個人美術館の愉しみ (光文社新書)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334036492

作品紹介・あらすじ

個人美術館の愉しみは、近現代を彩る芸術家たちの足跡を眺められること。もう一つの愉しみは、その作品の山を築くことになったコレクターの、熱情を見ること。大金を投げ出して手に入れた人の熱情が並ぶと、その熱を通して見えてくるものがある。日本にある、魅力ある個人美術館を厳選。赤瀬川さんが紡ぐ46の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 赤瀬川さんの文がいい。最近、美術館のオススメ本をたくさん読んでたけど薄くて物足りなかったので、嬉しい。じっくり読めるし、遠くて行くことがなかったとしてもこの本を読むだけで満足。

    美術館ごとにつけたタイトルも素敵

    p215 山口蓬春記念館 @葉山
    画家と建築家による幸福な建物

    この場所に家を見つけ、あらかじめ五十八に見てもらい、ここなら手を入れればいいものになるといわれ、きっちりと増改築をした

    このことでもわかるが、二人の間には強い信頼感があり、感覚を共にするものがあったようだ

    →建築家 吉田五十八と、蓬春との信頼関係が素敵
    →記念館の名前が記されたガラス板がおしゃれ


    p236 上原近代美術館 @静岡県下田 

    コレクションが増えて美術館構想が浮かんでくると作品揃えも網羅的になるのだろうが最初はやはり「これが好き」から始まりそれを自宅に飾って眺めていたそうだ。

    絵の場合、それが名画といわれるものの場合には、他に数あるものではないし、美術史の中での公共的な意味合いも帯びている。自分が見て楽しむだけでなくその楽しみを世の中に還元したいと思う

    →松方コレクションを知ってから、美術館をつくった人のお話がとても好き。


    p256
    アンリ・マチス
    『リュート』
    →北欧っぽくて好き

    p286 大原美術館 @倉敷市
    (創立者の)孫三郎は柳宗悦たちの民藝運動も応援していて、東京駒場にある日本民藝館も孫三郎の出資によって建てられている
    →必ずといっていいほど柳さんにつながるのが素敵。この時代最高すぎる。

    ☆☆

    P48
    植田正治の写真は上品なカステラみたいだ…きちんとナイフを入れた綺麗な立方体が、白い皿に載って紅茶と一緒に出てくる感じ。無駄なくシンプルで、あまりにも正統な三時のお茶にこちらも思わず姿勢を正しそうになったりする
    →食べ物に例える


    P45
    浜松市秋野不矩美術館
    ここで藤森さん
    美術館をつくってもらったときの様子がリアルにみえた

    P34駅や町からは離れた環境なので来館者は少ない
    でもそれにめげず、というよりこの創立者の気持を残すために毎朝草を刈り、床を拭き、窓を磨き、人が来ようが来まいがせっせと空気を入れかえている

    訪れたくなる描写

    P30
    それまでつかみどころなく遠くにあった絵の世界が、値段を知ることでその位置がずっとわかった。え、そういうことだったのかとバリアの一角がぷつんと破れて絵の世界が流れ込んできた瞬間だろう

    絵を知る楽しみの過程

    P28
    こんなに着々と準備する美術館の作り方もあるんだね

    P20
    個人美術館の面白さはその作品の山を築くことになったコレクターの、熱情を見ることにあると思う
    絵の魅力というのは人によってなかなか見えてこなかったりする。でも、それに心酔して大金を投げ出して手に入れた人の熱情が横に並ぶと、その熱を通して見えてくるものもある

    P24
    見ていて飽きない絵というのは筆の流れが演奏として味わえる

    P28
    龍子は早くから会場芸術ということを標榜し〜略〜でもこんなに大きい絵はまず売れない。だから〜略〜早くからその自作品を見せるための美術館を構想し、それを実現した。

    大田区立龍子記念館

    P52こんな作り込みできるのすごすぎ

  • この本きっかけで旅に出かけたい。
    所蔵美術品の説明も良いけれど、館内をぐるりと見回した様な赤瀬川先生の語り口が素敵。

  • 行ったことのある美術館にはにやにやし、建築や佇まいの素晴らしい美術館には感心し、ぜひ足を運びたくなる。

    1.足立美術館
    2.大田区立龍子記念館
    3.何必館・京都現代美術館
    4.植田正治写真美術館
    5.細見美術館
    6.大津市立三橋節子美術館
    7.玉堂美術館
    8.神戸市立小磯記念美術館
    9.出光美術館(門司)
    10.河鍋暁斎記念美術館
    11.鎌倉市鏑木清方記念美術館
    12.大塚国際美術館
    13.メナード美術館
    14.DIC川村記念美術館
    15.笠間日動美術館
    16.アサヒビール大山崎山荘美術館
    17.山口蓬春記念館
    18.大原美術館

    まだ行ったことがなく、今後ぜひ行ってみたいところを書き出すと18もありました。有名なところも今回初めて知ったところもあり、個人美術館て面白いなあ。

  • 美術館巡りに行きたくなった。図版も多い。静かな美術館をゆっくり見まわるような赤瀬川さんの語り口が素晴らしい。

  • 美術

  • 優良新書。国内の45の個人の狂おしい愛情によって作られた個人美術館がタップリと写真付きで紹介される。赤瀬川原平のナビゲートも、画家としての実感の隠ったもので、単なる表面的な画家や美術館の紹介に終わらないことろがとてもよい(赤瀬川原平の美術紹介本は他の本も愛読している)。
    以下、備忘を含めて、興味を持った美術館
    ・松本俊介を多数所蔵する大川美術館
    ・ある絵に狂信的に魅せられ、手も入れてないのに、その絵を頂とする凝りに凝った建設してしまった何必館・京都現代美術館
    ・熊谷守一記念館
    ・イサム・ノグチ庭園美術館
    ・桂離宮よりアメリカ人に人気の庭園を有する足立美術館
    ・建物が素晴らしくモネの睡蓮もあるアサヒビール大山崎山荘美術館
    ・所蔵がピリリと素晴らしい、メナード美術館、ひろしま美術館

  • あんまり頭に入ってこなかったんで、すげー飛ばし読みしてしまった。
    でも、いくつか行ってみようと思う美術館は見つかった。

  • 行ってみたくなる個人美術館の数々。
    小さい本だからアレだけど、写真が小さいです。

  • 今年の8月くらいに図書館で借りて読んでいた。
    すでに訪れたことがある場所も、これを読んで初めて知る場所もあった。
    (地元のよく行く美術館が紹介されていたのもうれしかった)
    その後ぽつぽつ実際に訪れた場所もあった。
    読んだから行こうと思ったわけでもなく、気になる展示が丁度やっているなあ、そういえばあの本に載ってたなあ、という感じで、再度本を借りたりもした。
    読んだのち、結果として活用につながった本。
    そういうのが私は好きだ。

  • 請求記号・706.9/Ak
    資料ID・310006017

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著者プロフィール

赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)
1937年横浜生まれ。画家。作家。路上観察学会会員。武蔵野美術学校中退。前衛芸術家、千円札事件被告、イラストレーターなどを経て、1981年『父が消えた』(尾辻(★正字)克彦の筆名で発表)で第84回芥川賞を受賞。著書に『自分の謎(★正字)』『四角形の歴史』『新解さんの謎(★謎)』『超芸術トマソン』『ゼロ発信』『老人力』『赤瀬川原平の日本美術観察隊』『名画読本〈日本画編〉どう味わうか』。また、山下裕二氏との共著に『日本美術応援団』『日本美術観光団』『京都、オトナの修学旅行』などがある。2014年逝去。

「2022年 『ふしぎなお金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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