川大学附属中・高等学校教諭。情報教育担当。NHK高校講座「社会と情報」番組講師。共著書に『情報教育と国際理解』(日本文教出版)などがある。

「2020年 『完全対策 NTTコミュニケーションズ インターネット検定 .com Master BASIC 問題+総まとめ 公式テキスト第4版対応』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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