- Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334033378
作品紹介・あらすじ
「ニート」とは、働かず、就学もせず、求職行動もとっていない若者を指す言葉で、日本では二〇〇四年頃より使われ始め、その急増が国を揺るがす危機のように叫ばれている。様々な機関が「ニート」の「人間性」を叩き直そうと「支援」の手を差し押べており、多額の予算が動いている。このような状況下において、本書では、まず、日本での「ニート問題」の論じられ方に疑問を覚える本田由紀氏が、「ニート」という言葉自体の不適切さを量と質の両面から明らかにする。また、『いじめの社会理論』の著者である内藤朝雄氏は、「ニート」が大衆の憎悪と不安の標的とされていることを挙げ、憎悪のメカニズムと、「教育」的指導の持つ危険な欲望について解説する。さらに、ブログ上で「俗流若者論批判」を精力的に展開し注目を浴びている後藤和智氏が、「ニート」を巡る言説を詳しく検証する。
感想・レビュー・書評
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もう刊行から12年が経過している。干支一回り。そして現在、確かにニートって言葉は聞かなくなってきた。その点のみをもってしても、本書で示されている内容に、相応の信頼が担保されているというもの。各所でネガティブキャンペーンが張られ、言葉のイメージだけがどんどん独り歩きってパターン、いつもどこかで起こってる。かくいう自分も、そんな流れに抗い切れない部分も少なくない。そんな自省にもかられなかがら、惑わされない目線を培っていく努力を怠らずにいたい。軽い題名に反し、深い内容の書でした。だから受けたのかな。
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3人の著者が、バトンをわたすようにして、それぞれの立場から「ニート」言説について切り込んだ本。問題意識としては「三者三様」という面もありながら、その中心点として「ニート」という言葉が析出するところに妙がある。
第一部の本田由紀のパートが、俗流「ニート」論のまやかしをわかりやすく示している。だいたいのところは
・統計で見れば、ニート(働く気がない若者)は増えていないし、以前からわずかである
・そもそもイギリスの「ニート」は、経済的に恵まれず低学歴な若者が社会から排除されるのを問題視するために生まれた言葉だった
・しかし日本では15~34歳までと対象が大きく拡大され、しかも「失業者」が除外されてしまった
・このことにより、日本では「ニート」問題が失業者対策から遊離し、さらに「ひきこもり」との同一視がすすんだ結果、つまりは「心の問題」であるとされてしまった
・「ニート」問題は、本来の就業問題としてとらえ直されるべきである
というあたりだろう。
この部分だけでよければ、前半の60ページだけで十分。あとは、「ニート」をダシにして、「職業教育」「いじめの心理」「若者バッシング」という3人それぞれの土俵へと読者をひきずっていくつくり。まぁ、それだけ「ニート」言説がかなりの広がりをもっているということだろう。
「近頃の若者は……」という言葉で耳が汚れたとき、解毒剤としてかなり効能が期待できる。 -
三人の著者が、それぞれニート問題の論点への疑問提起、誤ったニート論の産まれる社会構造、これまでのニート論壇の歴史検証について語っている。
そもそも曖昧な調査によって語られていたニートだが、その曖昧な調査データをもとに論点をひっくり返したりなどはある。
ただ、最近の若いものは、、というくだりで安直にニートとか言って本当の問題を曖昧にすんな、という事が徹底的に語られている。 -
ニートという言葉は、イギリスのNEET(Not in ducatoin、Employment or Trainjng)からうまれた言葉であるが、イギリスと日本における、その言葉の定義を見ていくと、年齢層と失業者で大きな違いがある。具体的には、イギリスでは16〜18歳を対象として失業者を含むが、日本では15〜34歳と範囲は広めだが失業者が含まれないとあり意外であった。
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経済学部 上野勝男先生 推薦コメント
『「ニート」という俗語を、社会科学的に冷静に分析したもの。世間で流行している言葉やイメージの鵜呑みは禁物。冷静に真の姿を探ろうとする態度が大事です。』
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/430428 -
ニートという言葉を疑い、問い直す。
社会学の魅力がよくわかる1冊! -
本田氏の「教育の職業的意義」、内藤氏の「マスコミ論・社会論」、後藤氏の「ニートをとりまく分析」それぞれベクトルが多少ずれている感があるが、面白く読めた。
感情的ともいえる内藤氏のマスコミ・メディア批判論調は、それはそれでよいが、ではどうすればよいかについては中途半端にも思える。
後藤氏は当時、現役の大学生でありながらたくさんの文献を読破し、調査し、そのレポートをされたという印象。主観的な意見はあえてかくすところは大学生らしくない。
本田氏の担当された内容は、この後に出版された新書「教育の職業的意義」のプロローグともいえる。賛否はあろうが、主張は一貫している。 -
ネガティブキャンペーンの話は秀逸
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そもそもニートって何?って話で、問題視されているのは“本来であれば、「ニート」という存在の中で、どのような特徴の人がどれほどいるのか、ということを定量化すること、そしてそれらを生み出す社会構造を、「社会が若者を甘えさせている」といった認識を超えて検証することで、やっと議論の入口に立つ。しかし我が国において爆発的に増大した「ニート」論は、そのような認識の入口に立たないまま、幻想のような言説だけが盛り上がりを見せてしまった。いわば、基礎を造らないままに高層ビルを建ててしまったようなものである。“ということなんだな~(本文一部引用/以下同)。まぁ、「ニート」に限らず何にでも当てはまりそうな気がするんだけど、なるほどと感じる箇所も多く興味深かった。
本書は大きく3部で構成されている。個人的には1~2部がふむふむという感じだったけど、3部はいろんな記事に対する意見などが中心なので印象は薄め。
自分のことを思い返したり、今のことをいろいろ考えたりする。また、やっぱりそうだよねとも。でも、だからこそいつも適当に受け流してしまっている自分がいたりするのかも。
「ニート」って言うな!…そりゃ、ニートなんて言えないよね。
(過去の読書記録登録のため評価なし)