- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326601264
感想・レビュー・書評
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東京大学の博士論文をもとにした本。
内容は性・性欲に関する言説の形成、変容を言説分析・歴史社会学の手法で分析した。特にオナニーと性欲=本能or性欲=人格論の2つの言説について記している。
といっても返却期限が迫りパラパラとしか読んでいないので内容についてはあまり触れられないが、私の周りでは「性欲=本能」と考えている人が多い。これを性欲=人格というふうに論じるのは興味深い。時間があるときに再読しようっと。目次は以下の通り。
まえがき
[理論編]
第一章 セクシュアリティの概念定義をめぐって
1 「セクシュアリティ」という概念
2 <本質主義・対・構成主義>再考
3 ジェンダー、セクシュアリティ概念定義の本質的困難
4 セクシュアリティ概念の言語論的転回
5 無定義概念としてのセクシュアリティ
第二章 歴史社会学としてのフーコー
1 フーコー・インパクト
2 近代主体の系譜学――フーコーの研究遍歴
3 セクシュアリティの歴史
4 フェミニズムとフーコー
5 言説分析という方法
6 言説分析への援軍
第三章 セクシュアリティの歴史社会学の方法基準
1 社会学における、テーマとしての「性愛」の浮上
2 テクスト・クリティークについて
3 言説の「質」の問題
4 性愛の理論化
5 セクシュアリティと主体性の理論図式
6 日本社会診断の問題
7 セクシュアリティの歴史社会学への出立
[歴史編]
第四章 開化セクソロジーのエピステーメー
1 『造化機論』の登場
2 開化セクソロジーに対する評価
3 開化セクソロジー・ブームの全貌とその問題系
4 処女膜の近代
5 開化セクソロジーの情欲論
第五章 オナニー有害論の内発的発展
1 上野―小田論争で残された問題
2 開化セクソロジーにおけるオナニー言説
3 近代以前の日本社会におけるオナニー観
4 オナニー有害論の内発的発展論
第六章 オナニー有害論の言説化
1 開化セクソロジーとの断絶
2 医学界の成立と『東京医事新誌』誌上のオナニー論争
3 オナニー言説の領域分化
4 新興学界・版図拡大戦略としてのオナニー有害論
第七章 「性欲」の誕生と通俗性欲学のエピステーメー
1 「性欲」という概念
2 大拙の「性慾論」
3 通俗性欲学のエピステーメー
4 開化セクソロジーと通俗性欲学の断絶
第八章 制約のエコノミー問題
1 発動し、処理せねばならぬものとしての性欲
2 性欲のエコノミー問題
3 夫婦間性行動のエロス化
第九章 「強い」有害論
1 オナニー有害論に対する社会学的説明
2 オナニー有害論/無害論の恣意的線引き
3 「強い」有害論の言説編制
4 生きられた現実としての「強い」有害論
5 オナニー有害論のナショナリズム
6 性欲を統御する主体と修養・立身出世
7 オナニー有害論の階級/階層性
第一〇章 「弱い」有害論
1 「弱い」有害論の言説編制
2 「万病の基パラダイム」の終焉
3 オナニー有害性のラベリング理論
4 オナニーの規制緩和とオナニストの囲い込み
5 統計のトリックとレトリック
6 養生訓パラダイムとフロイティズムシンクレティズム
第一一章 性欲自然主義と性=人格論
1 性欲自然主義
2 もう一つの性欲論:性=人格論
3 性=人格論の源流1:恋愛至上主義
4 性=人格論の源流2:純潔教育
第一二章 性欲のエコノミーの変容
1 「セクシュアリティの近代」の階級/階層問題
2 澤田順次郎主幹・性雑誌の読者層
3 戦時期・戦後期の連続/不連続問題について[中間考察]
4 性欲のエコノミー秩序の完成態
5 オナニーの規制緩和
6 純潔/処女/童貞規範の変容
第一三章 オナニー至上主義とセックス至上主義
1 オナニー経験の変容
2 医学部内のオナニー必要論
3 オナニー言説の哲学化・文学化
4 オナニー言説の大衆化
5 オナニー至上主義とセックス至上主義
6 女性のオナニー論
7 性=人格論の分裂
第一四章 性欲のエコノミーから親密性パラダイムへ
1 オナニー有害論の生成と消滅
2 セクシュアリティに関する二つの意味論
3 同性愛言説の変容
4 性欲のエコノミー秩序の崩壊
5 親密性パラダイム
6 夫婦間性行動の脱エロス化
7 性=人格論という梏桎
註
あとがき
引用・参考二次文献
引用・参考一次文献
事項索引
人名索引
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/477587 -
「セクシュアリティ」、「性」、「性欲」などの単語があらわれる膨大な史料を18世紀末のものから戦後のものまで読み込み、それらが社会の中でどのように使われ、受け取られ、理解され、そして行為や思想に繋がって行ったのかを丹念に読み込み、そこからセクシュアリティ、特にオナニーに関する言説の「エピステーメー」の転回を跡づけようと試みた研究書である。
著者は視点や切り口の「華やかさ」ばかりが目立つ社会学の中に、地道な史料の読み込みという手法を確立しようと志したという。それが結実したのがこの433ページの大著である。
19世紀前後からの日本に於ける医学、文学などの専門書から市井の雑誌まで性や性行為についての言説が幅広く網羅され、明確に位置づけられているので、性や恋愛、結婚などについて研究する人は一度は目を通す事をお勧めしたい。しかし、でかいぶん読みにくい上に重いので、著者の取り組みには拍手喝采だが書物としてはなかなか難儀な一冊である。 -
遠山緑生先生推薦
エロとセックスから社会を見てみるシリーズ(3): 「日本の童貞」が面白いと思った人にお勧めしたい一冊。セクシャリティ研究という分野に興味が出たら是非。といってもこちらは専門書なので難渋するかもしれませんが、専門書にしちゃ読みやすいかと。