- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326701063
感想・レビュー・書評
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経済学の理論を学んでいく中で、なぜ理論はこれほど整然と記述されているように見えるのに、世の中に大きな政府派と小さな政府派がこれほど明確に分かれているのか不思議に思っていたが、この本を読んで疑問が氷解した。
そもそものところ経済学には支配的なパラダイムがなく、右派左派の経済学が異なる正しそうな結論を導くような環境にあり、それゆえ大資本が支持したい経済学が変化するごとに世の経済観が変化してしまう。
非常に根深い問題であり、うかつに「経済学は科学的」とは言い難くなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
需要不足のときにサプライサイドを促す政策は無人島での商売を強要しているようなもの。
再分配に反対するために、シカゴ学派のノーベル賞が続いた。スティングラーが経済規制は、公共善を促進するための規制を、利益集団を守るもの、という捕虜理論に切り替えて、攻撃対象とした。それが日本の規制緩和論を生んだ。必要なのは規制緩和ではなく規制の修正。
右側の経済学=主流派=供給重視、と左側の経済学=マルサス、ケインズ派。需要重視。
生産性には、物的生産性と付加価値生産性がある。最初は物的生産性を議論したが、今は付加価値生産性のことを議論している。いかに、労少なく高いものを売るか。
サービス産業化とは、スミスのいう非生産的労働が増えること。
7万円のベーシックインカムは、生活保護以下の人ができて生存権を保証しないことになる。
日本だけが、実質労働生産性が上がっても賃金が上がらなかった。利益を生産性の指標とすれば、賃金を削って利益を出すことがインセンティブになる。
ソローやクルーグマンは、成長戦略はないといっている。キャッチアップなら測定できるが、進歩は測定できない。
合成の誤謬=利益最大化のために非正規雇用を増やすと消費が減り、GDPは伸びない。
トリクルダウンは間違い=セイの法則が成り立たなければ、豊かさは下には落ちない。総貯蓄が多すぎると消費が過少になり、成長力は落ちる。
資本の蓄積に価値がある間は、所得の再分配は悪。
社会保障の主な役割は、防貧機能ではなく、厚い中間層を育てること。
シュンペーターは成長にはイノベーションの必要性を言っているが、具体的な方法は言っていない。ソローは、全要素生産性を「無知の計量化」と呼んだ。事後的に測るものであり、目的変数にはならない。産業政策は意味がない。
18世紀のイギリスのスピーナムランド制度では、それの存在のために、賃金が切り下げられることになった。この制度は、新救貧法として生まれ変わるが、より貧困層には厳しいものになった。
経済の不確実性を前提とすると、貨幣選好が増す。
貨幣を考えない(貨幣ヴェール観)貨幣数量説で考えるとお金を刷れば物価が上がる、ことになる。しかし貨幣選好があるため、貨幣のまま貯蔵される。
P51 -
入門書と銘打ちながらもかなり濃厚な内容で,一回通読しただけでは消化しきれそうにない一冊でした。これまでの経済学の流れを解説する理論編がこの本のメインだと思いますが,応用編で取り上げられている規範分析としてのQALYの倫理的問題については特に興味深い話題でした。
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東2法経図・6F開架 364A/Ke44c//K