人は、なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334035792

作品紹介・あらすじ

たとえば、約束の時間。私たち現代人の生活には、約束した時間通りに行動しなければならないことが数多く仕掛けられている。そして、約束の時間によく遅れる人は「だらしない」とみなされ、約束の時間を守る人は「几帳面」とみなされる。しかし、「だらしなさ」のせいで人は約束の時間に遅れ、「几帳面さ」のせいで人は約束の時間を守るのだろうか。私たちは、自分や他人の行動の原因について、日常的に「なぜ?」と問いかけながら暮らしている。本書では、そんな「なぜ?」を、描いて・視て・考える『視考術』という行動分析学に基づく手法を使って考察し、これまでとは違う角度から人間行動の本質を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 行動分析学。確かに、待ち合わせ場所までの所要時間を調べるタイミングが遅いかも。前日には調べようと反省した。

  • 行動分析学の類書(新書の入門書)と比較すると、題材や応用例を教育(特に発達障害)に絞っていないため取っ付きやすい。タイトルにもある「人は、なぜ約束の時間に遅れるのか」もその一つ。サラリーマンが仕事に応用しやすいのも本書。読みながら「トヨタ流のなぜなぜ分析に行動分析学、心理学の側面から妥当性裏付けを与えている」と感じた。
    一方で、独自の概念化が必ずしも分かりやすさにつながっていない。特に「視考術」は、思考ツールとして分かりにくい上に、メソッドとして固まっていないためにダメな分析のまま考察を進めても本人が気づいて直す手がかりがない。
    著者による分析事例はなるほど見事だが、いざ自分でやろうとすると手が止まる。何から手をつければいいのか。何を切り口にすればいいのか。何を基準にすればいいのか。逆にべからず集は。
    発想、心構えとして行動分析学を知るにはいい本だと思うが、ツールとして使うには甘い。

  • 行動分析学入門。ABCをより自由に描くことにより人間の行動と随伴する環境との環境を可視化し(本書では視考術と読んでいる),行動の原因を内的で測定が難しいもの以外にもあるという考え方を紹介する。個人攻撃の罠から脱する批判的思考につながる。
     成績がいいのはあの人が優秀だから
     部屋がきれいなのはあの人が几帳面な性格だから
     人の名前を覚えるのが苦手なのはもともと記憶力が低いから
    よく使うもっともらしい原因が本当に原因なのかを考察する。

    P.219自分とは行動を決める主体ではない。なぜなら,行動を決めるのは,遺伝的要因も含んだ過去と現在の随伴性だからだ。

    P.221行動が消去されると攻撃行動が自発されることが分かっている

    p.238プロの仕事は,感動や解釈を生み出す,事実や具体物の仕込みにある。これと同じように,行動のなぜを性格や能力や記憶や道徳心や意志のような見えない心の概念で説明してしまっては楽屋落ちと同じになる。

    著者の主張はあとがきで簡潔に記述されている。

  • 行動分析学。「だらしなさ」と「几帳面」で終わらせてしまってよいのだろうか?という話。なぜジベタリアンが増えたのかという話も、巷でよく言われる「道徳心の低下」というより、現代社会の様々な要因が重なり合って派生している点をあげている。日常でつい忘れがちな貴重な視座。

  • 人はなぜ約束の時間に遅れるのか
    人はなぜ約束の時間に遅れるのか、から始まり、今まで性格や県民性という、どちらかという個人の資質で片付けていた行動性向について、その行動を環境や行動を強化するであろう要因を探る事により原因を探る事を提唱する。
    個人の責任ではなく、行動を強化する要因や弱化する要因により目的の行動を目指す事を可能にしようとする。
    ほとんどの人が常識的に考えている事が実は真実ではないと気づかさせてくれる内容である。
    自分も、自分の行動について、自分の能力や性格を言い訳にするのでなく、目標とする行動を強化するための環境づくりを目指していきたいと思う。

  • 考え方はおもしろかったし行動分析学を知るという点では意義深かった。しかし、この本を読んだだけで様々な他の案件に応用するのは難しい。
    それと2010年出版なので災害等の実例が古くなってしまっている。また、トンデモなことが明らかになっている「江戸しぐさ」が取り上げられていることも今となっては好ましくない。


    人は、なぜ約束の時間に遅れるのか?
    「だらしない」でもなく「県民性」でもなく、時間を守って良かったという成功体験の欠如だけである。著者はこれを随伴性と呼んでいる。

    人は、なぜ血液型で性格を判断しようとするのか?
    誤りなのに血液型と性格との間に関係があると信じている日本人が多い。

    人は、なぜ傘を置き忘れるのか?
    「うっかり」「加齢」のせいでなく、雨が上がって濡れる心配がないときに、傘の存在を示す先行事象が傘を手に取るという行動を引き起こしにくいからかもしれない。

    人は、なぜ同じ過ちを繰り返すのか?
    《反省》すれば繰り返さないはず、ではなく、喉元過ぎれば熱さを忘れる。

    人は、なぜ公衆マナーを守れなくなったのか?
    例えば携帯マナーが悪いのは「モラルの低下」「道徳心の破綻」のせいでなく、車内での携帯の正しい使い方について見本を示されて練習する機会がなく、適切な振る舞いを強化する社会的随伴性が弱くなっているからかもしれない。

    人は、 なぜ災害から逃げ遅れるのか?
    訓練に違いない、誤報に違いない、他の人が逃げない。
    実現性は別として提案。訓練と区別化する、誤報をなくす、逃げる人を用意する。

    人は、なぜ騙されるのか?
    『行動の慣性』高反応率で維持されている行動には《慣性》がつき多少の抵抗があっても維持されるように作用する。
    不安を煽る情動操作と真偽を曖昧にする先行事象の操作


    行動を引き起こさせるには、随伴性を強化すべき。人の意思の強さを強化するのではない。
    例えばトイレ。ポスターによるキレイに使おうというお願いと、小便器にハエの絵が描かれている場合とが比較されている。両者共に後続事象はトイレが汚れないこと。
    ところが、後者の方が自分の「意志」に沿って行動していると感じるのだ。
    意欲的に取り組ませるには、「自分の意志で動いている」と思わせることが大切。

  • 行動についての「なぜ」を、行動分析学に基づく「視考術」という手法で考察する、という本。ものすごく勉強になった。

  • 著者の提唱する、行動の原因を考える際に行動随伴性を視覚化する「視考術」を使って様々なケースを分析している。
    行動の原因を個人の性格や考えからではなく、周りの環境から分析する方法はすごいなと思った。
    だが個々のケース分析はなんとなく主観的な気がしてピンとこないことが多く、さらに江戸しぐさが失われた分析が始まり以降読み飛ばしてしまった。

  • 性格、道徳心といった、一見すると行動の原因と思われるものは、あくまでも状況の言い換えに過ぎない。

    ある行動は、先行事象や、後続事象による強化や弱化(随伴性)によって生じる。

    筆者の言葉を借りれば「行動は随伴性そのものによって生じる」のである。

    性格や道徳心の有無ではなく、行動の前後の環境が行動を決定すると考えることは、現状を改善するという建設的な思考を促すことになる。




  • 大学1年生の入門ゼミにいいかなと思ったけど,2010年なので2021年は在庫なし重版予定なしで,泣く泣く断念。
    地震の際の防災行動の話がけっこう出てくるのだけど,東日本大震災の話が出てこない(2010年発行だから当たり前)ところにちょっと違和感を覚えるので,テキストにはしないでよかったのかもしれない。江戸しぐさとか例に出しちゃってるところもあるし,

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著者プロフィール

法政大学文学部心理学科 教授
/日本行動分析学会 理事

「2019年 『応用行動分析学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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