日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか (光文社新書 404)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035068

作品紹介・あらすじ

児童精神科医として診察をし、学校現場からの相談も受けている著者は、「居場所がない」「疲れた」と訴える子どもたちと接している。そのような中、日本語の子ども版QOL尺度の開発に関わり、調査を行ったところ、多くの子どもたちが自分に自信がなく、自分自身や学校などの満足度に関する質問に対し、下から2番目の「ほとんどない」という答えを選択していることに衝撃を受ける。5段階の下から2番目が「標準」となっている日本の子どもたちの心の現状。ユニセフの調査でも、日本の子どもの主観的な幸福度は、他国と比べて突出して低いことが報告されている。本書では、調査結果や診療・学校現場での豊富な事例をもとに、自尊感情という視点から、子どもたちの現況を見つめ直す。

感想・レビュー・書評

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  • 「子どもたちには、プライドもあり将来もあります。
    大人の不安に振り回されずに、子どもたち自身がたくましく、
    目標、希望を持てるように支援することが大人の役目です。」

    こんなことを、本に書いてもらわなければ解らない大人たちの作った社会で育つこと自体が不幸だ。
    大人は皆、子供だったことがある筈なのに、どうして忘れちゃうんだろう。
    それとも、大多数の大人は、子供の頃、何にも考えない、ただ元気で無邪気な生き物だったんだろうか…。
    そうじゃなかった私が、今の子達のハシリだっただけなのか。
    私の周りにいたコドモ達は、もっとずっと繊細で明晰だった…ように見えたけどな…。

  • タイトルと本旨が違いますね。
    この本は、子どもの自尊感情が低いことによって起こる問題と、子どもとどう接したらいいか、ということが中心です。

    要約すると〜、

    現代日本の子どもは満足のいく生活が送れていないというデータがある。
    理由の1つに、自尊感情の低さがある。
    身近な大人の(主に親)過剰な期待で子どもに大きなプレッシャーを与えたり、虐待されたり、いじめられたり、過度に縛られ叱責されることが子どもの自信喪失に繋がり、自尊感情を貶める。

    自尊感情の低さは、子どもの非行や不登校、いじめ、自殺などの諸問題を引き起こす。

    叱るのではなく、褒めることが大切。子どもの自尊感情を育む教育を。

    という感じだろうか?
    もっと細かく大切なことを述べているけど…。

    確かに一理あると思います。
    自尊感情。

    全く、褒めて伸ばすなんて甘ったれてる、怒られてしょげる子どもは弱い、などという意見をお持ちの方もいるのでしょうけれど、時代はそういう風に流れているんですよ。
    そういう人に限って、「自分が子どもの頃は…」なんて意味のない対比をするんです。
    時代は誰のせいでもなく移り変わってゆくのだから、その中に偶然生まれ落ち、その環境社会に生きていくしかない子どもたちを責めることはお門違いというもの。

    子どもを責めるよりも、この混沌とした社会の中でいかに教育を行うべきかを考え、実践していく方がよっぽど有益だと思う。

    文科省とかのお役人さんがゆとり脱却だのなんだのって言って色々引っ掻き回しているけれど、教育最前線の状況を把握し、そこで動く教師や児童生徒の声をしっかり聞き入れながら、取り決めなどは行ってほしい。

  • 調査や臨床現場の様子を踏まえ、日本の子供たちの抱える問題を解説している。外国との違いや、子供の抱える問題の違いなど、ケースごとにわかりやすく解説している。日本の教育が抱える問題の大きさが伝わってくる。

  • 「自尊感情」って
    「ありのままの自分を受け入れ、良いんだって思う」こと。

    と解釈しました。


    いろんな切り口やデータから語られていたけど、
    「そりゃそうじゃん!!!」ってことばかり。

    もっと具体的に誰か解決できる人はいないの?
    だれか頑張っているの?

    なんて思いながら読んでいました。


    どう考えたって、この本に書かれた現実は悲しすぎるし、
    でも、最後の章に書いていた解決策も何か違うと思う。


    もう人と人の繋がりが壊れているのかなって思った。


    目と目を見て、相手の事を思って、
    本音を話して、ぶつかってっていうこと。

    いろんなものがありすぎて、
    シンプルにできない世の中なんだなって。



    だから私は、YAのワークショップが世の中に必要だと思うんだ。
    動かなきゃ。

  • 日本の子どもの主観的な幸福度は、他国と比べて突出して低い。 
    この現状に対して、児童精神科医の視点から診療・学校現場の事例を元に、本書を通して見つめ直していく。

    ✏自尊感情に影響を与える要因としては、社会的階層、人種、宗教などよりも、母子関係の緊密さ、両親の受容的態度、両親からの一貫したしつけ、子どもの意見・独立性を尊重する態度などが関与している

    ✏研究を行った研究者たちは、結果から、「日本人は、表向きは謙遜するが、本音では北米人と同様の自己評価を持っている」と結論づけている。

    ✏今の日本の現状では、小学校3.4年生くらいから自尊心が低下し始め、中学、高校とずっと下がりっぱなしになっていることが明らかになった。

    ✏オランダの子どもたちが自尊感情、学校生活に対して高い満足度を保っている理由の一つとして、一人一人の子どもが自分の発達に応じて個別の学習を進めることができる授業の仕組みが大きく影響してると考える

    ✏今後、子どもの健康状態をスクリーニングできるようにすること、そして、スクリーニングの結果を判断し支援に結びつけるシステムを構築する必要性があるだろう

    ✏わが国の現状として、「多くの国の労働市場からすでに消えつつある仕事の種類に適した人材育成を主に行っているというリスクを冒している」ことになる

  •  息子には自己肯定感の高い子どもに育ってほしいと思っていたが、無意識に自分の都合を優先して目標と逆行した行動を取ってしまっていたことを改めて反省。とにかく子どもは大人の付属物ではなく、1人の人間であることを忘れないこと。これに尽きるようだ。
     学校を閉鎖的な空間にしてしまわないためにも、地域や適切な機関と連携して育てることが必要だとか。『ぼくはイエローで〜』と共通している。
     虐待・ネグレクトに遭っている子どもの自尊感情が低いのはもちろん、教育に熱心な家庭の子どもも自尊感情が低いケースが珍しくないことにびっくり。

  • 特に子どもの主幹的な幸福度の中で、「孤独を感じる」と答えた子どもの比率は約30%と、他の国の5%〜10%に比べて突出して高い

    自尊感情とは、ハンディキャップなど全ての要素を包括した意味での自分を、自分自身で考えるということ。高すぎても良くない。

    自分を認めたいという思いを抱くという点では、文化や民族に関わらず共通であるが、事後報告式のテストで調べられる自尊感情は低い。本心を抑圧している傾向が強い。

    自尊感情の高い子どもは、情緒が安定し、責任感がある。社会的適応力が高い、成績も良い、人間関係のトラブルが少ない、社会規範をよく守る。逆境に強い。

    親が暴力行為や無視などで無力感を持って、その感情が処理できないと自分を大切にしたいというエネルギーが、より弱い相手である自分の子供に向くことがある。

    子どもが自尊感情を保つには、親の影響、とりわけ母親の影響が大きいと考えられています。本人の先端的な要因も研究されていますし、環境の影響もありますが、親にどう見られているかで価値を推し量っていることが多い。

    親がぴりぴりしていて、常に余裕がなく、子どもの心を受け止められなくなっている。

    自分を理解してくれる人間との巡り合わせが重要です。巡り会う人の言動が、危険因子にもなるし補償因子にもなりうるのです。

  • 自尊心の低さというものを、ベースに、
    現代の子どもを取り巻く学校、家庭、問題行動、発達障害等のことを現場に出ている経験と、研究のエビデンスをもとに考察していく本だった。


    要は子どもたちの声にもっと耳を傾けなくちゃいけないし、親自身も自尊心を高めにキープしなきゃみたいな話。
    どうしても今の日本は、先行きが不安とか分からないことも多い中で、少なからずそのピリピリ感を子供もそれとなく感じているのか。

     親も子供も自尊心を程よくあげたいっていうことには、もっと社会全体で親や子供が頼れる場所(心の拠り所)を作っていく必要もあるのかなとも思う。

  • 足りないのは、親の方だな。こりゃ。。



    ◇居場所がない眠りが足りない

    ◇元気な中高年、不安を抱える親世代、自信を忘れた子ども

    ◇QOLの原本はドイツ語。それを英語訳された。
    そこから日本語訳を作成した。
    英→日の翻訳

    ◇こどもへのテスト
    5段階評価の1と2「ほとんどない」「まったくない」
    のいかに多いことか

    ◇自尊感情は、小4から下がり始めている
    高1でピーク。高2でやや持ち直す

    ◇こどもへのアンケート
    「孤独を感じる」にYes が、 29.8 %
    オランダは、Yes が 2.9 %

    ◇親自身がぴりぴりしていた余裕がない

    ◇子ども達が求めているのは、スキンシップ

    ◇自殺は、10代の子どもの死因の第二位
    (一位は、不慮の事故)

    ◇子ども達は、大人が思っている以上に
    大人の考えを読み取っている

    ◇父親は、普段あまりこまかいことを言わなくても
    子どもが逆境にあるときに身を挺して守るのが
    その役目であるともいえる

    ◇こどものしつけ
    1度できたらかといって、すぐにハードルを
    あげないこと

    ◇日本は、世界でもっとも寿命の長い国

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著者プロフィール

青山学院大学教育人間科学部教授。昭和大学大学院医学研究科修了。医学博士。小児科医で、小児科と小児神経科専門医、児童青年精神医学会と小児精神神経学会およびてんかん学会の認定医資格を持つ。発達障害のほか、不安障害、てんかん、虐待、不登校・ひきこもりなどの分野で広範に臨床研究を行っており、約20編の英文、約100編の邦文の学術論文の報告がある。その他、雑誌等一般向けの原稿も多数。主な著書に『軽度発達障害と思春期』(明石書店、2006年)、『アスペルガー障害とライフステージ』(診断と治療社、2007年)、『新 小児精神神経学改定版』(小児医事出版社、2009年)、『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』(光文社新書、2009年)、『子どものQOL尺度 その理解と活用』(診断と治療社、2014年)などがある。

「2014年 『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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