テキヤはどこからやってくるのか? 露店商いの近現代を辿る (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334037956

感想・レビュー・書評

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  • タイトルに惹かれて思わず手に取ったものの、読んでみると失敗だった。
    筆者はテキヤ集団の東京会(仮名)を巡るフィールドワークを行い、2008年に博士論文としてまとめ、その一部を『テキヤ稼業のフォークロア』として出版したそうだ。
    そんな本をテキヤさんに見てもらおうとしたらしいが、気軽に読んでもらえなかったので、テキヤさんにも楽しく気軽に読んでもらえる安価な本を作りたくて出来たのが本書らしい。
    しかし、とても気軽に読めたものではない。文体のせいなのか、どうも調査したものを上から目線でとらえているように感じる。またなわばりを示した図の意味もよくわからない。説明があるにはあるのだが、図との関連性、網掛けや点などの凡例の説明がまったくない。
    さらには参考文献の一覧もないし、これでお金を払って買う人がいるのが驚きだ(あ、自分か)。

  • タイトルの答えは「地元に住んでいて近所から来る」。
    たいていの露天商は地域の同業者組合に所属しており、組合のなわばりなどの兼ね合いもあって遠征勢や一匹狼はかなり少ないらしい。

    本書をとおして、テキヤの神農皇帝信仰や「一人前」「本家分家」「親分子分」の制度、一人前になる際の儀礼・ダイメ(代目披露)の存在など、外部の人間ではなかなか知ることのできない情報が得られた。

    正直気になっていたテキヤとヤクザとの関係も述べられていた。中には暴力団系の人間もおり、あるテキヤさん曰く『ヤクザ3割・商人7割』とのこと。
    ちなみに、暴力団系テキヤが警察を遠ざけるのに対して、真っ当な露天商は書類申請に関しては意外なほどマメ。
    その土地で長く商いをするためにはお役所や警察と良好な関係が必要不可欠なことをよく理解している、という話には納得できた。

    また、非合法の闇市をスムースに運営するためにむしろ警察の許可を取ろうと動いていた商人集団がいた、という話が興味深かった。

  • こわいものしらずの素朴な女の子がテキヤのおっちゃんにまとわりついてお話をせがんでいる絵が浮かぶような、邪気のない好奇心を感じる面白い本だった。
    神農さんて露店商の神様だったのか~とか、ナワバリが必ずしも自分の周囲とは限らず飛び地に通っていることもあるとか、独特な様式を備える口上とか、知らなかったことがいっぱい。

    P74 香具仲間の愛嬌も薬のうち。今風に言うなら、カワイイものも人を元気にしてくれる

  • 社会的職業集団のあり方として露店商(テキヤ)に興味を持った次第。そういえば、彼らはどこから来るのだろう?「さきに結論を述べてしまうと、大半は近所からやってくる。」。口頭伝承のため、書面として残りづらい。

    <目次>
    はじめに
    第一章 露店商いの地域性
    第二章 近世の露店商
    第三章 近代化と露店 − 明治から第二次世界大戦まで
    第四章 第二次世界大戦後の混乱と露店商 − 敗戦後の混乱期
    第五章 露店商いをめぐる世相解説 − 1960年代以降
     ? 親分子分関係
     ? なわばり
     ? 口頭伝承と文字による記録
     ? テキヤは特殊なのか
    おわりに

    2014.04.22 新書巡回で見つける。

  • ☆??

  • 祭と言えば屋台。屋台と言えばテキヤ、露天商。小さい頃から身近にあったがその実態についてはよく知らなかった存在に関する研究。口頭伝承され文献が少ないがゆえ関係者への取材も多く実施しての学術的研究論文を読みやすい書籍にしたような。

  • 露天商独特のナワバリや信仰のネットワークについて。祝祭空間でしか可視化されない彼らは民俗学のフィールドから社会学的に概括しようとした新書。戦後闇市の編制に伝統的な地域の露天商がネットワークを使いながら流通を担っていったというプロセスや親分が横のつながりを持つことで不測の事態にも対応できる組織的集団であるとか社会ネットワーク的に面白い。確かに「3割ヤクザ」なんだろうけど震災とかでも彼らの流通網が役立ってきた側面がある。

  • 読んでもやはり謎につつまれている。

  • うん、思ってたのとちょっと違った。
    テキヤという存在を知りたかったが、入口についてあまり言及はなかった。
    いわゆるヤクザモノとの関わりをもっと知りたかったのだがな。

  • テキヤ。
    古くは江戸期より、香具師、テキヤ、露天商(露店商)などと呼ばれる。

    イメージしやすいのは、祭りの縁日で、焼きそばやお面を売ってる彼らだ。

    商人七割、ヤクザ三割と呼ばれる、極道ではなく神農道の彼ら。
    そんなテキヤを文化人類学、社会人文学、民俗学的見地から考察した一冊。

    非常に興味深い一冊でした。
    GHQが蔓延った時代、また、戦後闇市での独自のネットワークなど、感嘆もの。

    近年では暴対法やら道交法やらと、法律や倫理が力を持っているが、そういった権力が肥大し過ぎると、地域に根ざす文化が衰退するのだな、と。
    そして、それぞれの地域ではそれらを黙認し受け入れる許容がある、と。それが、庶民の楽しみであり、文化の醸造だと。

    明日は、墨東地区に足を運ぼうかな。

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著者プロフィール

1975年、東京都墨田区生まれ。博士(文学/総合研究大学院大学)。日本学術振興会特別研究員を経て、慶應義塾大学文学部、立教大学文学部、神奈川大学経営学部非常勤講師。国立歴史民俗博物館外来研究員。

「2012年 『テキヤ稼業のフォークロア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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