世界は「ゆらぎ」でできている 宇宙、素粒子、人体の本質 (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037437

感想・レビュー・書評

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  • 最近の物理学では最小単位はヒモであるらしい。
    ゆらぎ方が違うだけとか。
    宇宙から素粒子、人体まで、「ゆらぎ」を切り口にわかりやすく面白く読ませてくれる。
    非理系の自分でも楽しめた。

    面白いと思ったのは、「うつ」に関する新説。
    何かとネガティブにとらえられるうつ病は人類が生き残っていくには実は有効な手段だった。

    一見ネガティブな事柄が実はある面ではプラスというのはよくあることである。
    そしてその反対も。

  • 久しぶりに「これあたりだ」と思えた新書です。
    不必要に深い部分には入らずに感覚的に分かりやすいラインかつ
    幅広い知識を一貫した視点で描いています。

    「ゆらぎ」という言葉をきくと知識の狭い私が思い浮かべるのは
    「超ひも理論」ひいては宇宙の話あたりだが、
    本書は同じ「ゆらぎ」を切り口に人体(人間の認識や、医学的な観点)
    にまで触れているところがおもしろい。
    小さな素粒子はゆらいでいる、大きな宇宙もゆらぎからできた、
    等身大の生命体もゆらぎながら上手に平衡を保っている。
    「ゆらぎ」をテーマにすることで、
    人類の知が「常に一定」から「ゆらぎながらも調和」に
    移り変わってきた歴史も感じることができる、良著だ。

    個人的にはサイモン・シンの『宇宙創成』をあわせて読むと
    良いかなと思います。

  • 726

    パチンコ玉をイメージすると理解しやすいでしょう。学生時代、物理学で学んだことをパチンコに応用し、大勝ちしていた強者の同級生がいまし


    国家や民族の誇りを、領土争いなどの狭小なナショナリズムに 委ねるのではなく、科学研究という人類全体への貢献で競い合うというのは、社会のあり方として実に健全です



    古典物理学は、日常生活のレベルでは物理現象を説明するのに完璧だと思われていました。しかし、ミクロの世界や強力な重力が働く世界で起こる現象については、説明できませんでした。このポッカリと空いた穴を埋め合わせることに成功したのが、量子論と相対性理論なの


    私たちがふだんの生活で揺らぎを意識することはほとんどありませんが、それは、この世界の表面上しか見ていないのかもしれませ



    だから、宇宙の初期に揺らぎがなければ、どんな形であれ、生命も存在できるはずはありません。当然、私たち人類も誕生することはなかったわけです。私たちの命は、宇宙の揺らぎをもとに成り立っているということ



    こうして、原子1個くらいの大きさで誕生した宇宙は、一瞬にしてサッカーボールくらいの大きさになり、さらに一瞬にして地球くらいの大きさに、またさらに一瞬にして太陽系くらいの大きさに急速に拡大しました。  このあたりの大きさになるまでは、宇宙はエネルギーのかたまりでした。あまりにも高エネルギーだったので、物質は存在できなかったのです。それが、宇宙の膨張によって温度が下がり、エネルギーが物質に形を変えていったわけ



    1/fの揺らぎの面白さを本質的に理解するには、まずは フラクタル幾何学 の基礎を理解しなければなりません。  幾何学というのは、図形を扱う学問です。一方、揺らぎというのは、時間的な変化によるものです。図形と時間は無関係なので、いったい何のつながりがあるのか不可思議に思われたことでしょう。しかし、両者には深い関係があるの



    複雑なシステムを分析する上で役立つアプローチのひとつが、フラクタルなのです。雲の形も海岸線の形もあまりにも複雑なので、そのまま数値化するのは困難です。しかし、自己相似性に着目すれば、一定の分析が可能


    私は臨床医としては心療内科を扱っています



    しかし最近になって、実はうつ病さえも、人類が絶滅を避ける上で大切な役割を果たして



    しかし、一族の中で一定の割合でうつ病の患者が生まれるようにしておくと、伝染病が流行している時期に他人と接触を持たないため、感染を避けることができ



    うつ病というのは全面的に悪いものではなく、人類が絶滅を避けるために役立ってきたものだということを知ると、うつむいていた患者さんも顔を上げ、晴れやかな表情を見せてくれ



    人は誰でも、心が明るく前向きになることもあれば、心が暗く後ろ向きになることもあります。私たちはなんとなく前者が良いことで後者が悪いことだといった先入観にとらわれがちですが、これが間違っていることが明らかになってきまし



    さらにフレドリクソン博士らは、楽観的になる時間と悲観的になる時間の割合がどれくらいが最も望ましいかについても研究を行いました。その結果、両者は3対1の割合が理想的だという結果になったのです。やはり、楽観的である時間のほうが長く必要になるというのは、世間の常識と一致していますが、全体の4分の1の時間は悲観的であるべきだということも見逃してはいけませ



    良いことがあればついつい浮かれてしまう。良くないことが起これば落ち込んでしまう……。こうした心理的な揺らぎは、人間の弱さの象徴のように世間では考えられています。でも、こうしたとらえ方は、少なくとも脳機能の評価としては間違いです。ホモサピエンスがアフリカの大地に誕生してから 20 万年にわたって絶滅を回避し、さらに地球上のありとあらゆる場所に進出できた人間の強さは、むしろ、心理的な揺らぎに支えられていたからだと言えるの


    私たちは、無意識のうちに、性格が明るいことが良いことで、性格が暗いことは悪いことだという常識にとらわれています。しかし、様々なタイプの患者さんと接する中で、私は、こうした常識が本当に正しいのか疑問に思うようになりました。  重度のうつ病の患者さんは別ですが、メンタル面で軽いトラブルを抱えた患者さんの中には、一見、ものすごく明るい性格に感じられる人が少なくありません

  • あ、面白かったな。
    本当にほとんど数式使ってないので、多分厳密でも性格でもないのだろうが、わかりやすい。
    本当に、量子力学から、1/fのゆらぎ、うつ病も人類が生き延びる戦略の一つだと、ゆらぎといえば何でもいいのかよと言う展開。
    でも、とんでも感はあんまり無いし、なるほどなあと言う感じ。
    超弦理論、初めて少しだけ理解できた気がする。

  • 二重スリットの実験は、電子のゆらぎを見る実験。
    電子は、「そこにある」という確率でしか表せない。
    ブレーンワールド。超ひも理論。量子論
    フラクタル幾何学と1/fのゆらぎとの関係
    コッホ曲線。自己相似性。

    なぜ、同じ雲、波などを認識出来るのか?
    時間に関する自己相似性。
    心拍、電車の揺れ
    再現性がない実験。
    データの価値は、それをどう読み解くかにかかっている。

    現象が現れるメカニズムを理解する。
    複雑系:複雑なシステムを研究する学問

    3体問題
    要素が3つになると、ほとんどの場合、厳密に計算できなくなる。あくまで近似値しか出せない。

    カオスとは?
    不規則なだけに思える複雑な数の変動
    物事は、安定しているのが基本という先入観を捨てることで、現象の本質が見えてくる。

    1日24時間のリズムを「サーカディアンリズム」という。概日リズム。

    人体も心も、調和を持って揺らぐからこそ、変わりゆく環境に柔軟に対応できる。

  • 正しい意味の1/fゆらぎ、フラクタル(自己相似)、超弦理論など、数々の興味深い分野を「ゆらぎ」をキーワードに渡り歩き、かつ読みやすい。
    好奇心旺盛な人にはオススメ。

  • 光や電子が波であり粒子であること、陽子や中性子の構成要素であるクォーク、昨今話題になったヒッグス粒子、4つの力、超ひも理論といった素粒子物理学や、ビッグバン時にちょうどいい程度の揺らぎがあったため宇宙は現在のように恒星ができ、惑星ができたこと、人体におけるゆらぎなどについて説明されていた。 私的には、この本を読んでようやく超ひも理論がどういう理論かがわかった。他の本だといまいちピンと来なかった超ひも理論であるが、ひもの揺らぎ方や余剰次元について、わかりやすい図と説明があったのでよくわかった。

  • ゆらぎをキーワードに宇宙という大きいものから素粒子という小さいもの、また脳や身体について解説されています。
    それぞれが超濃厚な内容なのですが、さらっと分り易いように書いてあります。
    ここを入り口にそれぞれ気に入った分野へ更に深く進むといいですね。
    この本を読むことで、最低限のオトナの常識を手に入れたようです。

  • ミクロ世界から宇宙までに現れる「ゆらぎ」について、おそらくは非理系向けを意図して書かれている。個人的には主に「1/fゆらぎ」とは何だったのかを振り返りたくて読み、読んでいるうち「世界はべき乗則で動く」(書名不正確かも)を思い出した。あわせて読むといっそう興味深いのではないか。

  • 宇宙論とか素粒子とかを扱った新書は沢山あるが、ゆらぎというキーワードでまとめてあるのが面白い。

    特に人体のゆらぎに触れられた5章の内容が興味深かった。心臓の鼓動もゆらぐし、しかもそのゆらぎは肺や頸動脈、腎臓の影響を受けているとは。

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著者プロフィール

医学博士・心療内科医師。本郷赤門前クリニック院長。新宿ストレスクリニック顧問。1964年生まれ。灘高校、東京大学卒業。東京大学大学院医学博士課程を修了。現在、脳科学とメンタル医学を活用した診療に携わる一方、TV・ラジオ・雑誌・WEBなどメディアに多数出演中。

「2019年 『「ついつい先送りしてしまう」がなくなる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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