難解な本を読む技術 (光文社新書 406)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035082

作品紹介・あらすじ

フロイトの「無意識」、デリダの「脱構築」、ドゥルーズの「襞」、フーコーの「生権力」、ナンシーの「共同‐体」、ジジェクの「否定の否定」…これまでに何度も齧っては躓いていた、錚々たる哲学者たちの思想を理解するには、どうすればいいか。本書はいわゆる難解な「思想書」を、読んで理解するために必要な技術を紹介。前半の章では、本のタイプの分類や、選書の仕方などの準備段階から、実際に本を読む方法と、同時に記録する「読書ノート」の取り方といった実践まで、基本的な読書の技術を学びます。そして、後半の付録には、学生による「読書ノート」記入例と、「代表的難解本ガイド」をつけましたので、読書の技術を具体的に理解できるようになっています。

感想・レビュー・書評

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  • タイトル通り、難解な本ということで、古典を読むことを主眼に置いてます。

    読書ノートについては大変参考になります。
    しかし、具体的に身につけるには、時間がかかりそうな方法ではあります。

    個人的には、書物を分類している箇所も参考になりました。
    登山型など。

  • 読書をするのに技術は必要か?⇒あった方が良い。では、難解本には?⇒必要。
    難解といわれる本にも人気があるようで、読み始めて、分からないのでやめてしまう。理解できなかったことが多い。読むための準備をして、スキルを少し身につければ、抵抗なく読み勧めて、理解しやすくなる。
    本には「閉じている本」vs「開いている本」、「登山型」vs「ハイキング型」、「外部参照」が必要なホンがあるという。また、読み方にも「同化読み」と「批判読み」があるという。
    本を決める。=知りたいことから始めるのが、効率が良い。本読みの方法、一度目:通読、2度目:詳細読み。読書ノートを作り、メモを取りながら通読する。本のタイプを推測する。2度目読みでは、わからなさの理由を考える。対処法が掲げられている。
    高度な読み、テーマに関する地図を作る。「包括読み」「縦断読み」「系統読み」「著者読み」、他の関連地図「関連読み」「平行読み」
    ・思想を「生かす」ということ
    ・知識の構造の中に位置づける「読まない」読書
    付録が、約半分を占める。

  • フロイトの「無意識」、デリダの「脱構築」、ドゥルーズ「襞」、フーコーの「生権力」、ナンシーの「共同 - 体」、ジジェクの「否定の否定」... 聞くだけで頭の痛くなる、超弩級の思想書をいかにして読み解くか。現代思想評論家の高田明典氏が、難書に挑戦するにあたって必要な技術を紹介しています。タイトルだけ見るとやや敷居が高いものの、本書は優雅な知的探求のための読書に始終せず、すぐに現ナマが帰ってくるような「必要になったときに、必要な知識を習得する」実践的な読書にも通ずる読書術です。

    長く語り継がれてきた名著は時代を超え、現代に通ずる力を持ってる。しかし「本読み」とは、単に先達の思想を学ぶという受動的かつ消極的な行為のことではない。テクストとして表現されたものを、現代に生きる人間が未来を創造するために再解釈し、再度その現代的意義を創造するという積極的な営みこそが「本読み」である。という高田氏の信条は、ビジネス書を読む私たちにそのまま当てはまる教訓のように思います。

    「本は10冊同時に読め!」では、目次をチラ見して自分のアンテナに引っかかる項目があればその本は買い!と述べられていましたが、本書で紹介されているのはその本を買うか否かの判断ではなく、テーマに沿ってある程度まとまった冊数を購入する際に有効な作戦です。最も参考になったのは「さらに高度な本読み」の章で紹介されていた、本の関係性を植物に例える考え方です。

    ある本は●他の知識や思想を土壌として発生したものであるという意味で「茎」であり、●この世界に大きく影響したという意味で「花」であり、●それに続く思想を育む土壌となったという意味で「根」であり、●その時代における要求を受け取り、それを養分に変化させたという意味では「葉」であると。単に入門編→初級編→中級編→上級編の順に読めというのではなく、各著の「根」「茎」「花」「葉」としての側面を知り、より大きな知識構造の中に位置づけて認識するという考え方に感動すら覚えました。

    ひとつ心残りなのは、建築学科の学生だった頃に本書に出会っておきたかったということです。建築学の本は、構造解析や設備設計の参考書といった実務に関する本を選ばない限り、おしなべて極端に抽象的に書かれています。著名な建築家のインタビューや講演にしても同様で、かなり独特な言語を使いこなしているため、通訳者泣かせということで有名なのです。

    大学で5年間学び3年間実務を経験した上で「独特な言語」と言っているようでは建築家のたまご失格なのは重々承知の上なのですが、●系統的な流れをふまえて選書をすべし、ということ、少なくとも、●一般的な文脈で使用される一般的な単語や概念も、著者の意図に沿ったかたちで「特殊な意味」を把握しなければならない、ということさえ意識していたら、ニガテな建築学の本にもっと惜しみなく時間を注いで咀嚼することもできたのになと思います。

  • 本選びが1番大事と著者は述べていたが、確かにその通りであろう
    この本は恐らく大学院生などを対象に、趣味ではなく、キチンと本を読む方法を提示している
    それ故、電車で難しい本を読みたい、なんて人にはおおよそ「面白くない」本なのだろう
    開かれた、閉じられた。ハイキング型、登山型。
    同化読み、批判読み。等々、なるほど。と思わされる区分けで、
    通読からの詳細読み、外部参照、読書ノートの取り方、など、100ページ足らずで今後の読書方法の指針を示してあり、ターゲットドンピシャの人にとっては大変有益であろう

    また、オマケの思想書紹介コーナー?も読んでいて面白く、今後読みたい、と思わせてくれ、また読書計画の足がかりにもなり、有益だと感じた

    ただ、やはり、読書は本選びが1番大事で、この本のターゲットはかなり明確に絞られているため、その層以外の人にはあまり面白くは無いのだろうな、とは感じた。

  • 藁にもすがる思いでこういう本を読んでいる自分がなさけないが、わからないままでいるのも嫌だ

    翻訳の思想系の本の読み方
    すらすら読めた
    「私にとって難しい本は私に必要な本でなく、私にとって必要な本は私にとって必ずやさしい」(加藤周一著『読書術』より)ということか

    読書ノートの取り方も参考になったが、読む本を選ぶ大切さについての「ダメな本なら読まないほうがいいというのでは不十分で、ダメな本を読むのは百害あって一利なしだ」という言葉印象に残った
    著者がいう通り「時間は有限」なのだから、いたずらに積ん読を増やさず選書に時間をかけるべきだと思った

  • 本書は、「難解」と言われている本を読み、きちんと自らの血肉にしていくための読書技術に関する本です

    簡単にいえば、
    ・本1冊につき、ノート1冊を使って、メモをとりつつ、考えながら読む
    こと、具体的には
    ・準備 本の選び方
    ・一度目 通読
    ・二度目 詳細読み
    ・同種類の複数の本を読む
    について説明がなされた上で、難解本の説明が付録として記載されています

    今は大量の積ん読をさばくので精一杯ですが、このような方法で1冊40時間以上かけて読む価値のある本を読んでみたいものである

    【準備】
    ・予備調査及び選書に相当
    ・目安時間 3時間
    ・本屋でその分野の棚を見て気になる本の目次や中身をパラパラ見る
    ・その分野の全体像をイメージしつつ、自分の読みたい本を購入する

    【通読】
    ・本の全体像を「読書ノート」に落とし込む
    ・目安時間 4時間
    ・本1冊につき読書ノートを1冊作る
    ・章・小見出しごとに区切り、章ごとにタックインデックスをつける
    ・余白を空けつつ、鉛筆でいろいろメモする(重要語、概念語、読みやすさ、重要文等)
    ・関係性、不明点等も分かるようにしておく

    【詳細読み】
    ・読書ノートを横において、不明点を解決するように考えながら読む
    ・目安時間 10時間
    ・不明点は立ち止まって読み飛ばさず、克服するよう繰り返して読む
    ・分からない理由をはっきりさせ、その理由によりその本の説明部分や他書等で確認する

  • 本を読んでいるときに感じることがある、「言い回しが難しくてうまく理解ができない」というような状況をなんとかしたくて読んだが、それをパターンごとに分け、それぞれの対処法を示してくれていたので個人的には大当たりだった

  • 著者の言う”難解な本”とは、いわゆる哲学書の類だ。付録2で取り上げられている難解本の著者には、デリダ、スピノザ、ウィトゲンシュタイン、ソシュール、フロイト、フーコー、ラカン、ドゥルーズ、ナンシー、ジジェクと並んでいる。確かにドゥルーズ『アンチ・オイディプス』やラカン『エクリ』は、もう二十年来書棚の肥やしになり続けている。デリダの『グラマトロジー』も何を言っているのかわからんと思いながらページを繰った覚えがある。でも一応『エチカ』、『論理哲学論考』、『精神分析入門』も読んだことがある。フーコーは『言葉と物』や『知の考古学』をはじめとして代表作はほとんど読んだし、入門書も結構読んでいる。もちろん著者が言うように「単に「読む」ことと「わかる」ことの間には、かなりの違いがある」というのもわかっている。たぶんこの本を読むくらいの資格はあるはずだ。もしかしたら最適な読者かもしれない。

    著者は、難解本に対して「開かれた本」↔「閉じられた本」、「ハイキング型の本」↔「登山型の本」という分類を導入する。まず、その本の特質にあった読み方をしなければ、「わかる」には辿りつかないという。例えば、「開かれた本」であるフーコーの著作を「閉じられた本」であるかのように読むことは間違っているという。また、読み方についても、その内容を疑わず著者の考え方に寄り添って読む「同化読み」と、著者の考え方に対して批判的な態度で読む「批判読み」の違いがあることも指摘する。また、テーマに沿って複数の本を選ぶにあたっても「包括読み」、「縦断読み」、「系統読み」、「著者読み」などの方法を提案する。これらはどれがよいというものではない。あえて意識をしたことはないが、自分の場合に照らしても、「意識・脳科学」、「遺伝・進化論」、「宇宙論・量子論」、「金融・経済」、「第二次世界大戦」、「経営学」、「司法システム」といったテーマに沿った本の選択や、高野秀行、森達也、高橋源一郎、村上春樹、柄谷行人、ジャレット・ダイヤモンド、リチャード・ドーキンス、サイモン・シン、ミシェル・フーコー、青木薫といった著者ベースの選択もあり、実際の行動として著者の言うことは実感できる。さらに、本の選択にあたって著者は、有名な書店の棚に並んでいる本を手に取って、目次を見て読むべき本や、読まない本を決めるという方法を推奨する。昔は、よく新宿の紀伊国屋や吉祥寺の啓文堂やブックファーストで同じことをしていた。最近はほとんどAmazonで済ましてしまうが、もしかしたら本読みとして大事な行動を失っているのかもしれない。確かに思い返しても有名な本屋の棚は素敵な棚も多い。今度、新宿に行ったら紀伊国屋に行ってみよう。

    本書のポイントのひとつは、読書ノートの作成にある。さすが難解本だけあって、読書の前に適切な紙数の大学ノートを丸々一冊準備することを勧める。なお読書ノートは、自分の頭の中に地図を作ることであるから後で見返すためにきれいに整理するのではなく、本を片手にラフに作ることで十分だという。もちろん、電車の中でそんなことはできないので、そういう人は記憶が新しいうちに家に帰ったらノートに書きつけることが重要だという配慮もしてくれている。昔、いわゆるここに出てくるような難解本を読み始めたときには、確かにノートを横に置いて興味を持った箇所や、よくわからないけれども重要そうな箇所を書き写していた。おそらくその行為は少しは「わかる」ために役に立ったのだろう。また、こうやって読み終わった後にブクログに書評を書きつけることも理解の定着にとても役に立っていると思っている。だからこそ、こうやって時間を割いて自分なりの書評を書いているのだけれど、あらためてそう書かれているのを読むと、そうだよなと思う。

    細かいところでは、翻訳本の場合は、訳者の解説が非常によいガイドになるとして、まずそこから読むことを勧めている。これについては、確かにその通りと思うので、早速次の本から実践しようと思う。

    「本読みとは、単に知識を吸収する行為を指す概念ではありません。テクストとして表現されたものを、現代に生きる人間が未来を創造するために再解釈し、再度その現代的意義を創造するという営みが「本読み」です」- そういう気概で読んでいきたいものだ。

    とりあえず、学生が作った読書ノートの例も収録されているが、これは無視してよし。それほど長くなく、エッセンスが詰まっているような本。付録2の著者の本をある程度読んだことがあるという人でこれからも読みたいという人には、付録2だけでもポイントが高いのでお薦め。

  • 読書論としては、普通のことをマメに分類して書いているだけといった印象。後半のデリタなどの具体的な著作をトレイスした箇所も、矢張り、先輩の講義には勝てないところがあるだろうという印象を受ける。独学論としては甘い。

  • 「読まない」本を選定する技術が個人的には参考になった
    著者は読書の技術の始まりを書店の棚見としていた
    著者にとって「読まなくてもよい」本を詳細に血肉になるまで読みこんでしまうことは、思考にゴミを増やしてしまい、悪影響を及ぼすのだと
    なので本書で紹介する「難解な本を読む技術」を使う際にはどんな本が今の自分に適切かを吟味することだと

    自分はこれを、amazonで紹介文とレビューを見て適当にカートをポチるなと読んだ
    そもそもが本書自体自分が求めていた本ではなかったからだ
    この反省点から、
    ①今自分が何を求めているのかを明確に把握した上で本を買うことにした
    ②購入した本はメモ帳に以下のように書く
     ・本をほしいものリストに入れた動機
     ・本の簡単な内容
     ・著者の目的と自分の目的の一致してるか
     ・購入後の結果

    選ぶ時間がもったいように思えるが、実際に本を読む時間の方が長いだろうし、悪くはない気がする

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著者プロフィール

1961年、東京都生まれ。早稲田大学教育学部教育学科教育学専攻教育心理学専修卒業。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻電子通信工学専門分野博士後期課程単位取得満期退学。フェリス女学院大学文学部コミュニケーション学科教授。著書に『現代思想のコミュニケーション的転回』(筑摩書房)『世界をよくする現代思想入門』(ちくま新書)『難解な本を読む技術』『私のための現代思想』(以上、光文社新書)など。

「2022年 『哲学史はじめの一歩』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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