ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか (光文社新書)
- 光文社 (2022年1月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334045869
感想・レビュー・書評
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渋井哲也『ルポ 座間9人殺害事件 被害者はなぜ引き寄せられたのか』光文社新書。
座間9人殺害事件を再検証するルポルタージュ。
普段は文庫を中心に読んでいるのだが、たまたま書店で目にした新書のタイトルが気になり、手を伸ばした。
2017年に発覚した僅か2ヶ月の間に9人もの若い男女を殺害し、遺体を損壊した上で自宅アパートに遺体をクーラーボックスに保管していたという類い稀なる猟奇的な犯行。犯人がSNSで被害者を選定していたという恐ろしい事件の詳細が犯人との面会を含めた綿密な取材により浮かび上がる。
誰もが匿名で自身の心中を吐露できるSNSは悩める者にとっては精神安定剤のような役割を果たす反面、使い方次第では犯罪を誘発する劇薬ともなり得る。こうした劇薬としてのSNSを利用したのが、座間9人殺害事件の犯人である。
自殺願望を持つ精神的に不安定な若い女性は与し易いとSNSで若い女性を物色した上で巧みに誘い出し、金銭と性的な快楽を求めた挙げ句の凶行。一度箍が外れると感覚が麻痺したかのように短期間で同様の凶行を繰り返すという悪魔のような所業。死刑判決は妥当であるが、失われた9人の尊い命は還らない。
本体価格820円
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5年前の秋、座間で9人が殺され切断されるという事件がありました。
私は昨年小野一光さんのルポを読んで
「被告と両親との関わりがわからない」と思いました。
今回渋井哲也さんのルポを読むと、
特別変わったことのない、普通の家庭に思われました。
ですから、犯人については相変わらず、わからない。
女の子がこういう被害に遭わないためにどうすればいいか
それを考えるしかないと思いました。
まず、よくわからない人と二人きりになってはいけません。
いつでも逃げられるようにすること。
優しい人に見せるのは簡単、騙されないように。
それと、被害者にいくつか母子家庭が目につきました。
もちろんシングルマザーでもちゃんとした家庭はありますが
人一倍子どものことを考えてほしい。
お金のない人が詐欺にあってより貧乏になるみたいに
心の弱っている人は変な人に騙されやすいのかしら。
私の思いは彼女たちに届くでしょうか。 -
希死念慮なんていう言葉は、本著で久々に目をしたが、前に何で読んだかも分からない位、日常に馴染みがない。自殺願望が衝動的か否か、出会いの時間軸で揺れる被害者の感情に関わらず、一方的に強制性交して殺してしまう。手慣れた作業のようにノコギリで遺体を解体し、クーラーボックスにしまうのだ。目的は金と性欲。死にたいという発言を論拠に、あなたの命は私の自由だ、と。死神のような振る舞いにも見えるが、真相はどうだったのか。
著者が取材し、どうも歯切れが悪く書けていない行間があるような気がしてならない。何となくその一部が伝わるのは、被告である白石隆浩が自分に不利になる証言を平気で説明したり、部屋の悪臭の対処や足りない骨の数などに説明が不足している事。平凡な育ちの彼が何故、という文章もあるが、これに関しては、特殊な育ちをした人が皆犯罪者にならない事と同様程度に、平凡な殺人鬼がいてもおかしくはない。ただ、ネットでは臓器売買疑惑なども書き込まれていて、著者は流石に書きはしないが、真の背景を隠したと匂わせる。
著者として最後のこの一文はありやなしや。取材の限界を、その疑惑に触れもせず、一つも証拠を出さずに読者をミスリードするという点では、残念だという一言である。臓器売買の可能性が気になるならば、それを解明する取材をすれば良かっただろうに。 -
●立川拘置所。面会前事件のことを聞くと、お金を要求される。大体3万円。一般的に取材の際、相手にお金を払う事は無い。新聞記者経験からすれば当然だ。ただ雑誌の取材では支払う事はゼロではない。
●ネットからの出会いで恋愛をした事はないですね。直接の知り合いの中でしか恋愛経験はないです。逮捕されたときに、報道で元カノだと言う女性もいたとか。あれは全部嘘だって。
●外に遺体を捨てるとなると、埋めないといけない。遺体の全身があると、車で運んで埋められないですよね。バラバラにして、骨やバラせるものは燃えるゴミとして捨てたんです。バラせないものはクーラーボックスに入れました。
●過去のバラバラ事件がなぜ発覚したのかをネットで調べたんです。すると山の中で遺体が入ったクーラーボックスを運んでいる途中に職質された、などが書いてあった。
●携帯電話は長い間放置しないと、警察は位置情報を特定できないと、昔刑事に教わったんです。だからすぐ破壊しました。
●2ヶ月で9人。1人目の殺害後は頭痛や吐き気がありました。しかし1人目を殺害することで、それを乗り越えたんです。
●獄中結婚ですか?ないですよ。当初Twitterで知り合って結婚したいと言ってくる女性が2人いました。でも信用できませんでした。話した内容が、週刊誌に流記事になっていたからです。
●自殺願望がある女性は言いなりになりやすい。だからヒモになろうと考えていた。
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人間を消費財とみなす思想の
行き着く果てにはこういう世界もある
金づるになりそうな奴は恐怖と依存で飼い慣らし
それ以外は嗜虐欲を満たすために消費し
最後は自分がメディアを通じて
僕のような好き者に消費されてしまうのだ
やめなさいよほんとにもう -
なんか犯人本当のこと隠してるのかなって感じの後味悪い事件ですね。
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事件の概要はわかったが、全体像に対する不可解さは増すばかり。
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筆者も書くように、真相は他にあるのかもしれないとも思った。